サジ
PEOPLEText: Mariko Takei
「今食べている物が10年後の体をつくる」
「今食べている物が10年後の体をつくる」をキーワードに、写真、マガジン、イベントなど、様々な視点で食にアプローチを試みるプロジェクト「saji」(サジ)。2004年の活動スタート以来、日本はもとよりパリやニューヨークなど海外でも、その柔軟な思考を展開し、視覚的にも味覚としても美味しい体験を提供している。シフトの今月号カバーを飾るsajiの活動について紹介しよう。
まず自己紹介をお願いします。
sajiをやっているMIHOです。普段は、雑誌や本のフォトグラファーをしています。
「saji」という活動について教えて下さい。
「saji」=スプーンです。sajiのコンセプトでもある「今食べている物が10年後の体をつくる」をテーマに、きちんとご飯を作って、食べてもらいたい。そして、そこから食べる事を楽しんだり、感じてもらいたいという思いを込めて活動しています。
最初はフリーペーパーとして約6年前からスタートし、今はアートレシピ本「saji」として販売しています。ファッション、イラストが入ったレシピの本を毎回違うフォーマットで制作。本から飛び出して、イベント、お料理教室などもしています。
Black hamburger / 炭のパン、豆腐、ハンバーグ / saji1.0掲載 / 料理:コウケンテツ
sajiを始めることになった経緯を教えていただけますか?
もともとは、食べ物にあまり興味もなく、好きなものしか食べてきてなかったのですが、カメラアシスタント時代に出会ったフードコーディネーターの方が料理をするのを見て、とてもシンプルな上に美味しくて、体に良いことを知り、感動し、料理を始めるようになりました。でも、その時には既に遅かったらしく、体を壊してしまいました。実は、sajiのウェブサイトの「what’s saji?」で展開しているストーリーは、私の実話をもとに構成したものなのです。
体を壊した時に、病院の先生に『今まで食べてきたものが今の体を作っているのよ。体は1日では作られない』と言われたことから、食べることはとても大切な事だと思うようになりました。そこから自分自身の食生活を考え、今食べてるものが10年後の体をつくるんだ、ということを意識するようになりました。
そんな背景のもと、天然生活やソトコト、オレンジページのように、お料理する人へ向けての雑誌はあるのに、お料理について知識がない人向けの雑誌がないということに気付き、食べ物に興味がないような人たちにとって、料理を始めるきっかけになるようなものをつくりたいと思いsajiをスタートするようになりました。あと、もともと私自身がイラストや雑誌(紙媒体)が大好きだったというのも、sajiのようなアートレシピ本をつくるようになったきっかけとなっていて、こういった料理を身近に感じられる本が高校生くらいの頃からあったらいいなと思ったことも始めた理由のひとつです。
もし、sajiのポスター作品となっているパスタなどの料理を彼女が彼氏に(もちろん、その逆でも)作ってくれたら、本当に嬉しいです。
sajiのプロジェクトをいくつか紹介して下さい。
saji magazine
saji magazine vol.2(写真)の出版パーティは2009年3月にパリで開催。クリームをたらした抹茶の巨大ケーキとスプーンの上に一口ドーナツをsajiの作品とともに展示。vol.3は、2010年1月にパリでリリースパーティの後、名古屋(4月)と大阪(7月)でも開催しました。
おにぎりイベント
2009年にパリでsaji2.1の発売を記念して、おにぎりイベントを開催。おにぎりの存在がパリではほとんど知られていなく、甘いものか塩の物かを聞かれたり、海苔についても『この黒いものは何?』と聞かれたりとても新鮮でした。他にも、食のイベントは、日本ではヴァカントで、暗闇で感覚を研ぎすませながら黒いご飯を食べるイベント「真っ暗ごはん」(2009)や、「日本の食卓」(2010)を開催。
EXPLOSIVE WOMAN
saji 3.0に掲載。スーパーガール。彼女の持っているのはケーキの爆弾。これを投げると、世界が幸せになる。
ケーキは、ベリーのムースとマロンのシマシマケーキ。堀米素子さん作です。イラストは、Yué wu aka NYNOさん、スタイリストは峰岸彩織さん、ヘア&メイクは森ユキオさんが担当。モデルは比留川游さん(AMA)。モデル着用の服は「orphan age」によるもの。
otherworldly feasts
saji2.0に掲載。グルム童話のパロディー。長い箸で天国の子は「あーん」って口の中に入れてもらえるけど、地獄の人は、箸が長くて食べれない。
フードはコウケンテツさん作。スタイリストは峰岸彩織さん、ヘア&メイクは北一騎さんが手掛けました。モデルはPilleさん(surge)。
Are you clone?
saji Free paperに掲載。クローンの食品を食べたいですか?
レモンバームのケーキは檀野真理子さん作。スタイリストは峰岸彩織さん、ヘア&メイクは北一騎さんが担当。モデルは、エレーナ・マクシモワさん(satoru japan)。
saji 3.0 exhibition in Paris
sajiのイベントやマガジンは日本だけでなく、パリでも展開されているそうですね。日本以外になぜパリでも展開されているのですか?
フランス以外も、ニューヨーク、ベルリン、アムステルダム、ロンドンなどでも展開してます。日本でやっていてなかなか難しかったので、少し気分を変えて、フランスに行ってみようかなぁと思い行きました。
フランスの方がイベントや本の評判も良く、みなさん受け入れてくれていたので、よくフランスに行っていました。
パリで開催するイベントの内容は、日本のものとは異なりますか?また反響はいかがですか?
内容はなんとなく似てるところもありますが、毎回フードも違うので全く同じイベントは今までやった事はないです。
反響はいいです。イベントはみんな楽しんでくれています。今、フランスも冷凍食品が増えて来ているので、sajiのコンセプトにみんな賛同してくれています。海外の方は、良い物を分かち合う方が多いので、sajiもみんなが宣伝してくれるので、助かってます。
ロビン料理 /きんめ鯛の煮つけ、あさりのすまし汁、小松菜のごま和え、おむすび /saji3.0掲載 / 料理:コウケンテツ
sajiが好きな料理は何ですか?
大切な人と食べる料理。(ジャンクフード、冷凍食品以外。)
今回のカバー作品について教えて下さい。
「豊かさとは何か?」がテーマです。
人は何気なくご飯を食べていると思うけど、ここで使われている器や箸は手作りで、それにお米の香り、美味しいと感じる事が、全部一つになった時に、人はどういう風に感じられるのか?が伝わればいいなと思ってつくった作品です。
スタイリストは峰岸彩織さん、ヘア&メイクは梅沢優子さんが担当。モデルは一井沙織さん(Gunn’s)。
今後のどのような活動を行っていきたいですか?
去年からお料理教室ができてないので、お教室したいです。あとは、ベルリンで何かしてみたい。sajiのコンセプトに賛同して下さるアーティストの方々と、これからも素敵な食を提案していきたいです。
11月にヴァカントでイベントする予定です。また、saji magazineの発売も予定しています。
Text: Mariko Takei