葛西由香

PEOPLEText: Ayumi Yakura

明治製菓のお菓子をネタにウェブ上で流行した「きのこたけのこ戦争」を、鎌倉時代の「平治物語絵詞」に見立てたユニークな襖絵「明治物語」で注目された平成の日本画家・葛西由香。「見立て」や「やつし」の技法を取り入れ、日本画を初めて見る人でも純粋に楽しめる葛西作品は、その親しみやすさの根底で、現代において多様化する日本画の定義や、日本画の画材を使う意味を問いかけている。

現在、クロスホテル札幌で開催されている「超日本」展と、11月25日、26日の「アートフェア札幌 2017」に出品する新作、そして、2018年3月にクラークギャラリー+SHIFTで開催予定の初個展についてもお話を伺うと、作品に通じるユニークな人柄が垣間見えた。

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© 葛西由香

まずはじめに、自己紹介をお願いします。

葛西由香です。日本画を描いています。

日本画を描こうと思ったきっかけを教えてください。

最初は単純に、扱ったことのない画材への興味でした。日本画では自然界に存在する鉱石を粉々に砕いて絵具として使用します。キラキラしていて、とても綺麗なのです。私は小さい頃から石が好きで、道中気に入った石を見つけては拾って帰り机の引出しを石だらけにするような子どもだったので、日本画特有の柔らかな色彩や独特な質感が石から生まれていることに衝撃を受け、尚更強い魅力を感じました。

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「明治物語」葛西由香, 2016年, 1,820 x 3,620 x 60 mm, 襖絵(部分)

昨年、葛西さんが初めて注目された作品で、ウェブ上で流行した「きのこたけのこ戦争」(明治製菓「きのこの山」対「たけのこの里」のネタ画像)を、鎌倉時代の「平治物語絵詞」に見立てて描き上げた襖絵「明治物語」について教えてください。なぜ大学の卒業制作にこのような題材を選んだのですか?

ちょうど卒業制作に入る時期に私が気になっていたのは、『現代日本画の定義のあやふやさ』でした。今は、日本画の画材さえ使っていれば何を描いても日本画と認識されます。例えば洋画(油彩画)のように写実的なキリストの宗教画を描いても、アニメのような漫画絵を描いても、それは「日本画」になるのです。展覧会を見に行くと、洋画と同じような基準で描かれた日本画や、アニメみたいな女の子が描かれた日本画がとても目について。あえて日本画の画材を使用することで、画面に効果的な影響を生んでいるのなら何も言うことはないのですが、そういう絵に限って画材を上手く活かせていないのを強く感じていたからです。当時はそれがすごく残念に思えて、目にする度に悶々としていました。

『じゃあ、日本画の画材を使う意味って何だろう?こういう絵が日本画として受け入れられるにはどうあればいいんだろう?現代の日本に生きる自分が描きたい日本画は何だろう?』と考え、これらをテーマとして扱うことを決めていました。あとは卒業制作なので、集大成として大学での4年間で感じてきたことや研修で学んできた京都・奈良の寺院や画材の歴史…それらを振り返り咀嚼と反芻を繰り返した結果、昔ならではの「襖絵」として表現することに決めました。

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「明治物語」葛西由香, 2016年, 1,820 x 3,620 x 60 mm, 襖絵, アートフェア札幌 2016 特別展示, クロスホテル札幌 Photo: minaco. (footic)

卒業制作展で芸術優秀賞を受賞した後は、「500m美術館」に続き、北海道作家作品展「2020 – 来るべき者達」及び「アートフェア札幌2016」の会場にも展示されました。思いがけず数多くの人に見られる機会を得たと思うのですが、この事は、葛西さんのその後に良い影響をもたらしましたか?

そうですね。良い影響ばかりでした。私は昔から、制作に関わらず自分にブレーキをかけてしまう変なクセがあって、実は在学中はずっと思うような作品が作られずにいたんです。でも、それではあまりにももったいないから最後くらいはやりたいことを素直に思いっきりやろうと作ったのが卒業制作の「明治物語」でした。その結果、賞をいただけて、たくさんのところで展示していただく機会も得て、幅広い方々に見て楽しんでいただけたことはとても大きな自信になりました。今でもブレーキをかけてしまいがちですが、少しずつ直せるようにもなりました。様々なご縁に心から感謝しています。

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