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「抽象表現主義」展

HAPPENINGText: Coco Liu

抽象表現主義のための、驚異的かつ感情的な美術展「抽象表現主義」が、2016年秋から2017年1月2日までロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで行なわれた。この展覧会に一歩足を踏み入れると、その素晴らしい巨大な絵画、彫刻と写真は、あなたを盲目にし、世界の変遷 – 二度の世界大戦、冷戦、スペインの内戦、世界恐慌の後、革新主義者がどのようにして芸術の枠組みを新しい方向性へ移行していったのか – を体験することとなる。

抽象表現主義は、1940年代後半から50年代にかけてアメリカ、特にニューヨークを中心に隆盛した芸術様式。展覧会では、ジャクソン・ポロックを筆頭に、クリフォード・スティル、ウィレム・デ・クーニング、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマン、クライン、アド・ラインハート、ミッチェル、デイヴィッド・スミスといった抽象表現主義の偉大な芸術家の名が列挙される。これらは、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツのコレクションで、アメリカで影響力のある抽象作品の大部分を収蔵している。

最初の部屋では、アーシル・ゴーキーの「花咲く水車小屋の水」(1944年)と「無題」(1945年)など、初期の抽象画と彫刻作品を紹介しており、シュルレアリスムやキュビズムと破壊の流れを汲む抽象的な芸術を基本としている。同時期にジャクソン・ポロックは、マイルストーンであり、また、アートシーンの大きな流れを作った「ミューラル」(1945年)を制作した。

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Jackson Pollock, “Blue Poles” (1952), Oil, enamel and aluminium paint with glass on canvas. 2121 x 4889 mm. National Gallery of Australia, Canberr © The Pollock-Krasner Foundation ARS, NY and DACS, London 2016. Photo: © David Parry

隣の部屋へ移動すると、真っ白な部屋全体に展示されているジャクソン・ポロックの「ミューラル」(1945年)、「ブルー・ポールズ(青い柱)」(1952年)といった巨大な作品に、ただただ圧倒される。これらの絵画を眼前にした鑑賞者は、近づくことで自身がこの巨大な芸術の一部になり、強力な色彩の全体を見るために離れたりする。ポロックは、新しい芸術をつくるために「アクション・ペインテイング」という画期的な画法を発明した。注ぎしたたる絵の具がキャンバス全体を覆う自由な筆使いからは大胆かつ緻密さを感じとることができる。ポロックの「夜霧」(1945年)や、暗く暴力的なフランツ・クラインの絵画「ベツレヘム」(1955年)、ロバート・マザウェルの「ウォール・ペインティング No. III」(1953年)、リー・クラズナーの「ザ・アイ・ファースト・サークル」(1960年)は、モノクロの強さとその時代の米国の情勢を象徴している。

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Mark Rothko, Oil on canvas. Private collection © 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko ARS, NY and DACS, London. Photo: © David Parry

次の部屋は、ポロックに並ぶ抽象表現主義の代表的な画家、マーク・ロスコ。ロスコは生と死の象徴を色彩によって深い感情を表現することを追求した。「No.15」(1957年)と対になって「無題(オレンジとイエロー)」(1955年)が展示されており、これはロスコの暗い時代と明るい時代の違いとして重要である。数字で表された作品タイトルも特徴の一つだ。これが初期のポストモダニズム理論を育てたと言っていいだろう。鑑賞者による解釈の自由、つまり芸術は鑑賞者によって完成されるということ。同じ色でも観る者の気分や心理状態によって違って感じられる。

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