ボロス・コレクション

PLACEText: Kiyohide Hayashi

広告という「何かを知らせること」を職業としてきた人物が、自らの趣味を表に出すためにプライベートの美術館を建てたとみなすのは安易すぎるだろう。では一体、彼は何を伝えようとしているのだろうか。彼が自身の美術館について語るのは現在の一部となろうとする欲望である。購入する作品は徹底して今制作されている現代のものであり、過去の作品に興味を見せようとも所有することはない。

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Christian Boros. Photo: Noshe

また展示されている大部分の作品は、アーティストに展示場所を選択させ、直接設置に立ち会わせている。この点では作品と空間の共鳴だけでなく、アーティストとコレクターの信頼関係が強調されている。なぜならコレクター自身の手で美術館を完成させるという自己満足には目もくれず、アーティストとの共同作業によって共闘して時代を作ろうと目論んでいるからである。

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Monika Sosnowska, “Untitled”, 2005. Photo: Noshe

むろん、そこに “ブンカー” の存在は大きな意味をもってくる。このおぞましい建造物は今なおベルリンの現在を反映し、現在の一部となろうとするコレクター、そして現代に生き作品を作るアーティストとの強烈な共鳴を生み出す。ここでは見るものが向き合うのは美術にのみ繋がれた「現在」だけでない。そこにはベルリンに繋がれた「現在」があり、私たちにとっての「現在」とも出会えるかもしれないのだ。

ボロス・コレクション (Boros Sammlung)
住所:Reinhardtstr. 20 10117 Berlin-Mitte
営業時間:金曜日14:00〜18:00、土・日曜日10:00〜18:00
入場料:10ユーロ(要予約)
TEL:+49 30 2759 4065
https://www.sammlung-boros.de

Text: Kiyohide Hayashi

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