アイスヒルズ ホテル IN 当別 2014

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

IMG_7712「アート」と「北欧」を氷点下で楽しむ、氷と雪でつくられた神秘の世界。

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Photo: 大西紘記

厳冬期を迎えた日本の2月。北海道の雪景色の丘に「アイスヒルズ ホテル」がオープンした。氷と雪で建てられたホテル棟と、レセプション棟の「ロイズ・アイスバー」、そして周辺エリアを舞台に、氷点下でアートを楽しむ滞在体験、地元食材を味わえるレストランや、スノーモービルやソリ滑りなど冬ならではの遊びを多彩に用意し、国内外から訪れた人々を驚かせている。

アイスヒルズ ホテルがオープンしたスウェーデンヒルズは、北欧スウェーデンのレクサンド市と姉妹提携を結んでいる札幌近郊の石狩郡当別町内にある。この地区では一部の電線を地中に埋めるなど、自然景観を保全したスウェーデンの街並みを再現している。毎年夏にはスウェーデンの伝統行事である夏至祭を開催しているが、今年は新たに、長い冬を楽しむ催しとして、スウェーデンの冬の風物詩として知られるアイスホテルが取り入れられた。

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ホテル棟のクリエイティブディレクションは、北海道の優れたカルチャーを国内外へ発信するプラットフォーム「クリエイティブ北海道」プロジェクトの一環として、クラークギャラリー+SHIFTが担当。滞在体験ができる3棟の客室デザインは、地元北海道を拠点に活躍するアーティスト3組に依頼。その豊かな発想を、本場スウェーデンでアイスホテルづくりの経験を積んだ、糸冬工藝社のアイスビルダーが形にした。

プロジェクトの共通したテーマは、「自然と人」。アートによって北国の自然と共に生きるための、美しい関わり方を想起させることを伏線としている。今後、アートを中心として魅力あるコンテンツを充実させながら、継続して地域の魅力を創出し、発信していくことを目指している。

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蒲原みどり「ホワイトガーデン – 白の間」

札幌を拠点に、広告デザインや装画なども手がける画家・蒲原みどりによる「ホワイトガーデン – 白の間」は、純白の雪を素材として、自然風景を描いた絵画が、ベッドを囲む三面の壁に彫刻されている。正面の壁には花がひらき、側面に生える草の中には野鳥と野うさぎが佇む。訪れた人々は、異空間で解き放たれた絵画の世界へ入り込むという、幻想的な体験をすることができる。

原画の自然風景は、極めてシンプルに描かれた上品な静寂の中に、揺るぎない野生の意識を感じさせるものだった。ときに轟々と地吹雪が鳴る地で、厳寒の氷雪に守られた白い静寂の一部となって、秘められた野生の囁きに耳を澄ませてみてほしい。

現在、クロスホテル札幌で開催中の「クリエイティブ北海道展」には、金箔を用いた絵画作品「Garden #12」を出展している。

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澁谷俊彦「アイスパレット – 光の間」

札幌を拠点に、北海道の自然と共鳴するインスタレーション(空間を使った3次元的表現)を展開する美術家・澁谷俊彦による「アイスパレット – 光の間」は、さまざまな色彩に染まった氷のブロックが雪の壁に埋め込まれている。ただし、着色した水を凍らせたのではなく、カラーライトを照らしているのでもない。壁に埋め込まれたシートの蛍光色が自然反射して、無色透明の氷が色彩に染まっているように見えるのだ。

その独自の手法は、北国の自然そのものの性質と可能性を尊重し、負荷をかけることなく美しさを際立たせながら、天候や時間帯など、訪れるタイミングによって作品を変化させる。ときに暖かく、ときに甘いその印象は、思いがけず贈り物をもらった時の喜びに似ている。自然へ贈られたささやかな色彩は、自然から返ってくる贈り物となって、人々の目を優しさで染めてくれる。

現在は他に、北海道小樽市の小樽運河プラザと小樽貴賓館(旧青山別邸)では、雪上インスタレーション「スノーパレット5」を雪解けまで開催中。「クリエイティブ北海道展」には、白い自然素材を使用したオブジェ「ホワイトコレクション」を出展している。

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藤沢レオ+岡崎宗康「アイスステップ – 段の間」

「アイスステップ – 段の間」の空間デザインを共作したのは、北海道苫小牧市を拠点にアートイベント「樽前 arty +」(タルマエアーティ プラス)を主催し、積極的に地域や社会と関わる金属工芸家・彫刻家の藤沢レオと、苫小牧市出身で東京を拠点に活動する一級建築士の岡崎宗康。

ドアを開けると、入り口には厚い氷の壁が立ちはだかり、内部の様子がよく見えない。入っていくと、壁の裏には、強い北風に運ばれて流氷が接岸したかのように、氷の段が立体的・造形的に重なっている。外壁へ突き出す氷の柱から取り込まれた外光は、氷の冷涼な質感や透明感を美しく引き出している。

室内にして、広大なバルト海やオホーツク海をイメージさせる空間だ。滞在者は、不在の大海を漂流するかのように流氷から流氷へ渡り、辿り着いた冷たい氷のベッドで、暖かい寝袋に包まりながらアザラシのように夢の世界を漂うことができる。流氷が減りゆく地球環境に思いを馳せる人もいるかもしれない。

現在、藤沢レオは「クリエイティブ北海道展」に、鉄の彫刻作品「種 – 素描 -」を出展している。

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「ロイズ・アイスバー」

ホテル棟よりひとまわり大きなレセプション棟「ロイズ・アイスバー」には、ロイズのチョコレートに見立てた氷のインテリアが随所に配置された。氷でできたカウンターでは、氷のグラスに入った色鮮やかなカクテルや、冷えた体を温めるロイズ・スペシャル・ホットチョコレート、ホットワイン、スープなどを飲むことができる。内部の雪の壁には、プロジェクターで設営の記録映像などを投影している。

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「アイスヒルズホテル in 当別 2014」は、当別町の新たな冬の風物詩を目指し、デザインプロダクションのアウラ、I-PRO、クロスホテル札幌が主体となり実行委員会を発足。当別町にチョコレート工場を構えるロイズコンフェクトや、スウェーデンゴルフ倶楽部スウェーデンハウス、そして当別町役場など、地域活性を願う人々の強力なバックアップを得て、約1ヶ月という短期間で設営された。

限られた期間のみの催しで、春には溶けて流れる氷雪であるとしても、一過性の流行に消費されるものではない。アーティストが地域と関わることの価値は、アートの創造性により、人々が日常では見られない視野を広げてくれたり、地域で考えたことのない可能性に気づかせてくれることにある。広く一般の人々がアートに触れることが、日常の暮らしをより豊かにするような、イメージアップを伴う地域づくりへ繋がっていくのではないだろうか。

アイスヒルズホテルでの滞在体験は、クロスホテル札幌の宿泊者向けアクティビティープランとして、気軽に利用できる日帰りコース及び、最大12時間滞在体験が可能な、タクシー送迎付きのオプショナルツアーが用意されている。
冬季ならではの自然を満喫できる当別町で、「アート」と「北欧」がある暮らしの楽しさを、ぜひ体験してほしい。

ICE HILLS HOTEL in TOBETSU 2014
会期:2014年2月1日〜3月15日
時間:11:30〜20:00(会期中無休、天候により閉場する場合あり)
会場:スウェーデンヒルズゴルフ倶楽部
住所:石狩郡当別町スウェーデンヒルズ2788-28
主催:アイス・ヒルズ・ホテル in 当別 2014 実行委員会
特別協賛:ロイズコンフェクト
協賛:ボルボ
特別後援:当別町、スウェーデンハウス
入場無料 ※場内での飲食、滞在体験は有料
協力:クリエイティブ北海道、アート札幌
http://www.icehillshotel.com

Text: Ayumi Yakura
Photos: Yoshisato Komaki

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