「カモフラージュはしない」展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

最新シリーズ「Strange Little Girl」(ちょっと変わった女の子)のタイトルは、アメリカの歌手トーリ・エイモスのアルバムからとられた。レヴェンソンのシリーズはいつもそうであるように、子供時代と子供達がやがて裏切られ、不安になり、寂しさを感じながら大人になるきっかけとなる外的要因を描いている。本作品の半分人間、半分動物の外観は神話のケンタウルスからインスピレーションを得ている。

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Detail of “The Chosen”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

シリーズの中の1作品「The Chosen」(選ばれしもの)は世代間の裏切りを描いているという。背中に赤いバツ印をつけた子羊は、家族写真の中の最も若い少年(レヴェンソンの祖父)を見つめている。トルストイの「どの家族も世代を超えて受け継がれる秘密と罪を持つ」という言葉を用いて、幼かった頃の祖父が抱えていただろう、多文化の家族の中で子供として生きていた苦悩を物語っていると言う。

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Detail of “The Chosen”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

差し迫った災難について語る初期の頃の作品と異なり、このシリーズは何らかの余波を追い、レヴェンソンはそこに新たな美学の方向性を見い出している。実際に縫って作られた洋服は子羊の頭を持ったフィギュアを、よりリアルに見せる。頭や体、洋服は皆白く、彼女の先祖から伝わる家族の罪を抱えた、少女の犠牲を象徴している。暗いガラスと黒とグレーの洋服は子供達の邪悪で暗い側面を見せているようだ。

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Detail of “The Chosen”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

ドメスティックバイオレンスや政治的に不安定な国で過ごした幼少期のパーソナルな経験が表現されているのか、曇りガラスのような質感のフィギュアはその少女の心なのか、どことなく寂しさを感じさせる。子羊の頭と人間の体を持つファンタジックな姿は、まるで見る者を物語の中に誘って行くかのようであるが、同時に、身につけた黒、グレーの洋服は相反して子供の心の中にある暗い部分を表現している。

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“Where are you going”, Silvia Levenson, The Museum of Craft and Design, 2015

子供時代の不可思議な世界。時に大人は自分たちが子供だった頃の記憶をもとに子供の世界をファンタジー化するが、その世界は実は大人の想像とはほど遠いものなのだとレヴェンソンは考える。子供達が、社会の善悪のルールを受け入れるまで。その時間は夢と現実のつかの間だ。

昨今の国際的なトレンドであり、特にイスラエルで流行っている、社会的、政治的なコメントをビデオで発表する動きについて二人のアーティストは懐疑的だ。二人は、ガラス素材を他の素材と組み合わせ、それを媒体としてメッセージを発信しているのだ。

Without Camouflage. Dafna Kaffeman. Sivlia Leveson
会期:2015年9月26日(土)〜2016年3月27日(日)
時間:11:00~18:00(日曜日12:00~17:00)
定休日:月・祝日
会場:The Museum of Craft and Design
住所:2569 3rd St, San Francisco
入場料:一般 $8、シニア&学生 $6、12歳以下無料
TEL:+1 415 773 0303
https://www.sfmcd.org

Text: Fuyumi Saito

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