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「村上隆:ベルサイユ」展

HAPPENINGText: Kana Sunayama

インタビューでは村上隆自身が、この展覧会のテーマを「歴史の衝突」または「異文化の衝突」と設定しているが、実際はどちらかというとベルサイユと村上作品の「調和」をより狙ったように思われる。アメリカ人アーティスト、ジェフ・クーンズによって、二年前にここベルサイユ宮殿での現代美術展サイクルは始まったこともあり、今回の村上隆展はジェフ・クーンズ展と常に比較される。

クーンズによるアメリカ大衆文化からインスパイアを受けたポストポップと呼ばれる作品のように、コンテンポラリーではあるがヨーロッパ文化にはないものをベルサイユ宮殿という懐古主義の象徴とも言える箱の中に展示するという点と、なによりもクーンズも村上も世界でビジネス的に最も「成功」しているアーティストであるという点、また彼らがベルサイユ宮殿のディレクター、ジャン・ジャック・アイヤゴンと強いコネクションを持つフランソワ・ピノーに代表されるようなメガコレクターたちのお気に入りアーティストであるという点。それらに加え、いざ今回の村上展がオープンされてからの批判としては、クーンズ展のときと全く同じような展示方法であることが挙げられる。開催前の宣伝としての報道とは逆に、開催後はフランスのメディアには村上展がかなりあからさまに批判されているのが実情だ。クーンズがアメリカンスマイルをたたえながらも、作品でベルサイユに闘いを挑んだ挑戦の展覧会であるのに対して、村上は日本人的調和を探求したがその芸術的評価は低いものとなってしまった。

開催前からテレビ、ラジオ、新聞、雑誌など様々なメディアで紹介され、大規模な宣伝が打たれたこの展覧会。ジェフ・クーンズ展と同じく、フランスの極右団体やベルサイユ友の会などによる反対運動も行われ、オープンから2週間ほど経った10月1日の時点では5690人もの反対署名が集められた。しかし一方で今回の展覧会の反響により、今年の入館者数は去年と比べて15〜20%の増加ということだ。

村上隆

ベルサイユ宮殿ディレクターのジャン・ジャック・アイヤゴンは結局、まだまだ7年間は継続の予定されている宮殿での現代美術展を、来年からは宮殿内の鏡の間やヘラクレスの間、王の寝室、王妃の寝室などが続くアパルトモン部分での現代美術の展示をストップし、宮殿敷地内の庭園などでの展示のみでの続行を表明した。『反対運動の騒ぎを沈静化するためではない。』と言及しながらも、2012年に予定されているイタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテランの展示では反対運動が確実に行われるであろうことを見越しての決定と言えるだろう。

また反対運動だけではなく、各メディアやインターネットまた日常の会話の中でも、本展は議論を巻き起こし、この展覧会を発端として、『「美」とは何か。』『ではその逆の「醜」というのは何をもって定義するのか。』という議論にまで発展している。「ベルサイユ=美」なのだろうか。たとえ反対運動があろうとも、また批判が強かったとしても、展覧会だけには留まらない芸術議論を再発させたこの展覧会。一見の価値有りと言える。

Murakami Versailles – 村上隆:ベルサイユ
会期:2010年9月14日〜12月12日
会場:ベルサイユ宮殿
住所:De’partement of Yvelines, Ile-de-France, France
https://www.chateauversailles.fr

Text: Kana Sunayama
Photos: Kana Sunayama

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