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ピエール・ユイグ「アンティルト・ホスト」展

HAPPENINGText: Shuhei Ohata

もう一つの作品「ホスト・アンド・クラウド」(The Host and the Cloud)(2009-2010年)は、入口で説明された通り、2時間に及ぶ長編の映像作品だ。現在は使用されていない民俗誌博物館で1年かけて撮影されたもので、ハロウィン、バレンタインデー、メーデーの3日間に起きたことが断片的に繋ぎ合わされている。博物館の職員は俳優たちが演じ、あらかじめシナリオが設定された部分もあれば、即興的に演じている部分もあるという。

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“The Host and the Cloud”, Pierre Huyghe © ADAGP, Paris 2016. Photo: Ola Rindal

行事の準備の段階から当日の様子が、まるで夢の中での出来事のように現れては消えていく。中でも特に惹かれたのは、幾つもの蝶が空に羽ばたくシーンだ。その一頭がある女性に止まろうとする瞬間、銃で撃ち抜かれたような爆発音とともに、鮮やかな色の煙が充満するシーンや、どこか恍惚の表情を浮かべた女性の姿などが映し出される。蝶は彼女に何をもたらしたのだろう?そんな不思議な感覚だけが残った。

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“The Host and the Cloud”, Pierre Huyghe © ADAGP, Paris 2016. Photo: Ola Rindal

この二つの作品に現れるモチーフには精神科学の影響を感じさせるものが少なくない。作家はそういった世界観を作品の中に導入して、現実の世界に働きかけている目には見えないものに形を与えているように映った。ただし、彼は様々なメディアやテーマの問題を扱っているので、それはあくまでも彼の興味の一つでしかないかもしれない。

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“The Host and the Cloud”, Pierre Huyghe © ADAGP, Paris 2016. Photo: Ola Rindal

今回の作品も鑑賞者が自由に解釈できるような曖昧さが意図的に残されていた。オカルト的なものや宗教的なものに対する知識は、偏見が先行して公に語られる機会は殆ど無いので、作品そのものが難解に映るかもしれない。だが、アートの最前線で活躍する作家がこうしたテーマを扱っている事、そしてそれを企業が、作家の表現として尊重し、積極的に世の中に紹介していく姿勢を目の当たりにできた事は、私にとって今回の収獲でもあった。最後に、「ホスト・アンド・クラウド」は作品の性質上18歳未満の入場ができないので、子連れで観に行く際には注意が必要である。

※9月30日からは展示替えで、「A Journey That Wasn’t」(2005年) と「Creature」(2005-2011年) の2作品を紹介

Pierre Huyghe「Untilled Host」展
会期:2016年6月25日(土)~2017年1月9日(月・祝)
時間:12:00~20:00
会場:Espace Louis Vuitton Tokyo
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル 7F
TEL:03-5766-1094
https://www.espacelouisvuittontokyo.com

Text: Shuhei Ohata
Photos: Ola Rindal © ADAGP, Paris 2016 © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

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