札幌アートウオーク

THINGSText: Asami Miyamura

札幌アートウオーク」は、札幌の歴史とアートの関係性に重点をおいたアートガイド本だ。本書は札幌市内に点在する建築や彫刻などのアートをただ紹介するだけではなく、札幌の歴史や水系、風土とアートの関係性を交えて、エリアごとに解説してくれる。札幌に縁のあるアーティスト、イサム・ノグチ、岡部昌生、本郷新、田上義也などの足跡、作品背景も紹介する、内容の濃いアートガイド本となっている。

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モエレ沼公園 写真:露口啓二

始めは「イサム・ノグチ最後のメッセージ」の章で、イサム・ノグチとモエレ沼について語られる。本書についている立体年表で見ると、モエレ沼については本書の中で一番古くから歴史があり、歴史に登場する最初の札幌から話は始まる。アイヌと和人の始まり、開拓に伴う札幌の河川、交易の変化に伴い、豊かな土地であったモエレ沼周辺には美田が広がった。その後モエレ沼は観光地へと移り変わり、ゴミを埋め立てた公園にする計画が立つ。そしてイサム・ノグチの来札によりモエレ沼公園の計画が本格始動し、公園のコンセプトに至る背景、1933年から構想されていたモエレ沼公園のシンボルの一つであるプレイマウンテンなどについて丁寧に解説されている。

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札幌ドーム 写真:露口啓二

「大地と都市の記憶の触感」では、札幌・羊ヶ丘の土地と札幌ドーム・アートグローブの岡部昌生の作品を中心に紹介。開墾による森の伐採、野焼きの本格化、羊ヶ丘の名の由来ともなった牧場、試験場としての歩み、軍都月寒としての時代について語られている。フロッタージュ作品の制作で知られる岡部昌生は、その歴史の中で生き残った樹木の樹皮をフロッタージュした銅版作品「風に触れる」を制作した。この作品の他、札幌ドーム内に点在するアートグローブの作品群から、羊ヶ丘の土地の記憶を辿ることができる。章最後では、一般市民と共に、札幌の水系を辿るアートプロジェクトを行った岡部氏の市民と共にした発見について触れている。

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札幌駅南口広場の牧歌 写真:露口啓二

札幌の彫刻を支えてきた本郷新については、「札幌の都市軸に据えられた彫刻の力」で札幌駅、大通り駅周辺のアートと共に語られる。都市の成長と、都市が求めるアートについて語る上で、大通り公園の「泉の像」などを手がけた本郷新の存在は欠かせない。数多くの彫刻をつくり、本郷新記念札幌彫刻美術館まで遺した本郷新の育った時代と環境、彫刻の概念は、札幌のアートと密接しているだろう。現在の札幌駅、JRタワーのアートについても解説されている。

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北海道大学旧理学部 写真:露口啓二

ここまではエリアごとの歴史とアートを語ってきたが、最後の章「植民都市、大正から昭和へ」では、時間の流れを追いながら北方建築と、北海道を代表する建築家の田上義也を語ってゆく。建築を道しるべに、札幌という街が自意識を持ち始めた頃から探り始め、旧小熊邸や北一条教会などの北方建築を創り上げた田上義也の人生を追うことで、札幌のまちと建築の成長を知ることができる。ここでは、タコ部屋労働などの犠牲を慰霊し、語り継ぐ「藻岩犠牲者の碑」で歴史の影の部分にも触れている。

今回紹介した内容はごく一部だ。札幌コンサートホール Kitaraの誕生、砂澤ビッキ芸術の森北海道立近代美術館、三岸好太郎美術館の在り方と取り組み、パブリックアートと國松明日香など、本書では札幌の歴史とアートがまだまだ語られている。文章も注訳を添えてあり、立体年表やアートマップと併せて見れば、札幌のアートに詳しくなくても読みやすい。本書に紹介されているアートをすでに知っている人でも、本書を読めばまた景色が違って見えてくるだろう。札幌のアートが気になっている人、札幌でアートに携わっている人、札幌という街を知りたい人、どの人にもお薦めしたい、充実した一冊だ。

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札幌アートウオーク
著者:谷口雅春
写真:露口啓二
発売:2009年12月19日
仕様:B5変型判/176ページ
価格:2,625円(税込)
ISBN:978-4-89453-531-2
発行:北海道新聞社
http://www.hokkaido-np.co.jp
http://www.aurora-net.or.jp/doshin/book/shinkan/

Text: Asami Miyamura

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