飛鳥デザインウィーク 2016

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

日本の心、真ん中に位置する、奈良県飛鳥地方。大阪と京都という日本の歴史を積み重ねてきた地域の内陸に位置する緑多き盆地は、この国で最初の大都市となる都が生まれた場所であり、仏教文化や法律の整備そして日本という国の名を歴史上初めて発信した場所である。そんな飛鳥で、日本をリードする建築家、デザイナー、ミュージシャンなどが集まり、この国のデザインを考える「飛鳥デザインウィーク」が、7月に開催された。

古くからの由緒ある仏閣で展開されたプログラムは、各分野の創造的な人々の感性が、その空間の趣によって高まりあう時間となった。

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明日香村

引退後、日本の伝統工芸の復興に取り組んでいる国際的な元サッカー選手である中田英寿と、香港のWホテル台北や新宿伊勢丹デパートなどのインテリアを手がけたデザイナーの森田恭通、日本の各地の伝統工芸をライフスタイルブランドへと転換し成長を続けている中川政七商店の中川淳・十三代目によるディスカッションは、都が移り、里山の中になりながらも、地域の人々が護り続けてきた日本で最も古く7世紀に造られた大仏のある飛鳥寺で、「工芸と『地方創生』」をテーマに展開した。

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ASUKA DESIGN WEEK 2016「飛鳥会議」、左から中川淳・十三代目、森田恭通、中田英寿、飛鳥寺(明日香村)

村での知恵の学びの場のごとく、大仏の前で繰り広げられたディスカッションは、地方に人を呼ぶためのデザインを中心に盛り上がった。伝統工芸を新たにデザインすることにより全国で売れる雑貨を実現している中川は『日本最古といった特徴ではストーリーにならない。わかりやすく物語をデザインし、形にすることにより、評判が広がり訪問したくなる地域になる』と語り、中田は『地元の意識ある人たちが常に来たくなる、快適な場所であったら、自身も訪問したくなる。そのような質の高い場を地元に作ることにより来たくなる場所になる』と世界中を旅してきた経験より提言した。森田は『女性が喜び、来たくなる場所ができたら活性化する。女性にとっていい場所は男性にとってもいい場所。そのような場所があるのなら外にわざわざ行かず、地元が集うだけでなく、色々な人が外から訪問してくる』と、売れる空間づくりの実践者として場のイメージを語った。

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スティーヴン・チータム
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