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ラング

PEOPLEText: Noriyuki Abe

作品の制作に最も重要な3つのポイントは何ですか?

言うまでもなく、彫刻、デザイン、動画にはデザインとプロセスの要素が必要。だけど、最近の絵は、もっぱらエネルギーを集める過程でその感覚に到達することから生まれている。僕が“半恍惚の段階”と呼んでいるものに一度たどり着けば、考えなんて無しに作品は仕上がる。僕にとってこういった最近の絵は、何かを表す目的として作ってしまったものは失敗。もしその中にロジックを見つけてしまったら、後から作品の価値が下がると思う。人々は常にその効果に驚くべきで、何かの印だと知ることもない、つまり不自然で計画されていない方がいいんだ。実際の音は、それ自体が不自然なんだけどね。(笑)

それはアシッドでハイになっている頭のおかしい人のように、ただあちこちにペイントするようなものだと思う。しかし、“半恍惚の段階”へのプロセスは、インスピレーションを探すだけではなく、正常な感覚で自分自身をプログラミングする難しい作業だ。適切な構成要素でいっぱいにしていくと、それはループ状態のポップスのコーラスパートか潜在意識下でプレイされる車の衝突のマントラのように組み合わせられた映画の1シーンのようになる。いつも正解とは限らないけど、その新しい何かがもし重要じゃない潜在意識から来るものなら、もちろんそのまま描き続けたりせず燃やしてしまうね。

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© Lung

描き終わる前にスケッチブックを見るのは、俳優が台詞を見るようなもの。後でならいつでもそれを見ることができる。「このシーンをランチの前に撮ってしまおう。」というタイプのホームコメディドラマではなく、アドリブの作品を作りたいと思っている。もしあなたが酔っていて、何かを書いたとする。そして朝それを読んだらきっとあなたが書いた長い論文よりももっと不可解なはずだ。僕はいつでもそう。人々が作品を見たときに証明される。“反恍惚の段階”で生み出された作品に夢中になってしまって、僕がすすめた作品を、彼らはそのまま選んでしまう。僕はほとんどそれを覚えていないんだけどね。

ここ数か月でもっともっと重要になってきたのがスピードだ。もし描くのに3時間かそれ以上かかったとしたら、前に述べたプロセスの一部になって終わってしまう。考えるための多くの時間のせいで、少しわざとらしくなってしまうんだ。エアブラシのひどい使い方をすれば、広範囲に早く描くことができる。(おっと、僕は乱暴に使っていると思われるかな?)沢山の違った作業をするときにはスピードが重要なのさ。さもなければ長いプロセスが支配的となる。もし、ある曲を1時間かけて作ったとすれば、間違いなく1年後にもそれを聴いているだろう。でももしそれを1週間で作ったとすると、二度とそれを聴かないかもしれないね。

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© Lung

90年代と00年代のロンドンでは何が変わりましたか?そして今はどうですか?

僕はいつもロンドンを愛しているよ。そうじゃない人は理解できない。時代が変わると人々のロンドンとの関わり方が変わってくると思う。90年代と00年代は純粋に文化の繋がりだった。僕にとってはその時、音楽がとても有力な言語で、ロンドンはフレッシュな音楽を届ける輝く街だった。それから、美術学校を離れ、大学ではない方法で芸術の世界に戻り、アートだったのかもよく分からないがもの作りを試せるという、違った理由で素晴らしい場所となったんだ。

クラブやギャラリーが減り、人々は何か別のものを探し始めたようだった。明らかに高級化がロンドンの痛いポイントであり、最後の2つのスタジオも豪華なアパートを作るために壊されてしまった。コミュニティは変化し、本当のプロレベル以外の多くの場所は、様々な作品を置くのをやめてしまった。賃貸料はひどいもので、ビジネスで成功した多くの友人たちも脅威に晒されていた。昔はおかしなことができる小さなクラブも沢山あったけど、今じゃ数が少なくなってそんな場所も4ヶ月間は予約でいっぱいさ。

これを書いている今も箱に入った200かそれ以上の絵と彫刻作品の山に囲まれていて、一つの会場でこれらを見せることは考えられない。それは、僕がこの場所とちゃんと繋がっていないという事実と関係があるか、それに合った場所がここには無いことを意味するのかもしれない。どれか一つで上手くいくアイディアは持っていないんだ。

他のどこかに住むことを考えるのは難しいよ。そのことを考えてはいるけれど、いつも実行には移らない。それだけ住むのにとても良い場所ということになるかな。

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