ヘンリック・ノールストローム

PEOPLEText: Victor Moreno

ノールストロームの料理の世界 

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ヘンリック・ノールストロームは、いま北欧の料理界において最も若いシェフの一人だ。ストックホルムのリラ・エッシンゲン島、その入り江に隣接する彼のレストラン「ラックス」。そこで彼のスタイル、独自のコンセプトは確立された。他分野の料理からの影響にオープンでいながらも、基本に据えるのはスウェーデンの味。彼にとって最も大切なことは、旬の食材を地元の生産者から手に入れることである。生の素材はより近いところから得たほうが良いからだ。バルト海の入り江の反対に位置し、東から西へ120キロにわたって広がる大きな湖、メーラレン湖のある地域。ノールストロームはほとんどの仕事をこの地域の中で行う。レストランは、スウェーデンの企業「エレクロトラックス」が三番目のビルとして1960年代に建てた建物の中に入っている。もとは1930年代から社が所有していた簡素な食堂を、社内工場で働く労働者の住居のために島全体の開発を行った際に改装したのだ。この「ラックス」プロジェクトを手掛けたのはスウェーデンの建築スタジオ「コンセプト」。少々工場らしさがあり、スタッフが皆、食堂の中央で働く。様々なチーズやコールドカット、ワインやその他の飲み物もその部屋の中にある冷蔵庫や棚から供される。これは給仕の際にとても便利であると同時に、親しみやすく心地よい雰囲気も生み出している。このレストランは細部に気を配るのが好きである。例えばメニューはイラスト付きで、夏のメニューは感性溢れるドローイングが彩っている。ストックホルムのスタジオ「ウー・エージェント」に所属するアーティストの手によるものだ。

2010年、ヘンリック・ノールストロームは初著書「Mitt Nära Kök」(私の身近なキッチン)を発表した。この著書は、契約農家や地元の生産者を自然の景色の中で撮影した素晴らしい写真も収録し、ノールストロームの料理の世界を深く掘り下げた、心打つ良質のドキュメンタリーである。

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なぜこの場所を選んだのですか?

実は単に我々がここをドライブしていたとき、空き部屋だったのです。エレクトロラックス社がこのエリアを開発する前の話で、工場の建物が残っているだけであとは空き地でした。都市部からは少し離れますが、アパート建設の計画があったので、街になるであろう場所です。私は完璧な場所だと思いました。事業をスタートさせた2003年当時、私が作ろうとしていたのは旬を感じされるスウェーデン料理の店でした。だから店のすぐ傍には都市ではなく自然を求めていました。訪れる人が日常との違いを感じる事ができるからです。だからここは私にとっては完璧で、この建物を見つけた時は「やった、この場所こそ我々のレストランにぴったりの場所だ」と思いました。

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この環境がどのように食事体験と結びつくとお考えですか?

この環境は最高です。夏は水辺のテラスに席を取れば、夏の自然を感じながら夏の料理を楽しむことができます。冬になれば池は凍り雪が降りますから、主室から冬の風景を眺めることができます。これら全てが、食事の体験をさらに豊かにするのです。

スウェーデンの料理学校業界についてどう思われますか?

私は料理学校で働いた経験がありますが、スウェーデンの料理学校は良い所だと思いません。私には考え方の古い学校でした。新しい料理に触れようとしないのです。

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旬の食材をもとに、どのようにしてメニューを選んでゆくのですか?

私は地元の農家や漁師と一緒に季節のメニューの作業をします。食材に近いところにいれば、より新鮮なものを手に入れることができるからです。私は目の前にあるこの大きな湖、メーラレンの傍で仕事をするように努めています。この地域には小規模の農家がたくさんあります。実際に顔を知っている小さな生産者なので、直接話すことができるのです。

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ご自身の仕事を言葉で表現すると?

地元産の新鮮な食材をスウェーデンの味で提供することです。

食材を輸入することもあるのですか?

特定の食材をフィンランド、ノルウェー、デンマークから輸入していますが、大部分はこの地域で生産されたものです。

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ラックスをスウェーデン料理の店と形容すべきですか?それともスカンジナビア料理と呼ばれる方がよいですか?

スカンジナビア料理と呼んでもらってもいいです。デンマークやノルウェーの料理とスウェーデン料理はとても似ていて、同じものもありますから。

スウェーデン料理の核は何だと思われますか?

例えばヨーテボリには素晴らしい港があったり、国内でも地域によっていくらか違いがあります。でもスウェーデン料理を特徴づけるのは海の作物と森の作物の二つです。我々は森の野草も使います。

他国の料理から受ける影響やインスピレーションはどのように調和させているのですか?

もちろん私はヨーロッパを何度も訪れ、フランスやスペインやイギリスからインスピレーションを受けました。しかし私はいつもスウェーデンの味を選びます。私のキッチンの中心は塩と甘み、酸味とスパイスです。私にとってはこれが典型的なスウェーデンの味なのです。

他国からの影響で、あなたが一番魅力を感じたのはどのようなものですか?

フランス料理の地元食材の扱いかたです。フランスでは、ワインは地元産のものしか飲まないことが普通なのです。

スペインは料理文化をとても大切にする国です。スペイン人シェフのホセ・マリア・アルザックやフェラン・アドリア、マルティン・ベラサテギにはどのようなご意見をお持ちですか?

スウェーデンでは評判がよくなってきていますね(笑)。私はフェラン・アドリアの店「エル・ブジ」にもマルティン・ベラサテギの店にも行きました。彼等は独特の料理法を持っています。もちろん楽しみましたよ。

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ワインの話が出ましたが、あなたは新しいワイン生産者にも積極的ですか?

はい。我々はオーガニックワインを取り入れようとしているのですが、残念ながらスウェーデンにはワイン生産者がいません。その代わりこの地域にはビールの生産者がいますので、ビールにも力を入れています。スウェーデン料理にはビールがとても合うのです。ニシンの塩漬けとシュナップスのように、この国のビール類には長い伝統があります。だからビールの味はスウェーデン人に好まれるのです。でももちろん店にはワインの方が充実しています。ワインは食事によって、季節によって変わるのです。夏は、春よりもう少し力強さのあるワインを求め、秋にはワインも料理も風味のあるものが欲しくなります。そうして季節に従ってゆくのですが、私たちは大きなワインセラーを持っていませんから、季節ごとに料理に合うものを買っています。

個人的な部分についての質問になりますが、休みの時間は何をしますか?ゲストを招いて料理を作るのは好きですか?嫌いですか?

休みの日はよく料理をします。レストランでは私はどちらかというと指揮をとるのが仕事で、最後の仕上げをすることはあっても料理を作ることはあまりありません。料理をしたり食事を準備したりする機会があると多いに楽しみます。レストランとは異なり、友人や家族と一緒にです。

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最近印象に残ったレストランはありますか?

ロンドンで行った中国料理店「ヤウアチャ」です。ここはミシュラン1つ星の店なのですが、雰囲気も料理もとても良かったです。甘みと酸味を使うという部分がスウェーデン料理と似ています。だから同じ料理ではなくても味を理解できるのです。

これまでで最も達成感を感じた出来事は何ですか?

去年の夏、食堂を改装しました。キッチンの一部を食堂に置いて、そこでゲストのために料理の仕上げをしたいという考えでした。ゲストと会話をすることも可能になりました。厨房に立つかわりに、食堂に出て行くことにしたのです。その後、我々はスウェーデンで最も有力な新聞で非常に良いレビューを二つ受けました。ランキングで6点満点中6点と、5点満点中5点です。そしてさらに二つの賞をもらいました。そのうちの一つは地元紙「ダーゲンス・ニュヘテル」の高級レストラン部門ゴールデン・ドラゴン賞です。

Lux Stockholm
住所:Primusgatan 116, 11267 Stockholm
営業時間:11:30〜14:00, 17:00〜23:00(日・月曜日定休)
TEL:+46 (0)8 619 0190
http://www.luxstockholm.com

Text: Victor Moreno
Translation: Shiori Saito

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