水野健一郎

PEOPLEText: Shinobu Ono

自身の原風景であるテレビアニメの世界観を脳内で再構築した平面作品やアニメーションで、東京を拠点にアーティストとして幅広く活躍する水野健一郎。彼の作品集「KATHY’s “New Dimension”」の発行を記念して、原画展「KATHY」が原宿のTOKYO CULTUART by BEAMSで開催された。KATHYから与えられた“指令”を、水野の慣れ親しんだアニメ調のタッチで表現したという作品集の原画が中心に展示されている。

水野健一郎 Kenichiro Mizuno
Photo: Momoko Katsuoka

KATHY展について教えて下さい。

KATHYという強大な力につき動かされ、次々と指令を受けて任務を遂行している3人組の女性がいます。彼女たちは「KATHY」と名のり、神出鬼没なパフォーマンスを繰り広げています。そして今回、僕もKATHYからの指令の電波をキャッチし、本を作ることになったの です。その原画を中心とした展覧会がKATHY展です。もともとダンサーだった彼女たちとは違い、KATHYから受けた電波はある設定をともなった絵としてアウトプットされました。実は2005年にも一度KATHYからの指令を受けてまして、今回のキャラクターはその時生まれたものです。当時まだ3人の素顔は知らなかったのですが、電波のせいか見えているかのようにすらすら描けたのを覚えています。今回は本を作るためにその時の設定をさらに深くたぐり寄せました。KATHYとその指令を受ける3人の女の子との関係性を、僕というフィルターを通して断片的ながら絵にしていったのです。僕が見えた世界は極めてアニメチックでした。KATHYという大いなる意思からの波動を受けた人類は、次々人間ではない何かに変形(液状化)してしまいます。

水野健一郎

確かに、この原画点では人間が様々に変形して、本来の姿を失って描かれています。

KATHYの波動を受けた人間は、普通は外見も精神も人間でいられなくなってしまうのですが、その中で人間の精神を保ったままでいられた、選ばれた3人の女の子たちが、今回描いている「KATHY」です。人の心を失わなかった為、人の姿と変形した姿の間を自由に行き来することができます。そして、この選ばれた3人が偉大なるKATHYの指令を受けて動いていくことになります。大いなる意思KATHYは、彼女らを選ぶべく電波を投げかけるのですが、それ以外の人も影響を受けてしまうのです。

YPB01.jpg
© Kenichiro Mmizuno

水野さんの絵を見ていると、日本のアニメーション表現を強く想起しますが、それは子どもの頃に見てきたイメージが元でしょうか?

そうだと思います。人を線で描いたり、背景画がペインティングタッチであるとか。昔のアニメって、背景でも動く部分だけセル画でちょっと質が違っていて、「あ、あの岩落ちてくるな」ってわかったり。そういうのは、今でも意識してやったりしています。

yellow.jpg
© Kenichiro Mmizuno

アニメの他に、ご自身のバックグラウンドになっている、と感じるものはありますか?

ニューペインティングです。何をやってもいいんだ、という自由で開放的な気持ちを与えてくれました。ペインティングでは無い線画表現などにも変化が現れたと思います。それからポップアートでしょうか。模倣する意識は無いけれど、方法を踏まえた上で自分はどのようなやり方をするのか、ということを考えます。

けれど、すごく影響を受けた人がいたとしても、同じことをやっては駄目だという強い意識が昔から強くあって、真似ることで吸収できる部分から得たものはあまり無く、そういった意味での訓練というのもありません。本当に昔から、それこそ物心ついたときから自分の中にあるものが土台になっていると感じます。

水野健一郎

ずっと 、ご自身の中にあるものを出力し続けているという意識が強いのですね。

そうですね。自分でも、自分の中にあるものをかたちにしてみないとわからないという所もあるから、見てみたい。それから、展覧会ごとにテーマなども違うので、全体を通して見てもらいたいとも感じています。今はブログで並べて見せることで、総合された一つの全体像として見えるようになっていると思います。

BG41%2Byellow-only.jpg
© Kenichiro Mmizuno

水野さんの絵やアニメーションは、物語の断片のように見えますが?

そうですね。大きい何かの一部分を引き出している感じです。「KATHY」展に限らず僕の絵は全部そうだと思います。

BG44%2Bpinkonly.jpg
© Kenichiro Mmizuno

水野さんの絵には、懐かしさのようなものを感じます。

子供の頃夢中になったアニメが刷り込まれているからだと思います。でも懐古趣味的な意識は無くて、自分にとって今の自然なスタイル、自然な絵を描いています。

制作全体をつらぬく大きな意思や方向性のようなものはありますか?

「自分の見たい世界」だと思います。

SHIFTのカバーデザインについて教えてください?

フジテレビのベビスマという番組のブリッジ(タイトルロゴを使った10秒のアニメーション)として制作しましたが、過激すぎて放送できないという理由でボツになったものです。震災の影響が大きかったようです。今回カバーアート用にブリッジからロゴを消し、プライベート作品としました。(タイトル:Foul Newman 制作年:2011年)
「人間の姿に扮し、その心地よさと大地に立つ解放感に浮かれて小躍りする地球外知的生命体。光の衝撃で頭部が分解してしまうが、即元通り。しかし融合は不完全であり人相も変わってしまっている。いったん違和感を排出し、再度体内に取り込むことにより不具合を修復。そして完全に再生。」
これはいかなる環境にも適応し、したたかに生き続ける地球外生命体の物語です。

今後、やってみたいことなどありましたら教えて下さい。

アニメーション制作です。断片的なものは今もありますが、短くても良いから物語があるもの。その中で、眠っているときに見る夢の世界を表現したいですね。あれって言葉にしてしまうと、とたんにつまらないものになってしまうけど、映像の力であの感覚を忠実に再現できれば面白さを伝えられるのではないかと。物語は160個ほどストックしてあるので、一生かけて片っ端からアニメ化していきます。

水野健一郎「KATHY」展
会期:2011年6月3日~29日
営業時間:11:00~20:00
会場:TOKYO CULTUART by BEAMS
住所:東京都渋谷区神宮前3-24-7 3F
TEL:03-3470-3251

Text: Shinobu Ono

【ボランティアスタッフ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE