デイビッド・ビランダー「コイ・フォー・ジョイ」

HAPPENINGText: Mike Sullivan

クリエイティブな素材を使うクリエイティブな才能。

スイス生まれ、ミュンヘン在住のアーティスト、デイビット・ビランダーは、ミュンヘン美術院でアートを学んだ。制作において様々な素材、プロセスを用いる事で知られている彼の作品は、近年ハーバート・ホフマン賞や、コンテンポラリージュエリー界で功績を残したアーティストに贈られるフランソワ・ヴァン・デン・ボッシュ賞を受賞するなど注目を浴びている。最近ではスイス大使館がスポンサーとなり、インド料理、マーケット、アート関連の施設で有名な通りブリック・レーンにあるロンドンのギャラリーSOで展覧会が行われた。この展覧会は創造力のプロセスがどのように作用するのかに焦点を当て、現代アートやジュエリーの認識を刺激することを目的に行われた。ギャラリー内は2つの異なったエリアに分かれており、正面はアート作品の展示スペースとして、奥の広いスペースは短期間のプロジェクトや展示の為に使われている。

David Bielander 'Koi For Joy'
David Bielander, Kraken, 2012, Candelabra, Cast Bronze, Limited ed.12

彼の作品における共通のテーマ、インスピレーションは、分かりやすい動物、フルーツや身体の一部など。こういったそれぞれの作品の観客に伝わりやすいテーマは、人々が作品に使われている変わった材料に注目し、実験的な関係性をつくり出す。ジュエリーとしてデザインされたことによって、作品を誰もがアートピースとして身につける事ができ、必然的に様々な会話が生まれることになる。

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David Bielander, Koi, 2013, Bracelet, Leather & Drawings Pins

中でも最も素晴らしい代表作は「鯉(KOI)」だ。このブレスレットはイギリス国旗の配色で、日本の伝統的な魚「鯉」を象っている。画鋲を用いて作られ、シャープな印象を与えているが、内側には柔らかいレザーが使われ、とてもつけ心地が良い。色や形がとても美しく、パッと目を引くアクセサリーだ。

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Gallery S O London

ジュエリーとしては面白い例外だが、紅茶で有名なイギリスにぴったりのアルミニウム製のティーポットは、ハンニバルと名付けられた。一般的なキッチンで見かける日用品と象という驚きの組み合わせによって、ありふれたものがこんなにも美しくなるということに気付かされたり、その大きさと優美さで有名でありながらも象牙のために殺されてきた象について、思い起こさせるきっかけとなるよう考えられている。

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Simon Bielander

クラーケンは青銅の鋳物で作られた数本の触手がついたキャンドルホルダー。ユニークなネーミングの「クラーケン」は、映画「パイレ-ツ・オブ・カリビアン」で登場し注目を集めた、神話に登場する船を沈没させるというの海の怪物だ。この作品は、イカのごくありふれた形にファンタジーをミックスした印象に残る作品だが、アート作品としてではなく実際に使えるようデザインされている。

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David Bielander, Lips, Brooch, Jar Seal Rubber & Steel

ガラス瓶のゴムシールを使用したリップと名付けられたブローチは、ビランダーが使用する素材の多様性のよい例。舌を出した生意気が面白く、話題を呼ぶアクセサリーだ。

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David Bielander, Slug, 2013, Salt Cellar, Silver, Fine Gold Plated, Limited ed.12

一般的にアートや美しいものとしては位置づけられないナメクジにインスピレーションを得たこの作品は、かなり型破りなものだと言える。純金と銀のプレートで作られており、ナメクジのアートのように見えるが、実際は背中を下に横たわったナメクジのくぼみに塩を入れて使用する。こんなに身近の生き物でも美しさを見つける事ができるということを気付かせてくれる作品。

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David Bielander, Scampi (Cooked), 2009, Pendant, Silver & Anodised Copper

結論から言えば、ビランダーにとっての素材はさして重要ではない。一般的な素材でつくられたものは、人々にそれが何で作られているかということを忘れさせ、ただ何ができたのかという結果だけに集中させてしまう。この展覧会では、ジュエリーからキッチン用品、また大地を歩く巨大な動物の象や、どこの庭にもいる小さいな生き物のナメクジなど、全く違った要素をミックスしたバラエティに富んだ新しいアート作品を見せてくる。

David Bielander “Koi For Joy”
会期:2013年5月3日〜6月30日
時間:12:00〜18:00(日曜17:00まで、月曜火曜定休)
会場:Gallery S O London
住所:92 Brick Lane, London, E16RL, UK
TEL:+44 (0)20 7377 8008
http://www.galleryso.com

Text: Mike Sullivan

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