アウトを言い渡されたアート ー社会に切り込むアーティストたち。アートを前進させるには。

HAPPENINGText: Yoko Akiyoshi

既存の価値観や社会の常識に大胆に挑み、時代を反映させた作品を制作してきたアーティスト2組を招き、東京の青山ブックセンター本店で1月16日、トークイベント「アウトを言い渡されたアート ー社会に切り込むアーティストたち。アートを前進させるには。」が開催された。

京都を拠点に活躍する現代美術家の岡本光博氏と、アーティスト集団チン↑ポムの稲岡求氏が、アートマネジメントの専門家としてアーティストを支援する作田知樹氏の司会のもと、これまでに受けた作品の変更要請や規制、撤去や展示中止などの経験を語る一方、逆境をばねに取り組んだ新たな作品づくりや意図した思いを披露した。日本のキュレーターの仕事は多岐に渡るが責任を取ることのできない立場であるなか、2組はそれぞれにアーティストとして作品を作る一方、自分達のスペースを持ち、自主規制のない活動の模索や、展覧会企画の協力など活動の場を広げている共通点を持つ。

会場には約50人が詰めかけ、時に聴衆を笑いの渦に巻き込みながら進行したトークセッションは、「こんな面白い対談は初めて」という感想が寄せられるほど。また、テーマを深く掘り下げて真摯に向き合う2組の姿勢を目の当たりにし、「思慮の浅い人から“アウト”と言われるのは悔しいが、そこから味方が増えさらに展開しているのがすごい」など共感と激励の声が多数聞かれた。

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「アウトを言い渡されたアート ー社会に切り込むアーティストたち。アートを前進させるには。」トーク会場, 青山ブックセンター本店, 東京, 2016, Photo: Shoko Nakamura

作田:私は2004年に「アーツアンドロー」を立ち上げ、主に法的な面からのアーティスト支援に携わり、アーツアンドローと並行して様々な組織で助成金プログラムの運営や展覧会のキュレーターなどの仕事をしてきました。また、もともとアートに対する規制に関心があり、文化政策学の立場からその研究もしています。今日、お話していだたくお二人はアーティストとして作品を作り展覧会に出展する一方、作品制作のみならず展覧会の企画そのものをキュレーションする仕事もされています。もう一つの共通点は、そうした活動の中で直面した自主規制への経験から、自主運営のスペースを持ち、規制されない活動・展示も企画されています。まずは作品を見ながら自己紹介をお願いします。

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Chim↑Pom「スーパーラット」ビデオ(02’53″/02’28″), 2006/2011, 渋谷センター街で捕獲したネズミの剥製 © Chim↑Pom, Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

稲岡:ギャラリーでの展示としてはデビュー作の(ネズミの捕獲の様子を流しながら)「スーパーラット」という作品で、渋谷にいるねずみをメンバー皆で捕まえる映像作品で、捕ったネズミを最終的に“ピカチュウ”の剥製にしたり、他には、東京の色んな名所に大量のカラスを集める様子を撮った「ブラック・オブ・デス」という作品を作りました。「スーパーラット」に関してはその後、雑誌に何度か紹介された事で単純な営利目的と誤解されて、小学館から内容証明が来たりもしました。

3.11以降は原発関連で立て続けに作品を作っています。これは福島の相馬市で地元の青年と円陣を組み100回気合いを入れる「気合い100連発」という作品です。台本がないのでみんなの本音がちらほら出てきます。「友達欲しい」「旨い魚食べたい」など。最後のほうは放射能のことや、「原発ふざけんな」も。直前に市場で誘ったのですが、テンション高くのりが良い青年たちでした。原発関係と言う事ではないですが以前に原爆をテーマに扱った広島での作品で、原爆ドームのうえに飛行機雲で“ピカッ”と書く作品「ヒロシマの空をピカッとさせる」があります。もともと広島で展示予定でしたが、作品の制作段階で問題になり中止になりました。被爆者団体に謝罪し、その後話し合う機会を持ち、それは普通に作品にしただけではわからなかったことが沢山あって、チン↑ポムにとって大事な作品です。

作田:その後のプロセスは本になってますね。

稲岡:基本は絶版です、重版されてないので。(空に飛行機雲で字を書く)テストは行っていましたが、がっつり空に書いたのは本当にこの瞬間しかありません。何日も前から天気予報を確認して、当日も風とか空の状況を常に見ながらのほぼ一発勝負だったので。

作田:稲岡さんはチン↑ポムでどんな役割ですか。

稲岡:僕の役割はチン↑ポムの絵や展示の作り込みなど造形担当、普段あまり喋りやコンセプトの説明はしません。実働部隊です。

作田:「気合い100連発」では?

稲岡:あの中で一緒にやってました。

作田:では、岡本さんお願いします。

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