ボロス・コレクション

PLACEText: Kiyohide Hayashi

吹き抜けには、長いコードで吊された扇風機がゆっくりと空中を旋回している。吹き出された風によって宙を漂う動きは予想がつかずユーモラスな印象を与えている。他のエリアソンの作品については光を用いた作品が多く展示されており、どことなく重苦しさを漂わせる空間を艶やかな光で満たしていた。

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Kris Martin, “For Whom…”, 2008. Photo: Achim Kukulies

一方、強烈なインパクトを与えるものといえば、建物に入ってまず目に飛び込むクリス・マーティンの作品を挙げることができるだろう。吹き抜けにはむき出しの巨大な鐘が取り付けられおり、規則的に左右に振られて轟音が鳴り響いているように見える。しかし鐘は音を鳴らす舌が外されているため、見るものは視覚と聴覚のギャップに気付くことになる。圧倒的な迫力を持つ空間に負けることなくそれを活用している点で、この作品は一層際立っていた。

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Santiago Sierra “Construction and installation of Teerbeschichteten Formen, with Den Massen”, 5 x 75 x 800 cm, Arranged in two rooms, 2002. Photo: Noshe

またオブジェやインスタレーション作品だけに焦点を当てるだけでなく、サンティエゴ・シエラのようなポリティカルな作品もコレクションに顔を出している。彼の写真作品は、お金を対価に貧しい人々に無意味な行為をさせることを記録しており、経済格差や資本主義による搾取を暗示している。しかし個人の富によって築き上げられたプライベート美術館の中では、アーティストによるコレクターへの批判とも、コレクターによる富の蓄積に対する贖罪のようにも見えて興味深い。

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Olafur Eliasson “Berlin Colour Sphere”, 2006. Photo: Noshe

他にも、サラ・ルーカス、リクリット・ティラバーニャ、またヨーン・ボックなどいずれも著名なアーティストの作品が多数展示されており、コレクターの90年代以降の現代アートへの興味をうかがうことができるだろう。

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