ジョン・ウー

PEOPLEText: Emma Chi

昨今の観客は、昔の観客と比べて違いはありますか?

最近の観客は、昔よりも、映画に求めるものが多くなりましたし、知的な観客が多くなりました。観客の多くは、映画から何かを得ることを期待していて、映画を観た後も、映画を反芻します。10年後に映画を再び観るときでさえ、そこに価値を見出そうとするのです。観客は、映画から、人生に関わる意味のようなものを見つけようとします。心の琴線に触れるような映画を欲しているのです。私は、監督として、そのような映画を撮影することに、意義を感じています。

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「ウインドトーカーズ」撮影風景(2001)

フォン・シャオガン監督は、かつてこのように言っています。『中国人監督は自分の生まれた国を拠点とするべきだ』と。これに対し、ハリウッドを拠点としている数少ない中国人監督として、どう思われますか?

フォン・シャオガン監督が言ったように、中国に身を置くべきだという考えに、賛成する気持ちもあります。どんな監督も自分流の撮影法があり、国内のニーズのほうが適している監督もいるからです。しかしその一方で、国際的な映画の制作でこそ力を発揮できる監督もいると思っています。どうしたらハリウッドに手が届くのかと、若手の監督によく聞かれますが、私がいつも彼らに言う言葉は、ハリウッドに執着せずに、まず母国で素晴らしい映画をつくりなさい、ということです。ヒット作を作れば、他の国であろうとも、名を知られることになり、ハリウッドへの招待状を手にする可能性もあるからです。経歴なしに外国への扉を叩こうとしても、誰も目に留めてくれません。

ハリウッドについて教えてください。

中国には、より沢山の要素があると感じています。テーマも尽きることがありません。文化遺産が豊富にあり、歴史もの、伝説から、現代もののストーリーまであります。多民族国家のため、それぞれの民族が独自の物語を持っており、それを映画にすることが可能です。スポンサーとプロデューサー、映画会社は、長期の計画を立てるといいですね。ハリウッドの良い例として、「アバター」があります。製作に10年をかけましたが、その間、映画会社は監督をサポートし続け、1000万ドルの援助をしました。結果として、監督は最新の3D技術を駆使して先鋭的なストーリーを作り上げ、世界中の観客の心を捉えたのです。
では、これと同じことが中国でもできるかと言えば、難しいでしょう。例え、新人の監督が構想を抱き、2〜3年かけて最新技術を用いて製作したいと思っても、サポートしてくれる投資家は見つかりません。今日、私たちが目にするタイプの映画は、あと数年後には飽和状態となります。観客は、新しい先鋭的なタイプの映画を欲するようになるでしょう。

それは、皆が直面している問題なのですか?

今のところは、良質なシナリオライターも、脚本も少ない。香港映画の事情を考えてみても、ずいぶん長い間、良いストーリーをつくることを重視していなかったのです。また、自由な発想もありませんでした。商業映画は特に脚本を深く練っていません。
ハリウッドに関しては、こちらもまたお決まりのパターンにはまってしまっています。例えば中国の物語「花木蘭」で「ムーラン」という映画を製作し、今後は、孫悟空や封神演義、水滸伝などのストーリーが映画になるかもしれません。皆が同じものに執着している今だからこそ、自分で脚本を書き、クリエイティブな制作をしている若手の監督を応援すべきだと思っています。

Text: Emma Chi
Translation: Chihiro Miyazaki

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