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キース・ライリー / ファブリック

PEOPLEText: Monika Mogi

それぞれの作品がとても印象的ですね。どれくらいの人々がこれらの作品に関わり、そしてどうやって作ったのでしょうか?

「印象的」というコメントをくださったことに感謝します。そのように思って下さったことを、とても誇りに思います。展示されている作品は、基本的にジョナソン・クークとロベルト・ロゾリンという、2人のアーティストによるものです。どのプロダクションにも特別なフォーマットはありませんし、そのチームをプロデュースすることにおいても特に変わったことはありません。

それぞれの作品は一人の個人によるものとも言えますが、そこにはアーティストを支えるフォトグラファーやモデル、編集者など4〜5人のチームが存在していることは確かです。これらの支えは、アーティストのディレクションのもとにあるものです。私たちはそれぞれの作品に、沢山の技術とプロセスを注ぎ込み、これらはグラフィックデザイン、写真、彫刻、モデルメイキング、ペインティング、破壊行為さえも含んでいます。時々私たちは、破壊したり、削ったり、何かしらの方法で変換したりして写真を撮るということに、単純な興味をもちます。

ただ一つ決してやらないのは、作品を売ったり、写真を撮り溜めるということ。それぞれの作品一つ一つが、私たちのアート部門の斬新な創作なのです。大抵、ひとつの作品を仕上げるために、沢山のプロセスが必要となります。私たちが撮った膨大な写真からひとつを選び、そこにモデルをおき、また写真を撮り、その写真を別の方法で痛めつけ、例えば酸をかけたり、もっとペイントしたり砂をかけたりインクを塗ったりして、さらにまたその写真を撮る。そこにはルールなんてないし、作業を進めるのに決まったパターンもありません。ただそれは、公開する前その美しさが約束されていなければなりません。

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Photo: Nozomi Kato

どうしてファブリックのようなクラブでアートを展示することが必要なのでしょうか?

アートをプロデュースする人は誰でも、それを人に見せるということが必要不可欠だと思います。表面的に考えれば、それはただ良いことのように思えます。アートが好きな人やそれを見るのが好きな人、でも近代の特殊な時代のなかでは特に、アートと人々の関係性は過去になかったほど重要なものになってきていると思います。あまりにも多くの醜いものや攻撃的なものが私たちの生活には直面していて、どうしても芸術的な美しさのバランス感覚が必要ですし、あらゆる価値や物事のなかで人々の感覚がひどく鈍ってきているように思います。

実際に、他の全ての人間の存在要素は、私たちの思考と魂を枯渇させたり退化させてしまいます。でもアートは、どんな形式であったとしても、私たちの生活において、人間であるということがどういうことか思い出させてくれるひとつの宝です。愛を感じたり、共感したり、単純に語るということだけでなく実際に同情を示すこと、そして場合によっては困難なことですが少しの無私無欲さを見せること。

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Photo: Nozomi Kato

あなたは、いま一体いくつの戦争や紛争が行われているのか、聞いたことがあるでしょうか。約30の戦争が常に地球上で行われているのです。あなたは、いくつの国が汚職や賄賂、虚偽やあからさまな私利私欲から解き放たれて運営されていると思いますか?それはほとんどゼロに近いのです。あなたは、世界でだいたいどれくらいの人々が、敵を恐れながら日々を生き抜くことに追われているか、立ち止まって考えたことがありますか?この問題に関しては、数え切れないほどの人々が苦しんでいます。

これに関して、アートや他の方法を利用して、それらの問題を和らげる義務があるとは思いませんか。このような問題に、アートを使おうと考えるのはとても難しいことだとは思いますが、ただ見て見ぬふりをするのではなく、やってみることが大事だと思うのです。そして、全くアートがない世界が、どれだけ冷酷なものになるのか、想像してみることも面白いです。

当たり前の生活を何不自由なく暮らせる、いわゆる先進国とよばれる国々に住む人々にとってさえも、仕事や理性など日々の戦いを生き抜くことは時にとても難しいことですが、アートを楽しむなど、そこに少しの美があれば少しは楽になれるに違いありません。望むのは、私たちが気持ちよく暮らせるようになれば、日々の振る舞いもより良くなっていくということです。

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Photo: Nozomi Kato

ファブリックの雰囲気や、またいわゆるロンドンのナイトライフで過ごしたこの年月のなかで、変化したこととは何でしょうか?

音楽以外に、特にファブリックで変化したことはないです。いつもシンプルな哲学がベースにあるだけなので、変化は必要ありません。良質なサウンドシステムと、斬新で本当に素晴らしい音楽を守るというポリシー以外の何ものでもありません。ありがたいことに、新しい音楽の波がいつもここにはあります。私たちの仕事は、それを探し出して、人々に見せるということです。このシーンは、確実にもっと大きくなり洗練されていくでしょう。

人々は近年、よりよい音楽を聴いていると思うし、より深く音楽を理解し、受容しているように感じます。彼らは本当にそのことを良く分かっていて、新しい音楽を発掘することにとても熱心ですし、チャンスをくれ、少し間違った方向に進もうとしたときに気づかせてくれたりもします。それがファブリックのクラウドを愛している理由です。彼らはいつも、私たちが挑戦することをサポートしてくれます。彼らがこの仕事の本当の勝者です。彼らの情熱がなければ、新しい魅力的な音楽を聴くことはできないのですから。

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