シブカル祭。

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

女子クリエーター100人の祭典

シブカル祭。

このところ元気な渋谷・原宿界隈で、渋谷パルコを拠点とし若手女子クリエイターばかり100人を集めた“文化祭”「シブカル祭。」が開かれた。実行委員には「BEAMS」クリエイティブディレクターの青野賢一や「アッシュ・ペー・フランス」クリエイティブディレクターの米山えつ子、「UTRECHT」代表の江口宏志、「VACANT」代表の永井祐介などが参加している。自然発生的に盛り上がって来たさまざまなジャンルをいっしょくたに集めたこのイベントには、まさに「祭り」という名前が合う。100人ものクリエイターが、渋谷のあの場所で——と考えると混雑も予想され思わずひるんでしまいそうだが、実際はこれまでのガーリームーブメントをダイジェストで見ることができる、すっきりした展示だった。それではこのお祭りの様子をほんの一部、お伝えしていきたいと思う。(敬称は省略)

まずは「BEAMS」がプロデュースする講座「School of B」と「シブカル祭。」によるコラボレーション企画のトークショーへ。この日は実行委員でもあるビームス創造研究所の南馬越一義がファシリテーターを務め、ゲストに、今年「拡張するファッション」を出版し、ファッションを始めとするさまざまなフィールドから信頼を集める林央子、翻訳家で「ガール・ジン」を出版し、自主制作出版物を扱うオンラインショップ「Lilmag」店主でもある野中モモ、「カラスボット☆ジェニー」や「生理マシーン、タカシの場合。」などの作品で知られる現代アーティスト、スプツニ子!を迎えトークを行った。

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左から野中モモ、林央子、スプツ二子!

トークは「90年代のガーリームーブメントとオルタナティブ」をテーマに、アンダーグラウンドの世界から普及してきたジン・カルチャーの話題を中心に展開。ジンと呼ばれる簡単な小冊子(日本で言うミニコミ・同人誌)は、80年代にマーク・ゴンザレスなどのアメリカ西海岸のスケーターたちが、お気に入りの絵や写真などをコピーして作った冊子を周りの人に配ったことが始まりとも、50年代にサンフランシスコで詩人達が自分たちの詩をまとめて自費出版したことが始まりとも言われている。そのジンが大流行したのは90年代前半のアメリカでのこと。インターネットがまだ一般に普及していなかった当時、マスメディアにアクセスできない人たちが何かを伝えようとするため、あるいはコミュニケーションするために作り、人の手を介して広まっていった。印象的だったのは90年代からジン・カルチャーを見つめ続けてきた野中モモが教えてくれた「ライオット・ガール」のエピソード。ライオット・ガールとは、90年代初頭、女の子だけのパンク・バンド周辺から巻き起こったフェミニズム・ムーブメント。当時、世間一般からは過激な運動という扱いを受けてしまったようだが、この女の子主導型のムーブメントが、今の日本の女の子たちに自然に受け入れられ、ソフトにマッチしているということは興味深い。スプツ二子!もロールモデルを探していた高校時代にライオット・ガールに出会い、『この人たちだったら私はなりたい!』と思ったそう。心に残ったのは、野中モモの「パンクという言葉はかならずしも音楽のスタイルを表すわけではない」という言葉。この言葉は、ガーリームーブメントにおけるDIY(ディー・アイ・ワイ = ドゥ・イット・ユアセルフ)精神や草の根運動の根底には反逆精神があるということを示唆している。また、2010年代の日本でジンが流行り出したことと、今、都市で、地方で、ふつふつと世の中を変えていこうという自発的な働きかけが始まっているということが同時期に起きているのは、偶然ではないように思う。

90年代にファッション・ジャーナリストとしてパリコレに通い続けていた林央子のトークは、パリで現代アートを背景に発刊されたインディペンデント・ファッション誌「Purple Prose」、「Purple Fashion」の成り立ちから、当時新しい雑誌の発信地としては最も保守的とみなされていたパリでも、既存のメディアの外でインディペンデントな表現が盛り上がってきたという話題へ。スーザン・チャンチオロが作る世界に1つしかないジンの話や、ベルンハルト・ウィルヘルムらがアントワープ王立芸術アカデミーの課題で自分を表現する本を作っていたという話など、林央子の書籍からこぼれ落ちたようなエピソードには一貫してクリエーションの発端が感じられ、きらめきが。林央子はまた、個人で「Here and There」を出版するインディペンデントなオーサーの一人でもある。
シブカル祭。では、この他にもトークショーやワークショップといった参加型の企画が用意されていた。クリエイターの生の声を聞くと、ただの展示は何倍も面白くなる。

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小林エリカ「My Love and Fallout」

トークショーの後は毛利悠子、美波など総勢23組のクリエイターを紹介する美術部のスペースへ。ビビッドなカラーと繊細なドローイングで目を惹いたのは、今年の6月にアンネの日記をテーマにした「親愛なるキティーたちへ」を出版し、ポリティカルな面からもアプローチをしている小林エリカの作品。ヤギ、コスモス、木立などを描いたドローイングは可愛いながらも寂寥とした空気を伝えてくる。紙の右下には数値と「μSv/h」(マイクロシーベルト/時間)の記載があり、小林エリカが福島や東京でスケッチを行った場所の放射線量が書かれている。線の一本一本に凍り付くような緊張感と柔らかな眼差しが同居していたのは、そのせいかもしれない。

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小林エリカ「Marie Curie, HALF-LIFE」

白い木枠に収められていたのは、キューリー夫人のポートレイト。放射線量の高い場所に赴き絵を描いたということが、研究によって被爆し続けた夫人への思いをはせることになったのだろうか。また、キューリー夫人にフェミニストの先駆的要素があったということが、トークショーで聞いた内容とリンクしていることにちょっと驚く。

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KATHY「Secret Garden」

黒い布で顔を覆い、表情を表すことを禁じられた少女たちが遊ぶ、KATHYの作品はちょっと恐くもあるけれど、小女性を押し殺されると同時に、増幅されてもいる。三人の少女はKATHYの使い手ではあるけれど、固有の誰かではない。どこか懐かしい写真を見ていると、他人のはずの少女たちが過去の記憶の中に存在していたかのような既視感を誘う。

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Chim↑Pom「ELLIE THE POP 0」

チン↑ポムの作品では、メンバーの中で紅一点であり、スーパーポジティブを体現するエリイをフィーチャー。今回のシブカル祭。のコマーシャルの中でエリイが言った『だってエリイからアート取ったら何にも無いもん。何にもないんだったら、やるしかないじゃん。』という言葉は、クリエイター女子の心を刺激する。(おそらく女子ならずとも。)アーティストのインタビューを含む60秒CMはオフィシャルサイトで見ることができる。

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onnacodomo「2books & ILoop」

映像部では、床にクッションが置かれた視聴ルームで河野未彩、kisimariなどの5作品を見ることができる。onnacodomoの作品はただひたすら本をめくる様子を映しただけなのに、テンポが良くて楽しめる。

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うつゆみこ「はこぶねのそと」

フロアーを移り写真部へ。思わず見入ってしまうのは、壁を埋め尽くすようにデコレートされていたうつゆみこの作品。可愛らしく見えるけれど、近くでみるとタコの足が顔になっている女の子や小さな粒々の集合体などに、ゾクっとさせられる。それでもどこか可愛らしく見えてしまう不思議な作品。このほか、アシザワシュウ、永瀬沙世、デザイン部のえぐちりか、大谷有紀などなど、今活躍しているクリエイターの作品を一気にみることができる。

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ホナガヨウコ「くせになるダンス」

展示のほか、でんぱ組.incやPredawn、宮本りえのDJなど、パフォーマンス部、音楽部の発表も充実していた。ホナガヨウコのパフォーマンスはステージ前のカフェでコーヒーなどと一緒にダンスをオーダーしたお客さんに向けてダンスを披露するというもの。ホナガヨウコは舞台で活躍するほか、このオーダー・ダンス・パフォーマンスを町中のカフェで行っており、今までに200人以上のお客さんに向けて踊ったそう。「カフェみたいな場所にダンスがあってもいい、ダンスを通して皆の人生に触れたい」と語るホナガヨウコのダンスは、親しみやすいながらも卓越した身体性を見せていた。

有本ゆみこやKATHYなど、美術部に所属していながらジャンルを横断しパフォーマンスなどを行うアーティストも少なくなかった。女の子の表現には、身体性が密接に結びついている。その表現は頭で考えたことだけではなく、心や身体に先導され生まれたものであったりする。彼女たちの真ん中にガーリー・スピリットがある限り、女の子たちの進軍は続いていくのだろう。その動向は少なからず世間の関心を集めている。私もまた、女の子が本能的につかんでいくものには絶大な信頼を寄せている故に、その行き先が気になってしかたがない。

シブカル祭。
会期:2011年10月28日〜11月7日
会場:渋谷パルコPART1・PART3、渋谷クラブクアトロほか
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
TEL:03-3464-5111(渋谷パルコ大代表)
主催:「シブカル祭。」実行委員会
実行委員:青野 賢一(ビームス 創造研究所)/伊藤 ガビン(ボストーク株式会社)/江口宏志(UTRECHT/NOW IDeA)/田口 まき(MIG代表)/中村俵太(ROCKET)/永井 祐介(VACANT/NO IDEA)/南馬 越一義(ビームス 創造研究所)/山田 遊(method Inc.)/ 米山 えつ子(H.P.FRANCE)
http://www.shibukaru.com

Text: Yu Miyakoshi

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