アパラトゥ

PEOPLEText: Eduard Prats Molner

アパラトゥは、スタジオ・工房・会社など、プロジェクトによってその形を変えています。仕事を楽しむことができ、好きなことができるデザインスタジオを作ることが、作品作りを始めてからの私の原動力になっています。“アパラトゥ”(Apparatu)という名前は、“Apparat”というドイツ語と“Aparatu”というカタロニア語からきていて、共にガジェット、機器、家電、機械といった意味をもっています。私の作品には特定のコンセプトはなく、直感に頼って感じるままに作品を作っています。いつもアリかナシか決めるのは作った後です。「壊れやすく、落としたら壊れる」この陶器のもつ性質が、私の作品においては重要な意味をもっています。私には壊れないものは作れません。』(FUXYZ 9月号より抜粋)

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バルセロナ出身のシャビエル・マニョサは、若手のプロダクトデザイナー。ベルリンでアパラトゥを設立した。陶芸家の両親を持ち、常に陶芸に囲まれていた彼は、大人になったらなりたいと思っていたものを見つけるために、陶器のルーツから遠く離れたところへ移動する必要があった。ロンドン、ストックホルム、ミラノ、バルセロナ、そして東京で展示されている作品では、様々なアーティストとコラボレートし、最近では有名なデザイナー、アレックス・トロシュと一緒にプロジェクトを手掛けた。

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あなたの肩書きはなんですか?職人?それともアーティスト、もしくは、デザイナーですか?

この質問にはいつも「陶芸家」と答えます。いつもみんなには『陶芸家?』と聞き返されますけど。陶芸家として仕事をしている人は周りでは決して多くはないけれど、みんな僕たちの仕事を気に入ってくれます。映画「ゴースト」のおかげでしょうか。

陶芸を意識したのはいつですか??

陶芸家の家庭で育つと、あまり深く考えることもなく陶芸というものに慣れ親しみます。多かれ少なかれ、どの家庭でも同じようなことが言えると思います。その価値に気付くには長い時間がかかりました。
実家には父が置いた花瓶があります。小さいころからそこにあって、ずっと『ひどい花瓶だなぁ』なんて思っていたのですが、ある日急に『これはすごい!』と思ったのです。その日から陶芸というものに興味を持ち始めました。少し前のことですが、実はその花瓶を運んできて、自分の家の壁に鹿の剥製のように飾っています。

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子供の頃は、両親の工房で時間を過ごすこともありましたか?

放課後、週末、休みの日…いつも工房にいました。自分にとって、工房はとても特別な場所です。昔は工業陶芸の工場だったのですが、閉鎖した後、彫刻家や絵描き、そして私の両親のような陶芸家が住むようになりました。集まってくる人達は、アーティストというよりは、職人という感じでした。
理由は分からないのですが、ちらほらと工房を去る人が出てきて、いつの間にか私の両親を含めて数人だけが残りました。その後、アンティーク収集家が集まってきて、陶芸工場が古家具市場に変わっていきました。
今は、陶芸のスペースは本当に小さくなってしまいましたが、それでもそこが一番居心地が良い場所です。子供の頃よりもそう感じます。

アパラトゥは、ベルリンで設立されましたね?

『ベルリンがいいよ』という話をガールフレンドから聞いて、そうしたのです。私は英語もドイツ語も話せませんが、ベルリンの雰囲気に惹かれました。
ベルリンでの暮らしはとても良い経験になりました。住み始めたころは、とても硬く冷たい空気を感じて怖じ気づいていたことを覚えています。しかしベルリンでは時計を気にせず、バーも閉店時間が決まっていなくて、地下鉄も込んでない。全てがリラックスしている都市だなと、すぐに感じるようになりました。
私の家の近くのパン屋では、すぐ隣のスーパーマーケットで買った牛乳を売っていたりしましたし。面白いですよね。

そして数年たって、ベルリンを去りバルセロナに戻ることになりましたね。

ベルリンで活動した5年間はあっという間でした。冬にハンモックを売ったり、毎週日曜日にはフリーマーケットでお店を出したりと、色々なことをしました。
そうするうち、両親の工房に長い間いたこともあり、自分自身の工房を作ろうと決めたのです。
そして、バルセロナとベルリンを行き来する生活が始まりました。2つの都市に住むのは楽しいですが、あまり効率がいいとはいえなかったので、バルセロナに戻ったのです。戻ってから約1年が経ちますが、色々な変化を感じています。今はちゃんと作品に取り組む時間もあるし、私が住んでいるサン・クガでは、ふらっと立ち寄れるバーも何軒かありますしね。

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