スズキユウリ

PEOPLEText: Aya Shomura

音と人の関係性のデザインを探求しているサウンドアーティスト、デザイナーのスズキユウリ氏が2016年1月、技術的そして観念的に多くの分野を交錯して時代の先を行くアーティストとその活動に贈られる「スワロフスキー・デザイナーズ・オブ・ザ・フューチャー・アワード 2016」を受賞した。彼は、世の中にあるメディアが全てデータ化され、実態がないものになりつつある現代、あえてそれらをデザインやオブジェクトで可視化する独自の表現方法を探求している作家だ。

難読症であるスズキ氏が生み出す視覚、聴覚に焦点を当てた作品は、直に触れて楽しむことで観客がサウンドの作り手にも奏者にもなることができる。また、作品を作るのみならず、子供を交えたワークショップや、視覚に障害のある方々とのアートパフォーマンスなど、画期的なアプローチも行っている。2015年は、イギリスのバービカン・センターで開催された「デジタル革命展」にもウィル・アイ・アムらと一緒に出品するなど様々なクリエイターらのコラボレーションも多い彼に、インタビューを行なう機会を得た。

Yuri Suzuki, Atelier Swarovski, Design Miami Basel, Wattens Visit, 2015, Photo: Mark Cocksedge
Yuri Suzuki, Atelier Swarovski, Design Miami Basel, Wattens Visit, 2015, Photo: Mark Cocksedge

この度の「スワロフスキー・デザイナーズ・オブ・ザ・フューチャー・アワード 2016」受賞おめでとうございます。感想をお聞かせ下さい。

ありがとうございます。サウンドデザインという自分の立場から主にプロダクト、建築、ジュエリーデザイナーに与えられるアワードを頂けたことに、驚いていると同時に、嬉しく思っています。様々な方向で自分の活動を行っているのですが、もう一つ新しい方向が開くことになり、とても楽しみにしています。

現在はイギリス在住ですが、海外へ出た理由を教えて下さい。

私は日本のアートユニット明和電機のアシスタント(工員)として土佐さんのサポートを大学在学中からしてきたのですが、ロンドンの百貨店セルフリッジに明和電機の展覧会、パフォーマンスのセッティングで訪れたことがきっかけでした。それから私が卒業した英国王立芸術学院(RCA)卒業生のアバケアンソニー・デューンクリスピン・ジョーンズらと交流が始まり、RCAで勉強したいと考えるようになりました。

"Sound Taxi", Commissioned by AiAiAi, 2015

“Sound Taxi”, Commissioned by AiAiAi, 2015

作品「サウンド・タクシー」は車体側面に67個のスピーカーがついていますね。どのような作品でしょうか?

デンマークのヘッドホンメーカーのアイアイアイから「街の音を何か素晴らしい音に変換する機械を作ることができないか」と相談されたことが始まりでした。大量のスピーカーと高性能マイクがロンドンタクシーに取り付けてあり、街のノイズ(車のクラクション、人の大声)など日常であまり好ましくない騒音をマイクに取り込み、独自のアルゴリズムでノイズを音楽に変換しスピーカーから出力します。


Sound installation “Garden of Russolo”, Commissioned by Victoria and Albert Museum and ICN Gallery, 2013

記録映像での子どもたちの本当に楽しそうな表情が印象的な「ガーデン・オブ・ルッソロ」について伺います。発案のきっかけは何だったのでしょうか?最初から、子ども達の笑顔が浮かんでいましたか?

この作品はロンドンのV&A ミュージアムのコミッションワークとしてスタートしました。美術館は静かに閲覧する空間で、音というものをより敏感に感じることができる場所だと思いました。そこで、私たちが発している音を改めて聞く機会を設けたいと思い、このインスタレーションを作りました。未来派の音楽家ルイジ・ルッソロからインスピレーションを受けた箱にはラッパのベルが取り付けてあり、そこに入ってきた音を音楽的に変化することできます。

音のプレイグラウンドを作りたかったんです。お子さんが楽しんでくれるかは考えていませんでしたが、通常僕が好きなものは子供向けのものが多いので、自然と子供たちにも楽しめるものになったのだと思います。

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