FIAC 2012
HAPPENINGText: Wakana Kawahito
公園の木々が黄金に色づき、落ち葉が並木道を覆いだす頃、秋のパリは「FIAC」の季節を迎える。ロンドンのフリーズ・アートフェアに続き、FIACはヨーロッパの現代アートフェアとして歴史もレベルも評価されている世界的なアートフェア。世界中からコレクターやバイヤー、ジャーナリストなどのアート関係者が集う。
メイン会場は例年の通り、グラン・パレ。改装が終わった2階部分でも展示が行われており、フランス国内を中心に世界24カ国から182のギャラリーが出展した。今回は、ギャラリーのブース展示が行われたグラン・パレに加えて、野外展示が充実していた。チュルリー公園、ヴァンドーム広場、アンヴァリッド公園、自然史博物館公園など、パリの観光名所に現代美術作品が出現し、アートファンのみならず多くのパリジャンを魅了した。
今年のFIACの様子を、写真を中心に紹介したい。まずは、グランパレ会場から。
会場は入ってすぐの、ロンドンのギャラリー、ホワイトキューブ。多くの人がダミアン・ハーストの作品を写真に収めていた。
パリ、ドイツのケルン、サン・モリッツの3つを拠点にしている、ギャラリー・カーステン・グレーブでは、日本ではあまり見られない種類のルイーズ・ブルジョワの作品が。
パリの老舗ギャラリー、イヴォン・ランベールの入口には、ちょうど現在、ポンピドゥー・センターでも展示を行っている、ミルチャ・カントルの作品を出展。
FIACの中でもかなり挑発的な作品だと話題だった、ハウザー&ワース・ギャラリーのポール・マッカーシー「Static (Brown)」。
有名アーティストを抱える、パリのデニス・ルネ・ギャラリー。
日本から唯一参加したTake Ninagawaは青木陵子の作品のみを展示した。
グランパレ会場の様子。
チュイルリー公園での屋外展示。 ドイツ人アーティスト、ユルゲン・ドレシャーの「カーペットの家」。通常はハンドメイドのカーペットで作られるベルベル人の家を、アルミニウムで模倣し、アート市場とベルベル人のローカル経済という2つの違った経済の間に立とうとした作品。
ベネズエラ出身でパリで活動するカルロス・クルズ=ディエズは、赤・緑・青の3つの単色で出来た四角い部屋に観客を招くことで、 時間と空間に対する身体の反応を意図的に作り出し、色に対する気づきを促す。
もう一つのメイン屋外展示場である、パリ植物園。入口すぐに置かれた作品は、公園の落ち着いた雰囲気とは異なる、グラフィティの文字が目立つ。ルーシー&ジョージ・オルタの「Antarctica World Passpart Delivery Bureau 2012」は、南極のパスポートを発行するパフォーマンスで、そのパスポートは、すべての人が好きな場所に移動する権利がある、というもの。この作品は、現代の壊れやすい社会と環境の中で人間らしさを取り戻すため、早急な対応が必要だと訴える。
イギリス人アーティスト、デイヴィッド・ナッシュの作品。一見、木製のオブジェのように見えるが、ブロンズで作り、木のように見せている。
河原温のリーディングパフォーマンス「One Million Years」。これまでも2002年のドクメンタ11など、さまざまな場所で上映されてきた。ガラス張りの部屋の中で、1組の男女がFIAC期間中、英語で年号を読み上げた。
ホテル・リッツがある有名なヴァンドーム広場は、今回初めてFIACの会場となった。ジャウメ・プレンサは鉄やブロンズなどでつくる人物像の彫刻が知られる、スペインを代表するアーティスト。「Istanbul Blues」という白い楽譜で形作られた作品は、このFIACが初のお披露目となった。
文字で掘り出した頭の彫刻「Irma’s White Head」。
FIAC期間中はほとんど雨の日だったのが残念。しかし、週末は雨にも負けず、グランパレ会場には長蛇の列ができ、屋外展示も芸術の秋を楽しむパリジャンで賑わった。
FIAC 2012
会期:2012年10月18日〜21日
会場:グランパレ、チュイルリー公園、パリ植物園、ヴァンドーム広場他
http://www.fiac.com
Text: Wakana Kawahito
Photos: Wakana Kawahito