第19回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Takashi Ichikawa, Mariko Honjo

国内外の多彩なクリエイターやアーティストが創り出す最先端の芸術に触れることができる第19回文化庁メディア芸術祭が、2016年2月3日(水)から2月14日(日)まで開催されている。今年の受賞作品を中心に紹介している国立新美術館をメインに、TOHOシネマズ、スーパー・デラックス、セルバンテス文化センター東京にてアニメーション作品のスクリーン上映やパフォーマンスイベントが開催されている。ライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」では特別番組が配信されている。

今年の応募数は去年よりも増え、世界87の国と地域から4,417点の作品の応募があり、特に、アニメーション、マンガ部門への応募数は過去最多を記録したという。この記事ではアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガ部門の受賞作品が展示された国立新美術館の作品を紹介する。

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Adam BASANTA「The sound of empty space」展示風景

受賞された作品を各部門通して見てみると、全体を通して「アートとは何か、エンターテインメントとは何か、アニメーションとは、マンガとは」と各部門がそれぞれの受賞作品の選び方を問い直しているように思える。この記事の文頭で述べた「クリエイターやアーティストが創り出す最先端の芸術」という記述に反するように思えるが、今回の受賞作品の数々は最先端の技術というものを一旦咀嚼したなかで、より物事を多面的に捉え直し、光り輝く部分を抽出して創造しているように見える。

アート部門で優秀賞を受賞したアダム・バサンタ氏の「The sound of empty space」(何もない場所の音)はマイクロフォンとスピーカーが一列に配置され、スピーカーからは、揺らいだ美しい音が流れている。その美しい音とはマイクロフォンとスピーカーとの位置関係により生じたハウリングの音であり、マイクロフォンの傍には人も楽器も存在しないことから、鑑賞者はマイクロフォンとスピーカーとの間に存在する「empty space」を実体として捉えているように感じることができる。

現在のカメラといえば写真を撮るときにピントが綺麗に合うし、現代の乗り物は目的地へ昔より早く到着する。技術の進歩とは、世の中のあらゆることがより便利になる方向へ進むが、それは同時に、偶然や不得手が創り出す美しい瞬間を喪失する可能性もあるとも言える。この作品は、偶然機器同士が起こしてしまう現象を、調整することで美しい音に作り変え、機器同士の間に流れる目に見えない波長を音色として感じることで、まるで鑑賞する人間に「音とは何か」ということと「技術の進歩によって失われゆくものは何か」を音色を通じて問われているようだ

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しりあがり寿「Voyage de Hokusai」(北斎の旅) © SHIRIAGARI kotobuki

アート部門の審査委員会推薦作品「Voyage de Hokusai」(北斎の旅)は、漫画家・しりあがり寿が2014年にパリで開催された葛飾北斎の展覧会「Hokusai」に伴って制作したゆるいアニメーション、通称「ゆるめ~しょん」作品である。葛飾北斎の浮世絵作品をバックに、しりあがり寿によってデザインされた(息を吹き込まれたといった方が相応しいかもしれない)「北斎」のキャラクターが歌い、踊り、フランス語で語りかけてくるという、何とも愛らしく思わず顔がほころんでしまう映像作品だ。

作者のオフィシャルサイトにて、作中で「北斎」が口ずさむ独白の日本語訳を見ることができる。
「北斎は旅が好き 山が好き 海が好き 歌が好き 踊るのが好き 転ぶのも好き 跳ぶのが好き 空を飛ぶのも好き とりわけ絵が好き ホントにホントに好き 何よりも好き 北斎は北斎が描いた絵が好き 北斎は絵を描いてる北斎が好き 絵を描くのが好き 絵を描くのが好き 絵を描くのが好き そして北斎は生きることが好き」
この詞も勿論、しりあがり寿によるもので、葛飾北斎という人の絵を描くことへの情熱、そして生きることの喜びを感じると同時に、これは作者自身の制作への喜びの独白でもあるのではないかと想像せずにはいられない。

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