ウェス・アンダーソンすぎる風景展 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている

HAPPENINGText: Alma Reyes

映画のみならず、独創的な審美眼で多くのファンを持つ映画監督ウェス・アンダーソンの世界観にインスピレーションを得た写真を集め紹介する展覧会「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」が、天王洲アイルにある寺田倉庫G1ビルで5月26日まで開催されている。


「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」エントランス Photo: Alma Reyes

アンダーソン監督は、数々の賞を受賞した「天才マックスの世界」(1998年)や「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001年)、「ムーンライズ・キングダム」(2012年)、そして傑出した「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)などで見られるように、その型破りで風変わりな演出スタイルで知られている。彼は、ルークとオーウェン・ウィルソンが共演した処女作「ボトル・ロケット」(1996年)で国際的な注目を集め、ビル・マーレイと共演した「天才マックスの世界」で最優秀監督賞を受賞した。彼は、カラフルなイメージで、親の育児放棄、夫婦の不倫、登場人物の妄想など、人生における生きづらさをしばしば強調し、時にはアニメーション化したり、ミニチュアモデルでスケールアップするなど、独特の視覚的で物語的なアプローチですぐに認知された。レイフ・ファインズ、ジェフ・ゴールドブラム、ウィレム・デフォー出演の「グランド・ブダペスト・ホテル」は、ヨーロッパの山腹リゾートを背景に、ファシズム、友情、忠誠の色合いをコミカルに表現し、アンダーソンの最も愛された映画の一つとなっている。まるで古い絵本から飛び出してきたような映画的効果と演劇的描写が高く評価されたこの映画は、2015年のゴールデングローブ賞最優秀作品賞をはじめ、20を超える世界的な賞を受賞した。


「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」展覧会風景 Photo: Alma Reyes

アンダーソンの作品を取り巻くこのような社会現象は、旅行好きで監督を敬愛するウワリー&アマンダの夫妻が、2017年にニューヨークのブルックリンでのソーシャル・メディア・コミュニティ「AWA(Accidentally Wes Anderson)」を結成したことがきっかけとなった。夫妻はインスタグラムアカウント @accidentallywesanderson を開設し、個人的な旅行の行きたい所リストに入れていた、いつか訪れたいと夢見ていた、アンダーソン監督の映画のロケ地に “偶然にも” 似ている目を引く旅行先の写真を投稿していた。そして彼らはインスタグラムのユーザーに声をかけ、自身でおすすめの観光スポットを撮った写真を投稿してもらったところ、大きな反響を呼んだ。このソーシャル・ネットワークは、現時点で約185万人のフォロワーに及ぶ。写真の寄稿者は “冒険家” と呼ばれており、その範囲は旅行者、建築家、歴史愛好家、アーティスト、編集者、写真家から教師、学生、そして世界と文明の驚異に興味を抱くあらゆる階層に及ぶ。そして、2020年、AWAは世界中の200カ所のロケーションをフィーチャーした「Accidentally Wes Anderson The Book」を出版した。


「平壌地下鉄凱旋駅(ピョンヤン地下鉄・ケソン駅)」北朝鮮、平壌 © Dave Kulesza (@davekulesza)

2022年に韓国のソウルで開催された展覧会から派生して、現在東京で開催されている本展「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」では、コミュニテイ「AWA」(Accidentally Wes Anderson)の中から300点余りの写真を、旅に関する10のキーワードで、世界各地の秘密の場所を訪れる人々の旅を疑似体験できるよう構成、各々の興味深いストーリーと共に紹介する。各セクションは個別の色で統一され、電車、バス、車の窓の外を眺めるような、活気に満ちた風景の遊び心のあるパレットを描きだす。そしてこれらは来場者を世界のさまざまな場所に連れ出し、それぞれの地域の刺激的な物語や歴史に引き込むように誘惑する。

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