伊東篤宏

PEOPLEText: Julie Morikawa

90年代から蛍光灯を使ったインスタレーション作品を手がけ、その制作過程の中で蛍光灯の放電ノイズを出力する音具「OPTRON」(オプトロン)を生み出した、美術家、OPTRONプレーヤーの伊東篤宏。ソロとしてだけでなく、音楽家とも多数共演を行うなど、国内外でパフォーマンスを展開している伊東氏が、4月2日より北海道立近代美術館で開催される札幌ビエンナーレ(2014年開催予定)のプレ企画「アートから出て、アートに出よ。美術館が消える9日間」に参加するという。伊東氏の活動についてお話を伺った。

伊東篤宏
Photo: Ryu Itsuki

これまでの活動内容を含め、自己紹介お願いします。

伊東篤宏。90年代より蛍光灯を素材としたインスタレーションを制作。98年に蛍光灯の放電ノイズを拾って出力する「音具」、OPTRON を制作、命名。展覧会会場などでライブを開始する。2000年以降、国内外の展覧会(個展、グループ展等)、音楽フェスティバルなどからの招集を受け、世界各国で展示とライブ・パフォーマンスを行っている。美術作品制作・発表やソロ・パフォーマンス活動以外に、爆音オプチカル・ノイズコア バンド「Optrum」や、フリージャズトリオ「今井和雄 TRIO」、テクノイズ・ユニット「ULTRA FUNCTOR」などでも活動中。

なぜアーティストになろうと思ったのですか?その経緯を教えて下さい。

言葉の問題になりますが、私は今に至るまで「アーティスト」になりたい、と思った事はないです。(私にとって、そもそもこの国における「アーティスト」って何を指しているのかがよく解りません。単にそう言ったモン勝ちみたいな状態だし。非常に便利な言葉ではありますが。)

私の場合、もう少し世の中の役に立ちそうな事よりも、自分の手を動かして勝手に何か造る事や、音を出したり聴いたりする事が好きで、それを懲りずに続けていたから、どうやらこの人は「アーティスト」らしい、という認識が周りに生まれてそう呼ばれたのだと思います。そしてその本人は、自身の制作物やパフォーマンスに「意味」や「社会貢献度」を殆ど付加する事なく、ただ視覚や聴覚の楽しみや刺激が相変わらず面白いので続けているだけです。ちなみに私の自身の肩書きは「美術家、OPTRONプレーヤー」です。


OPTVISION Promotion movie

伊東さんは、OPTRONプレーヤーとしても活躍されていますが、その内容について教えて頂けますか?

「OPTRON」は、蛍光灯の音と光の両方を同時に出力する音具で、元々はインスタレーションの延長として1998年頃制作しました。(つまり元々楽器を制作したのではありません。)原理は非常に単純なもので、どこにでもある蛍光灯(家電製品)のオン・オフに伴う放電ノイズを拾って出力しているだけですが、主にギター用の足踏みエフェクターを使って様々な音を出す事がある程度可能です。通電(つまり蛍光灯が点灯した状態)した状態から電圧変調を、人為的に行う事ができるので激しい明滅(それに伴うノイズ音も)が作れます。

2000年代になってから楽器化が進み、形も置き型のものや、ギターの様に手持ちで主にライヴ専用のものなど、数種類のOPTRONが生まれました。基本的には、どのタイプのOPTRONも、目と耳に全く優しくない代物である事は間違いありません。演奏用のOPTRONで世界のあちこちで、様々なジャンルの音楽家などとも演奏・共演しています。

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