リオ・ネグロ

PEOPLEText: David Gray

音楽と詩の間に内在する相互作用を探求するのは、大金や名声を得るために行う昨今の活動とは異なる。世界的にも有名なスェーデンのスタジオで熟練のエンジニアと作ったデビューシングルの4トラックに、ぜひ横になって20分間耳を傾けてみてほしい。少なくとも、スェーデンを拠点に活動するライターで写真家、アーティストのヴィクター・モレノがストックホルムにある、スウェーデン・電子アコースティック・ミュージック・アンド・サウンド・アート協会 (EMS)から俸給を受けている理由が、これでわかるだろう。彼の「An Abrupt Solidity to The Light」と題されたデビュー・シングルは、詩に対する深い思い入れから、音楽と、彼自身の人生で起きた私的な困難の克服にまで及ぶ。モレノが書きためている詩のノートをもとに、ライブでのパフォーマンスも視野に入れて作られている。印象派的な楽曲は雰囲気あるギター・リフやモジュール式のサウンド、映画のようなパッセージ(独立した楽想をなさず,楽曲の中で旋律音の間を経過的につなぐ急速な音の一群)、そして鼓動打つビートを織り成す。それらは一緒になり、プロジェクトのタイトル「リオ・ネグロ」または黒い川を思わせる不思議な流れとなる。

モレノとチームを組んでこのプロジェクトに取り組んだのは、ジョージ・ナヴァロ(Nomads OST)やオリヴァー・アッカーマン(A Place to Bury Strangers / Death by Audio)、ビヨルン・ハンセル(フィーヴァー・レイ)、ジョナサン・バフ(ソニック・ユースからリー・ラナルドとサーストン・ムーア)を含む名の知れたプロデューサー、エンジニアの数々だ。「Lux」と名付けられたカバー写真は有名なドイツのアート・フォトグラファー、ウォルフギャング・ティルマンの協力によるものだ。私たちは、ストックホルムのビストロ・ナポリヨンでヴィクター・モレノと話すことができた。

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今日のポップ・ミュージック界において、この作品は通常の概念から大変逸脱しているように見えます。むしろアートプロジェクトのようです。どのように音楽作りを始めたのか、教えていただけますか?

そうですね。どこから始めましょうか?(笑)色々な要素が込められているのです。そして、信じてください、事前に考えられたマスター・プランは一切なかったのです。地元マドリッドで、私は幼い頃から音楽とコンピューターに興味があり、ギターでよく遊んでいました。また、これまで、世界の色々な国の出版物に、私は音楽のことをたくさん書いてきました。でも、奇妙なことに、このプロジェクトに火をつけたのは、アン・セクストンやシルヴィア・プラスのような、自己の中にある葛藤など私的なことを書き続けたアメリカの詩人への興味でした。彼らの作品が大好きなのです。苦難や危機、死、神、空虚など、ユニバーサルなトピックについて触れながら、ポジティブな面もある。インスパイアされて私自身の詩を書き始めるきっかけとなったし、そこから詩のノートもつけ始めました。

その作家の作品はどれもとても暗く鬱々としているようです。そして、彼女たちはドラマチックな方法で自殺してしまったのですよね?でも、あなたはとてもポジティブな人に見えますが…

自殺については確かにそうですね。「シルヴィア・プラス効果」という表現があります。私の記憶が正しければ、アン・セクストンは綺麗な人で、素晴らしい作家だったのですが、ウォッカに溺れ、母親の毛皮のコートを纏、ガレージに入り、車のエンジンをかけ、排ガスを吸って死んだのです。とてもドラマチックで、美しくさえある死に方です。トピックから外れてしまいましたね。そう、あなたが言っていることは正しいですよ。私は本当に、自分のことを暗いとか、くよくよ悩むタイプとは思いません。私は彼らの言語の率直さや、私的経験を書いているところに惹かれるのです。それは読む人の感情を解放するからです。この世の中、何でも起こりうるのだ、という感覚がそこにはあるのです。

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The Starry Night by Anne Sexton. Handwritten by Victor Moreno © 2016

あなたのインスピレーションを煽る特別な詩や瞬間はありましたか?

そうですね。ピューリッツァー賞を受賞したアン・セクストンの「星降る夜」という詩を読んだことを思い出します。ヴァン・ゴッホがオレンジ色の渦巻きと青と黒で空を描き、そして燃える黄色の月と白い星々を描いた有名な絵を基にしている作品です。絵の中にも、そしてその詩の中にも、リズムや動きが多分に感じられます。空の方へ向かう動きのオーケストラのようです。セクストンの自由詩は宗教や神についても触れています。ヴァン・ゴッホのように、彼女も自殺願望を持ち、悩み、とても不安定でした。それでも、その詩はとても不思議で、シュールで、スピリチュアルとも言える何かがあります。信心深いわけではないのですが、この詩にはとても感動しました。それから私はその詩を音楽に入れ込むとどんな風になるだろうかと、考え始めました。

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