クララ・イー

PEOPLEText: Haru Murayama

今回クララさんはアーティストとしてだけではなく、アートディレクターとしても展覧会に携っておられましたね。どういったことをされていたのでしょうか。

クリエイティブディレクターとして、ショーケース全体のコンセプトを考え、空間レイアウトを設計し、それぞれのアーティストと作品を配置する場所を調整することで、観客の旅を生み出さなければなりませんでした。そしてこれには、日本人の観客に合わせてワークショップやトークショー、パフォーマンスのプログラムをデザインし、アーティストとその作品をより深く理解するといった仕事も含まれていました。つまり私と私のチームは、概念化から設計まで、すべてを監督していたのです!

今回は「ハイパーシティ」をテーマに、日本とシンガポールのアーティストによるコラボレーション作品を数多く展示していましたが、本展は他の国で行ったものとどういった違いを持たせたのでしょうか。キュレーションの意図はどういったところにありましたか。

「ハイパーシティ」というテーマは、東京におけるシンガポール・インサイド・アウト(SGIO)での、大変ユニークなテーマです。 SGIOは、シンガポール観光局がシンガポールのクリエイティブな側面をプロモーションすることを目的とし、2015年よりスタートしました。 SGIOを通じて、私たちはアートやデザイン、カルチャーに関わる対話型の展覧会を行うことができました。「ハイパーシティ」というテーマは、ドイツの哲学者であるゲオルク・ジンメルが1903年、大都市の生活が個人の心に及ぼす影響について触れたテキスト、「メトロポリス」と、「メンタルライフ」をゆるやかに踏まえてつけられています。

私達が東京とシンガポールの関係を考えた時、(仏教の教えにある)「無常」というのが、強く繰り返すテーマであることに思い至りました。日本とシンガポールは、大きさに差異はあるものの、同じ島国であり、閉じられて制限された地理的特徴が、人々のメンタリティに良くも悪くも影響を与えています。またどちらの都市も高度に発展し、テクノロジーの進化によってつくられたスマートネーションであるという点も似通っています。そんな共通点を持つふたつの国のアーティストたちが、美学という共通言語を用いてどのように会話をはじめたらよいか、というところに、キュレーションの意図がありました。

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McQueen S/S 11, This is an Alexander McQueen© project. All images belong to them.

さまざまなメディアを実験的に用いた精密で幻想的なドローイング作品を数多く発表されていますね。ご自身で作品を作るようになったのはいつ頃からでしょうか。また、作品制作に強く影響を与えた人物や出来事などはありますか?

私は幼いころから絵を描いてきましたが、絵に対する自信が育ったのは、ロンドンへ留学していたころのように思います。セントラル・セント・マーチンズで私の先生がとてもカジュアルにアドバイスしてくれたことが、私の心に引っ掛かり、残ったのです。彼女は、ドローイングをする時、合理性や知性に基づきすぎるのではなく、そのドローイングそれ自体を信じてあげなさい、と私に注意したのです。

そしてその後、私はミルトン・グレイサーによる「ドローイング・イズ・シンキング」という本に学校の図書館で出会いました。その本は色鉛筆で描かれたバリエーション豊かなドローイングの数々が、何の言葉も、説明もなく掲載されている、とても分厚い本でした。その本を読んだ時、私はふと、自分自身が人から認められるような絵を描くことができ、そしてその才能を持っているということに気が付いたのです。社会の中では、インテリジェンスに溢れ重要そうに聞こえる言葉の方が、目で観るイメージよりも重く扱われがちです。そんな社会の中で作品を作っていくことは、私がイメージという言語を使って、この世の中で本当の意味で心地よくなるためのプロセスなのだと考えています。

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ChildAid 2013, Stage Design: Clara Yee, This is a Singapore Press Holdings project.

作品制作と並行して、企業のブランディングやステージデザイン、国内外での展示会におけるディレクション、多岐にわたって活動の幅を広げられていますが、こういった活動を行うようになったきっかけはどういったことにあったのでしょうか。

工芸や物質性といった多岐に渉る分野が交わる場所で行われる対話が、私にとっての制作の原動力である感じています。そして、アウトプットによって作品に制限がかかることをとても嫌っています。基本的に、私の作品の材料はいつでも同じで、時間と空間と感情、そして人間なのだと思います。

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