クララ・イー

PEOPLEText: Haru Murayama

アーティスト、デザイナー、アートディレクター…様々な肩書を持ち、幅広い領域を横断して精力に活動するシンガポールのクリエイター・クララ・イー。2017年8月に開催され、大盛況のうちに幕を閉じた展覧会「シンガポール:インサイド・アウト」では、アーティストとしてだけでなく、アートディレクターとして展覧会全体のディレクションも手掛けた。

共同設立者を務めるノマド・クリエイティブ・スタジオ「イン・ザ・ワイルド」の移転を終え、今後ますます世界に向けて様々な活動を行わんとする彼女に、これまでとこれからについてのお話を伺った。

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© Clara Yee

まずはじめに、自己紹介をお願いします。

私は、多様な専門分野を越境するデザインスタジオ「イン・ザ・ワイルド」の共同創設者の一人です。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズを卒業し、ファッションやシアター、ブランディングといった様々な分野にまたがるメディアを活用した、ビジュアル制作のスキルを磨いてきました。またアレキサンダー・マックイーンやワーナー・ミュージック、バルビカン・ロンドン、シンガポール・ツーリズム・ボードといった数多くの企業との共同での制作も行ってきました。

そしてクリエイティブの専門家として、日本の矢野大輔や、メキシコのハシント・ディ・イェーといったアーティストとの、国際的な異文化交流プロジェクトにも携わりました。これらのプロジェクトは、メキシコ、ニューヨーク、ロンドン、北京、台湾といった様々な国に行くきっかけとなり、そこからグローバルな視点を得つつ、自身のデザインにおける考え方や思想をより活発にすることができたと感じています。

また、これまでザ・ストレーツ・タイムズの「30ライジング・スターズ・オブ・シンガポール・アンダー30」、ニーヨウ(NuYou)の「ネクスト・ビッグ・シングズ」、フォーブス・アジア版の「インオーギュラル30アンダー30」といった賞にも選出されました。

All artists (credits to STB)
Photo © Singapore Tourism Board

8月に原宿で行われたシンガポールインサイドアウト展、大盛況のうちに幕を閉じましたね。改めて展覧会の感想や印象的だった出来事などをお聞かせください。

まず一番に印象に残っているのは、人ですね!日本人アーティストやデザイナーといった様々な人たちと関わることができ、私にとってとても素晴らしい経験となりました。才能があり、プロジェクトの成功を真摯に考えるモチベーションに溢れた人たちとチームを組んでプロジェクトに取り組めることは、いつも本当に幸運なことだと感じます。

また、今回の展覧会で私たちは、新しい言語や成功を生み出すためにどのようにコラボレーションし、取り組むことができるかについて展示で示しながら、来場した日本のゲストたちとこの先について語り合うこともできました。

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“HAPPENSTANCE”, Clara Yee × Daisuke Yano, Photo © Haru Murayama

日本の照明アーティストである矢野大輔氏とのコラボレーションによるインスタレーション作品を発表されていましたね。光と霧が交差する幻想的な雰囲気が印象的でしたが、どのような経緯であの作品ではどのようなことを表現しようとされていたのでしょうか。制作までの経緯や過程などもお聞かせください。

矢野さんとトーキョー・ラインティング・デザインのことを知ったのは、逗子海岸で行われていたナイト・ウェーブです。そしてその春、初めて彼とキャットストリート沿いのカフェで会い、自然に対する理解や認識を通して作られた彼の作品と、その探求しているテーマについて話をしました。春の日差しがさんさんと降り注ぐカフェのバルコニーに、私が持っていたホログラフィックな素材をかざすと、虹色の光がこぼれました。その人工的な自然が生み出す光景は、「ハイパーシティ」という今回のコンセプトにとても相応しく、私たちの独自の視点からどのように遊べばいいかを示しているようでもありました。矢野さんはミストに光とホログラフィックな素材を組み合わせた作品のアイディアを提案し、私はミストに投影する映像を制作することになりました。

作品制作は、修正に次ぐ修正の繰り返しでした。形状の構造を変えながら、反射によって生まれるひずみやゆがみが出ぬよう、ミストに対して正しいアングルで映像を投影しました。また予算をうまく調整しつつ、蚊に刺されながら東京郊外の荒れ地に、プロトタイプを設置したりもしましたし、シンガポールのサウンドデザイナー、ルイス・クエック(イントリガント)による音楽では、気持ちがおおいに盛り上がりました。彼の作った作品は、電子音楽でありながら、まるで自然のような音色だったからです。

そして、異なる国の異なる言葉を話す者同士で作品を制作する、というのも、とても難しいことでした。私たちはドローイングに大部分を頼ったコミュニケーションを行っており、結局最終的には、スキャンしたスケッチだけを添付したメールを送り合い、作業を進めていきました。

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