MAEGDE U. KNECHTE
PEOPLEText: Jeremy Tai
人々が日常の些事に追われ、今日もあくせくしているハンブルグの一角で、ストリートからわずかに深いレベルで活動し、極めてドイツ的な姿勢でものづくりをしているスタジオがある。赤いブロックの文字で胸に「KRAUT」と書かれた白いTシャツや、ふわりとしながら薄青色で描かれた手榴弾の模様入りの黒い帽子など。身に付けられるアートとカルチャーそして人間が作り出す造形物のミックスのあり方を大胆にそして見事に提示しているといえるこれらのアイテムを製作しているのは、「MAEGDE U. KNECHTE」というスタジオだ。
この名前の由来はドイツ封建時代に遡る。「MAEGDE」とは、女性の奴隷、 「KNECHTE」とは、男性の奴隷という意味をもっており、こんなふざけた名前を付けてしまうというのも彼らの活動や作品を深く印象付けるものとなっている。つい先週の土曜日、メンバーで詩人でもあるイナ・クルツに「MAEGDE U. KNECHTE」の活動について質問するチャンスを得た。
ファッション
ファッション・ビジネスというものが今現在、大きく変化してます。世界中殆どどこでも、何でも手に入ってしまうようなことになっていて、そういう事をもう皆あまり好んでいませんね。誰ももうユニークでないもの、独特でないものに魅力を感じなくなっているのでしょう。それもファッションというものに何かストレスというようなものを感じる一因になっているのではないかと思います。
僕らが作って売っている服には子供服もあって、それは世界中どこにもないものです。それで、そういう子供服が好きな若い母親たちが僕らの店にわざわざ買いに来てくれる。子供服というのはそこら中にあるんだけど、ひどい代物ばかりだから。それからアートに関わっている人たちもよく来るし広告業界の人も良く来ます。なので僕らはあらゆる人たちのための服を作り、売っています。
広告業界というのは知っての通り、ニュースが伝わるのが早いですよね。一般の人たちより情報ソースに近いところにいて結構、街中に住んでいるし。とはいえ、実際特定のターゲット層というのはあまりないんです。僕らのような人は実はそれほど出歩かないし、パーティなんかにもあまりいかない。
タブー
今までのところ、クレームはないです。メディアでの扱いも肯定的。以前あったのは、戦車の運転士たちが僕らの帽子(戦車のシンボル付き)が気に入って、着用していたようだけど、核施設の労働者たちにはふさわしくなかった。アンチ核というような意味も暗にあってそのシンボルを使っていたのに彼らは分かっていなかったようです。
ワークスタジオ
僕らはもう一年くらいここで仕事をしていて、この後ろにワークスタジオがあるのですが、そこで毎日新しいものを作りだしています。改良したりしながらいろいろ試みています。ボトル・ウォーターからゴム製ブーツまで、いろいろな素材を試しています。それで、手作りで、個数がそれぞれ少ないし、全部オリジナルなので、誰も真似できない。そういうのが、受け入れられていて、僕たちもそれを楽しんでいます。
ハンブルグ
ちょうど今、僕らはニューヨークに服を持って行くところです。興味を持ってくれた人がいて、うまくいけば向こうで販売することになりそうです。ドイツでは、ベルリンとか他の都市にスタジオを構えるという気はありません。最初は、ニューヨークにも行く気はなかったけど、とりあえずどうなるのか試してみるつもりです。また、ドイツの他の都市では、ケルンに友達がいて、僕らの服をアート・シーンに紹介しようとしてくれています。僕らの作品を一式持っていて、展示会用のギャラリーを探してくれています。とにかく好きな事をして生活していけるなんて素晴しいことだと思います。最初の一年は随分楽しみました。それが大切だと思います。
Text: Jeremy Tai
Translation: Satoru Tanno
Photos: Jeremy Tai