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マシュー・バーニー「クレマスター・サイクル」展

HAPPENINGText: Rei Inamoto

ニューヨークに住んでいる者として、ひとつ認めなければいけないことがある。それは、この街にいるからといって、そうめったに美術館などに脚を運ばないということだ。例えば、グッゲッンハイム美術館、メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、クーパーヒューイット国立デザイン美術館、ホイットニー美術館などなど、ニューヨークにあるアートやデザインに関する美術館の名を挙げればキリがない。最後に僕が美術館に行ったのは、何ヶ月も前のこと。しかも、遠くから友人が遊びに来たので行ったまでのことだ。

グッゲッンハイム美術館(天才建築家フランク・ロイド・ライトが設計した美術館。後期ライトの代表作で、エレベーターで最上階に上がり、斜路を降りながら作品を鑑賞する)に関しては、最後に行ったのはもう3年以上も前のことになってしまう。「ワールド・オブ・ナム・ジュン・パイク」という展覧会を見に行ったのだが、僕が思い出せる中でも、その展覧会は最も素晴らしい展覧会のうちのひとつ。同美術館では現在、マシュー・バーニーによる「クレマスター・サイクル」展が開催されているが、この展覧会もなかなか見応えのある内容になっている。

僕がマシュー・バーニーの作品に出会ったのは、これももう何年も前のこと。彼の映画「クレマスター2」を見たのだ。彼のことは以前から聞いたことがあり、なぜか彼が国際的な展覧会に登場する度に、彼の作品を思い出すことがあったのだ。ある晩僕は、友人に映画に誘われた。その時に彼が『あぁ、バーニーなら、こういったアート色の濃い作品を作るのに、何百万ドルっていうお金をもらっているアーティストだよ』と教えてくれたのだ。映画を見終わった後、それまでいかに僕はどんなものを作るべきか、まったく無知だったかを思い知らされた感じだった。物語はとても抽象的で、ややゆっくりめな進行にもかかわらず分かりずらい。そして、想像性においては、鮮明で超現実的、そして抜群に美しいのだ。

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