チーヤン・チェン
PEOPLEText: Satsuki Miyanishi
近代イギリス彫刻やポップ・アートの発展にも寄与したと言われるロンドンの美術大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを2017年に卒業したチーヤン・チェン。全ての作品を綿密な実験結果から生み出すという科学的なこだわりとともに、ビジュアルコミュニケーションに基づき、個人が社会とどのように関わりを持つかという観点から様々な視点を提供してくれるチーヤン・チェンに、彼が作品に表現する根底にあるものについてインタビューを行なった。
© Chih-Yang Chen
これまでどういった作品を発表しているのか簡単にご紹介をお願いします。
私の作品にはグラフィックデザインと新しいメディアのインスタレーションがあります。ロイヤルカレッジ・オブ・アート(RCA)時代は、いくつもの層からなるような複雑なコンセプトを伝えるために、様々なメディアを柔軟に試みました。RCAで行なった面白いプロジェクトには、人間の肌の動きを模倣するインタラクティブな試作モデル、軌道共鳴を表現するレコードプレーヤーから開発された小さな移動式インスタレーション、成長し続ける自己意識の過程を暗示する、ロンドンのハイド・パークで集めた枝から作られた人工の木、インターネット社会における人間関係について、リアルタイムビデオプログラムによって作られたビデオインスタレーション、人間と惑星と宇宙との関係に自身の視点を併せた7枚のモノプリントと石板で作られたインスタレーションなどがあります。卒業制作の進行中、私は速いスピードで形成されるオブジェクトに興味を持ち、多くの実験を行い、象徴的な意味をオブジェクトに慎重に加え、その結果がプロジェクトとなりました。
Humans can only confess to Something rather Somebody © Chih-Yang Chen
「Humans can only confess to Something rather Somebody」では、特に3Dプリンターで作られた歪んだ物質がとても印象的でした。作品のプロセスを教えて下さい。
主題を決めるにあたって、人々が極度に厳しい感情に苦しんでいるときに人間と物体との間にはっきりとはしないつながりがあり、この微妙で抽象的、そして感情的な関係を伝えることが大きな課題であると考えていました。最初に思いついたのは、自分の得意分野であり、なおかつ簡単に感情を伝えることができる方法、つまり映像で物語を描くことでした。しかし同時に、物理的で触れることができるリアルなもの、感情を直接見る人にひと目で伝えることができる、力強く明白な何かが必要でした。そこで、私は元のコンセプトを見直し、出発点である「繋がりを具体化すること」から再編成しました。全ての物体が人間の行動や感情を理解し、記録することができるという投機的なプラットフォームを作りました。
Humans can only confess to Something rather Somebody © Chih-Yang Chen
そういった物体の表面は、より多くの行動や感情を記録した後に歪んでしまいます。物体とその所有者との繋がりを強調するため、物語の映像の中でこの人たちにどんな恐ろしい出来事が起こったのか、なぜ彼らが物事に打ち明けたかを解説しました。展示では、物体がプロジェクターによって壁に投影され、インスタレーション全体が「感情的な繋がり」となりました。映像に加え、物体は所有者の結果を表すものとして展示されました。物語の映像は私の個人的な経験から発展したもので(次の質問で説明しますが)60以上の物語を集め、記号とビジュアル言語の両方をシナリオに組み込むことで、観客に共感を与えました。物体のパターンは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者に提供してもらったEEGデータから開発しました。EEGとは脳波を記録する装置で、異なる感情は異なる脳波を引き起こします。最初は情報を視覚化したインフォグラフィックなものでしたが、私自身の感情を入れて、より正直で直感的なパターンが完成しました。映像では、人々の誰にも自分の気持ちを伝えることができない本当に困難なときをさらけ出しました。物体は、人間と物体との間の否定的な感情と繋がりを具体化し、人間の不可解な隠された部分のシンボルとなりました。
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