パリ 1997
PLACEText: Marc Nguyen
2、3 年前、フランスの首都であるにもかかわらず、パリは惨憺たるアートシーン、ナイトシーンの停滞にみまわれていた。一握りの才能ある人々と最近のシーンの一転ぶりは、パリをより錯綜させカラフルで活動的な場へと変容させてくれた。
事の起こりは、アン・リガード・モダンという、小さいながらも有名なブックストアーの扉だった。そこはピアシング、タトゥー、ボディーアート、ボンデージ、スパンキング、政治、現代アート、グラフィック・デザインというオルタナティブ・カルチャー関連の日本、アメリカ、イギリスなどのファンジーンや出版物の膨大な量を誇る流行の場となっており、グラフ・ジーンの配給や売り出しのパイオニアでもある。
やがてこの流れはレコードショップにも波及する。オッド・サイズという店では、音楽ファンや一般の人達にまで最近のオルタナティブ・ミュージックの広範な嗜好をカバーするまでの品揃えで賑わっている。バリバリの日本のハードコア、ヨーロッパのノイズ系インダストリアルからヒップなグルーブまでなんでもありという、あらゆる聴き慣れない音や興味をそそる音楽がここに一同に会するという、実にユニークな現代の音楽パノラマなったのだ。
ラフ・トレードは “絶対ここ以外では手に入らないレコード” というコンセプトを打ち出し、よりエレクトリックでテクノ寄りのアプローチを展開している。パリでここ以外では手に入らない素晴しい実験的作品が、レコードとCDで売り出されている。
ピガールにあるシガールの真正面に、ラ・ブール・ノアールという場所が最近オープンした。ここでは、「マウス・オン・マーズ」などの特異なアーティストを発見できたりする。
さらには、モントルイユのレ・ザンファン・シャビーレはエクスペリメンタル、インダストリアル・シーンにおけるパリッ子の聖地となっているし、ビデオ・フェスティバルのみならずミュージシャンたちも参加するコンサートも定期的に行われている。
さらには、2、3 週間のうちにラ・マルキネリもオープンだ。コンサート、映画際、回顧展等のイヴェントが行われ、“フランス北西部の伝統” を生かした実験と発見の場となるであろう。そこはもう既に、ディナーを楽しむには良い場所との認識も広まり、アニメファンのために、毎週火曜日を20フラン(約450円)で、1時間半ほどの実験映画を作品の監督も同伴で楽しませてくれる。一般の人々も映画をテーマに議論できるのだ。
Text: Marc Nguyen
Translation: Satoru Tanno