デイビッド・ビランダー展「コイ・フォー・ジョイ」

HAPPENINGText: Mike Sullivan

スイス生まれ、ミュンヘン在住のアーティスト、デイビット・ビランダーは、ミュンヘン美術院でアートを学んだ。制作において様々な素材、プロセスを用いる事で知られている彼の作品は、近年ハーバート・ホフマン賞や、コンテンポラリージュエリー界で功績を残したアーティストに贈られるフランソワ・ヴァン・デン・ボッシュ賞を受賞するなど注目を浴びている。

最近ではスイス大使館がスポンサーとなり、インド料理、マーケット、アート関連の施設で有名な通りブリック・レーンにあるロンドンのギャラリーSOで展覧会が行われた。この展覧会は創造力のプロセスがどのように作用するのかに焦点を当て、現代アートやジュエリーの認識を刺激することを目的に行われた。ギャラリー内は2つの異なったエリアに分かれており、正面はアート作品の展示スペースとして、奥の広いスペースは短期間のプロジェクトや展示の為に使われている。

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David Bielander, Scampi (Cooked), 2009, Pendant, Silver & Anodised Copper

彼の作品における共通のテーマ、インスピレーションは、分かりやすい動物、フルーツや身体の一部など。こういったそれぞれの作品の観客に伝わりやすいテーマは、人々が作品に使われている変わった材料に注目し、実験的な関係性をつくり出す。ジュエリーとしてデザインされたことによって、作品を誰もがアートピースとして身につける事ができ、必然的に様々な会話が生まれることになる。

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David Bielander, Koi, 2013, Bracelet, Leather & Drawings Pins

中でも最も素晴らしい代表作は「鯉(KOI)」だ。このブレスレットはイギリス国旗の配色で、日本の伝統的な魚「鯉」を象っている。画鋲を用いて作られ、シャープな印象を与えているが、内側には柔らかいレザーが使われ、とてもつけ心地が良い。色や形がとても美しく、パッと目を引くアクセサリーだ。

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David Bielander, Hannibal, 2013, Teapot, Aluminium

ジュエリーとしては面白い例外だが、紅茶で有名なイギリスにぴったりのアルミニウム製のティーポットは、ハンニバルと名付けられた。一般的なキッチンで見かける日用品と象という驚きの組み合わせによって、ありふれたものがこんなにも美しくなるということに気付かされたり、その大きさと優美さで有名でありながらも象牙のために殺されてきた象について、思い起こさせるきっかけとなるよう考えられている。

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