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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021

HAPPENINGText: Amelia Ijiri

両足院(建仁寺山内)では、八木夕菜の「種覚ゆ」とトマ・デレームの「Légumineux 菜光 ─ヴェルサイユ宮殿菜園の古代種─」が展示された。「種覚ゆ」には在来種・固定種が育てられた畳二畳分の小さな畑が配されている。さらに八木は写真転写の原初的な形態であるサイアノタイプを用い、交雑種の使用という世界的な潮流への抵抗に対する意識をもたらす。「Légumineux」はヴェルサイユ宮殿の王の菜園「ポタジェ・デュ・ロワ」で育てられた野菜がポラロイドによるテクスチャの複雑さと菜園の野菜の儚さを湛えつつ写真として定着した作品である。


Yuna Yagi, The Record of Seeds at Ryosokuin Temple (Kennin-ji Temple). Photo: Takeshi Asano

市内に点在する会場を巡るうち、鑑賞者はアイデンティティにまつわる経験の意味とその残響(エコー)に対する熟考を求められる。フランスの通りや、コートジボワール南部のンズマ族の人々の祭りや、トラウマに満ちた中国のホテルに至るまで、アーティストたちはそれら公的また私的な生についてのナラティブに対する再評価を投げかけてくる。


Women Artists from the MEP Studio: New perspectives in film and photography from France at Hosoo Gallery. Photo: Takeshi Asano

現代的な着物生地ギャラリーのホソオ・ギャラリーでは、「MEP Studio(ヨーロッパ写真美術館)による5人の女性アーティスト展──フランスにおける写真と映像の新たな見地」が開催された。日常生活、ディテールそして顔をモチーフとしたマルグリット・ボーンハウザーの探求的な写真は大胆な色調とトーンでその表層的イメージに肉迫している。マノン・ロンジュエールの作品は金属版プリントとフェイクアーカイブ素材とが混在していることで幾世代にも引き継がれる。アデル・グラタコス・デ・ヴォルデールの不鮮明かつ低解像度の映像作品により、鑑賞者は、自身の物語の中にある空白を、編集されたイメージの連鎖を投影することで埋め合わせる。最後に、ニナ・ショレ&クロチルド・マッタの映像作品は前述のアデル・グラタコス・デ・ヴォルデールの赤いカーテン越しに撮影された映像作品同様、公共空間における女性の経験、親密さや欲望という観念を探求している。


MIROIRS — Manga meets CHANEL Collaboration with Kaiu Shirai & Posuka Demizu. Presented by CHANEL NEXUS HALL at Kondaya Genbei Chikuin-no-Ma and Kurogura. Photo: Takeshi Asano

帯の製造販売の老舗である誉田屋源兵衛の竹院の間、黒蔵で展開された「MIROIRS」。そこでは白井カイウと出水ぽすかの描く漫画のパネルによってガブリエル・シャネルの生涯における経験が垣間見られた。壁紙にも漫画が描かれ、アンティークの額縁やシャネルの美意識の産物が伝統的日本家屋をいろどり、色彩豊かで重層的な迷宮へと私たちを誘い、シャネルの生涯が映し出される。

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スティーブ・ベイカー
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