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小野寺 唯 & CELER

PEOPLEText: Mariko Takei

国内外でサウンドデザインを手掛ける小野寺 唯とカリフォルニアを拠点にアンビエント/エクスペリメンタル・ミュージックの作品を多数手掛けるCelerが2年の年月をかけて制作したコラボレーションアルバム「ジェネリックシティ」が10月にリリースされた。それぞれの都市でフィールドレコーディングした音が織りなす “都市風景” を展開した今回初のコラボレーションで、日本初来日を果たすことになったCelerと小野寺唯の、それぞれの活動の内容やコラボレーションについて語って頂いた。

Yui Onodera & Celer

まずそれぞれ自己紹介をお願い致します。

小野寺唯 (以下Y):1982年生まれ。東京在住。環境/空間から捉えた音の機能と関係性を主軸に据えたコンセプトのもと、フィールドレコーディングや電子音、器楽音による電子音楽作品を制作しています。

Celer (以下C):Celerのウィル・ロングです。トゥー・エイコンズといいうレーベルの運営も行ってます。

音楽に携わるようになったきっかけは何ですか?

Y:高校生の頃から完全なロック少年で、もともとは音楽専門学校にてギターを学んでいたのですが、すぐに自身の作品としてその全てを掌握したいと考えるようになり、独学でコンピューターを用いた作曲を始めました。ちょうどラップトップミュージックと呼ばれる個人で制作される電子音楽が注目され始めた時期と重なっていたので、そのような時代背景にも大きく影響を受けているのかもしれません。

C:ミュージシャンになるための教育を受けたことはないですが、新しい表現の形として音楽に興味をもつようになりました。(Celerのもう一人のメンバーの)ダニエルと知り合った頃は、お互いにそれぞれ別の場所に住んでいたのですが、時々コミュニケーションをとるための唯一の方法が手紙だったんです。2005年にダニエルと2人で音楽を手掛けるようになり、それがお互いにとっての新しいコミュニケーションの方法になっていきました。音楽は2人にとってラブレターなんです。

これまでにどのような音楽活動をされていますか?または、どんな音楽を制作されていますか?それぞれの活動内容をご紹介下さい。

Y:エクスペリメンタル、アンビエント、エレクトロニカなどと呼ばれているシーンで、これまでに7枚のアルバムとEP、3インチをリリースしています。その他、国内外のレーベルコンピレーションや、アーティストとのコラボレーションにも数多く参加し、それと並行してイベントの企画・運営や舞台芸術のための作曲やWEBのサウンドデザインなども手掛けています。最近は家具デザインにも取り組んでいて、今年はデスクを制作しました。

C:Celerの音楽は全部、アナログとアコースティック楽器を使って制作します。そして、それをコンピュータで処理したり、昔のテープの機材を使って、音をループさせたテープをつくったりします。Celerという名前はもともとフランス語で ‘隠す’ という意味があり、それは本質的にこの作業の過程で僕たちが音でやっていることでもあるのです。その結果は、もともとの音からだいぶ ‘隠された’ ものになっているのです。自分たちのつくる音楽については、いつもアンビエント音楽として分類していますが、それは、ただの背景音楽というよりはもっとコンセプチュアルなアイディアを持ったものとしてですね。

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Yui Onodera & Celer “Generic City”

コラボレーションアルバム「ジェネリックシティ」が最近リリースされましたね。簡単に作品をご紹介下さい。また、3年前から取り組んでいた制作だったようですが、コラボレーションをするようになった経緯を教えて下さい。

Y:Celerの作品を聴いて、直感的に一緒に制作してみたいと思ったので、僕のほうから直接彼らにコンタクトを取りました。彼らも僕の作品を聴いてくれていたようで、お互いに共通する美意識みたいなものを感じていたので、2~3回のメールのやり取りを経て、すぐにコラボレーションは開始されました。コラボレーションの始まりは大体いつもこんな感じで、作品を聴いて直感的に何かビビッときて僕のほうから声を掛けることが多いです。恋人に出会うのと同じで打算的に接触するよりも直感のほうが遙かに良い結果が生まれます。

C:お互いの音楽を評価していたことからコラボレーションが決まったんだと思います。ダニエルと僕でCelerをはじめたときに、自分たちが気に入っていた音楽を手掛けるアーティストの一人が小野寺唯でした。なので、彼とコンタクトをとるようになるのは自然なことでしたし、その頃から一緒にアルバムをつくろうと皆で話し合うようになりました。はじめは、どんなコラボレーションにするか明確なアイディアはなかったのですが、アルバム用に新しい音を収集して、素材を交換するようになってから、僕たち2つの異なる文化や周りのものをブレンドした ‘都市風景’ を再構築するというアイディアを思いつきました。Celerにとって、このアルバム制作がこれまでで一番長い時間を費やした作品となりました。驚く程細部までこだわり、ミックスするのに長時間をかけ、音に手を加え、最終的にはすごくいいものに仕上がりました。このアルバムに皆とても満足してますし、自分たちの意図しているものがよく出ていると思います。

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