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メゾン・エ・オブジェ・パリ 2018

HAPPENINGText: Wakana Kawahito

メゾン・エ・オブジェで毎年注目を集めるのが、デザインの新たな潮流を示す「インスピレーション・スペース」だ。前回は、「コンフォート・ゾーン」をテーマに休息や平穏を求める時代への回答として、安心感を与える素材や形、パステル調の優しい色が注目されたが、今回、ネリーロディ社のヴァンサン・グレゴワールが提案したのは「ショールーム」。デジタル産業の急速な発展により、情報発信力を高めた人々の現象に注目した。特にインスタグラムの出現によって消費者の影響力は高まり、人々は自分のプライベートを積極的に開示するようになった。それゆえ、世間はインスタ映えしたデザインを求めているのだ。

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Inspiration Showroom © Anne-Emmanuelle Thion

ショールームという言葉から何を思い浮かべるだろうか。ガラス素材で中の商品が見えるような棚、見せるラックなど、“魅せる”ディスプレイ、ということがキーワードになってくる。そして、自分のお気に入りのコレクションを壁一面に飾ったり、オブジェを部屋に置いたり、自分の世界観を表現できる装飾物も欠かせない。それをまるでアートのように見せるというのも「ショールーム」らしさだ。

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Inspiration Showroom © Anne-Emmanuelle Thion

会場で目立ったモチーフは、去年に引き続き「サボテン」や「フラミンゴ」などトロピカル調のもの。そして、あらゆるスタンドで見かけたのがブラジルの黒鳥「トゥッカーノ」だった。夏向けの商品という事情もあったとは思うが、子ども向けの商品からギフト用品まで、雑貨やテキスタイルのメーカーで多く見かけた。

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Antonio Facco – Rising Talent © Anne-Emmanuelle Thion

さらに、新しい傾向としては、変化の大きな社会へ適応し、自分らしさを表現しようという人々の思いからか、「流動性」「カスタマイズ」をキーワードにした商品が見受けられた。用途によって大きさを変えられたり、必要に応じてカスタマイズできたり、一つのもので何役も兼ねるような家具やアイテムが印象的だった。たとえば、卓球台を兼ねたテーブルや、ライトにも棚にもなる家具や、脚を変えられる椅子、かぶせるだけで靴が防水になる靴カバーなども注目されていた。

他に、今回はポルトガルデザインの勢いを感じる回だった。多くのブランドが、北欧デザイン調のシンプルで優しい色の家具を多く発表する中、ポルトガルのデザインは、カラフルでレトロかつ、どこかキッチュさもあり、他のブースと一線を画していた。

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葛西由香
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