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札幌美術展「アクア・ライン – 岸辺に沿った美術」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

今回の出品作家は14名中3名が写真家だ。3名が異なるコンセプトで撮影した、水にまつわる北海道の風景写真が、それぞれの展示スタイルで表現されている。

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「20100214192908titose」前澤良彰, 2010年 © 前澤良彰

前澤良彰の写真には、道内各地で撮影された水の光景が、収められた黒い箱の中から発光するように浮かび上がっていた。よく見ると、モノクロームの所々にカラーが見られる写真もある。2009年の札幌を空撮した写真には、霞む街を流れる豊平川が捉えられている。地上では知り得なかった川のラインが、その美しい姿で今もこの街を流れている事実に、深い安らぎを覚えた。千歳の森の中で撮影された湖面には、肉眼では決して見ることのできない、北海道の澄みきった空気が映り、空へ光を反射しているようだった。

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「Escualo」蒼野甘夏, 2010年 Photo: © 山岸せいじ

蒼野甘夏は、今回唯一の日本画家だ。日本古来の技法を受け継ぎながらも、南米の打楽器で演奏された音楽から着想を得ているという点が興味深い。「バトゥカーダ」は、密教の大威徳明王を、女性に置き換えて描いた作品だ。三面六臂六足で水牛に跨る様子からは、神でありながら自由奔放な印象を受けた。「Escualo」の、薄い衣を纏いサメを操る女性は、気高くも危うさを醸し出していた。新作である「岸想図」の、横長の画面に白い波の線が大渦を巻く海辺では、美しい人魚が頬と唇を色づかせながら、誰かを想っているようだった。

3作品共に、伝統柄を現代的に再構成した波線や格子柄によって、画面がスタイリッシュに構成されている。

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