YUUMI(優味)

PLACEText: Ari Matsuoka

ドイツ・ベルリンを遊び尽くした美食家や芸術家たちが、今密やかに通う創作モダンレストランがある。
ネルドナープラッツ駅から徒歩5分の場所に、ひっそりと佇むレストラン。温もりを感じる木材を基調としたインテリアに、広く間隔を取ったテーブル、その奥には、これから物語のワンシーンが始まりそうな、大きな無垢材のカウンターが私たちをもてなしてくれる。

YUUMI(優味)」は、日本人オーナーの水谷優太さんとドイツ人の奥様ミヒャエラさんの二人で始めた“完全予約制”のレストランだ。今回は、優太さんがベルリンでレストランをオープンされるまでのストーリーや、徹底された食空間への拘りをお伺いした。


Photo: Ari Matsuoka

この度は、「レストラン優味」のオープンおめでとうございます。早速ではありますが、このお店がオープンするまでの経緯を教えてください。

僕らのお店をつくるにあたって、実はかなり時間がかかっていて、多分もの凄くレアなケースというか。まず、ベルリンの起業事情って物凄く複雑なんですね。うちの物件の場合は、元々カフェ物件だったのですが、カフェを買い取ってそのままレストラン開業の申請をするんですけど、この物件を契約して鍵を受け取ってから、オープンまでに結局14ヶ月かかりました。

主な理由としては、ベルリンの複雑な書類審査が挙げられます。私たちのお店は、内装から家具まで全て手作りで製作しています。同業種の方からのサポートもあり、なんとかオープンする事ができましたが、ベルリンで飲食店をオープンするのはとても大変なことなのです。


© YUUMI

役所から正式にオープンしても良いと通達を受けたのが12月中旬だったため、私たちは12月24日というクリスマスイヴの日にオープンする運びとなりましたが、本来は2019年4月にオープンする予定でした。実は、僕たち夫婦の結婚式を4月のオープンと同時期に挙げたいなと考えていたのですが、それも結局できず、お店の内装を再工事しながら9月に入籍し、結婚式を挙げました。

ベルリンでの開業について一番難しいところは、例えば、カフェとレストランという同じ飲食店同士の引継ぎであったとしても、申請に時間がかかってしまったり、審査に時間がかかってしまうというところですね。ここまで苦労して自分たちでレストランをオープンさせる人達って本当に少なくて、途中で断念してしまう人たちがとても多いんです。そういった意味でも僕たちは、周りの友人や恩師の方が助けてくれたり、応援してくれたことが本当に大きな支えとなりました。

観光客の行き交うミッテ地区や人気エリアを避け、なぜこの場所を拠点として選んだのでしょうか?

お店のコンセプトとして、“完全予約制”なので、特別人気エリアでなくても良かったんです。ノードナープラッツ駅から歩いて5分という立地は、本当に料理が好きな人が通えるお店として、これから5年後、10年後を見越した時に今以上に良い物件になっているのではないかという推測もあって選びました。

この物件を見つけるまでにも50〜60件は空き物件を回りましたが、ここが一番しっくりきたんです。お店をオープンするには“運”も必要になってくるので、本当に、今改めてこの場所でお店を構え、こうしてお客様を出迎えることができて良かったです。

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