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第18回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Takashi Ichikawa, Mariko Honjo

エンターテインメント部門で優秀賞を受賞した「のらもじ発見プロジェクト」(下浜臨太郎、西村斉輝、若岡伸也)は思わず顔がほころぶ作品だ。この作品は、町のいたるところで目にする少し古びた商店などの看板文字を「のらもじ」と称し、その形状を分析し、コンピュータで使用可能なフォントを制作するというものだ。そのフォントはウェブ上で配布され、ユーザーはダウンロードのうえ「のらもじ」を使うことができる仕組みとなっている。

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下浜臨太郎/西村斉輝/若岡伸也「のらもじ発見プロジェクト」展示風景

今回の会場では、スクリーンに看板を携えた商店の写真が映し出されており、来場者はキーボードで好きな文字をその看板部分に入力することができる。古き良き商店街の風情や、レトロな看板を、単にノスタルジックな鑑賞物として写真や映像に残すことは、かつていくらでも行われてきただろう。しかしこの作品はそこに留まらない。日々パソコンに慣れ親しんでいる私たちが気軽に取り入れられる「フォント」という形式に落とし込むことで、かつて名もなき看板職人たちが世に放った作品は、いつまでも私たちの生活の中で生き続ける。

エンターテインメント部門で優秀賞を受賞した「handiii」は3Dプリンターで作られたパーツとスマートフォンを利用した「気軽な選択肢」をコンセプトにもつ筋電義手である。

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近藤玄大/山浦博志/小西哲哉「handiii」展示風景 

筋電義手とは、人間が体を動かすことで発生する微弱の電位を利用して、擬似的に本人の意思によって手を動かすことを再現するものだが、今までは義手といえば、人肌に似せて作られていることが多い。この「handiii」は色やパーツを自分の好みに変更できることから、ファッションとしての要素を兼ね備え、指先にICチッブやマイクを組み込む等の拡張性があることで、手を超えた手といえる存在になる可能性も感じられる。

近年、時計やメガネといったウェアラブルデバイスが続々と開発されているが、義肢というものがそれらを必要としている人にとって、その動作を補完する役割以上に、着用している姿が羨ましいと思われる未来がくる可能性を秘めていると思わせる美しいフォルムの作品だった。

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