
フォントが時間を作り出す。セミトラの初個展。
ウェブデザイン、グラフィックス、インタラクティブデザインと、最新のメディアテクノロジーとデザインの領域をクロスオーバーするクリエイター集団「Semitransparent Design (セミトランスペアレント・デザイン)」。2003年の活動開始から、実際の空間とウェブ空間を繋ぐ作品で注目を集めている彼ら集団から生まれたアートユニット「セミトラ」による初個展「tFont/fTime」が山口情報芸術センター[YCAM]にて9月19日より開催される。これまでにもフォーカスしてきたフォントと時間をテーマにした作品の新たな試みを行うという、新作展示を目前に控えたセミトランスペアレント・デザインの田中良治氏からお話を伺った。

メンバー紹介を含め自己紹介をお願いします。
メンバーは、現在6名で、大きくグラフィックとプログラム、デバイス開発の担当で構成されています。それぞれの役割は、グラフィックデザイナーとして、田中良治、佐藤寛、柏木恵美子の3名、そしてプログラマーは、柴田祐介、萩原俊矢の2名、デバイスデベロッパーは菅井俊之が中心におこなっています。

YCAM「BIT THINGS」での展示風景(2003)
2003年にセミトランスペアレント・デザインを設立した経緯を教えてください。
ウェブの持つ潜在能力を、クリエイティブ(デザイン)で引き出すという目的で、セミトランスペアレント・デザインを設立しました。
最初の仕事は、山口情報芸術センター[YCAM]の情報コーナーである「BIT THINGS」という空間を利用したウェブサイトの制作で、実空間とウェブを連動させたものでした。その後も、この考え方や、制作のフレームで多くのウェブ広告を作るようになりました。

akarium Call Project
ウェブデザイン、グラフィックス、インタラクティブデザイン、映像、プリントなど、多岐に渡る作品を手掛けていらっしゃいますが、これまでに手掛けた作品(クライアントワーク)をいくつかご紹介ください。
代表的なものでは、2006年の表参道のイルミネーションを利用した「akarium Call Project」。これは、参加者の携帯電話からの声に応じて、表参道(東京)に立てられた巨大灯籠総数60本が明滅するインタラクティブイルミネーションです。特定の番号にダイヤルして、電話でメッセージを伝えるだけで、その声に反応して、表参道の光が明滅する。この様子はネットでも中継されているので、どこからでも参加できて、その反応を見ることができます。

BEYESインタラクティブインテリア「Skew」
2007年には、ウェブサイトから、ビルの外壁にあるLEDライトの色を変える「Sony BRAVIA」のプロモーションコンテンツ「Color Tokyo! - Live Color Wall Project」(2007)にも参加しました。ウェブサイトから、ユーザーが好きな色をスポイトに取り、銀座ソニービルの映像へ落とすだけで、実際のビルのライティングの色が変化していくというものです。このほか、最近では、ヘアーサロン「SUPERSTARS」のCIや、表参道ヒルズ「BEYES」のインタラクティブインテリア、「Ando Gallery」のウェブサイトの製作をおこないました。
今回は、アートユニット「セミトラ」としての展覧会になるわけですが、「セミトランスペアレント・デザイン」での活動との違いを教えてください。
基本的にウェブメディアに向かう姿勢は変わらないのですが、ノン・クライアントワークの場合に「セミトラ」を名乗るようにしています。今回の展覧会では、作品だけでなく、フライヤーやポスター、ウェブといったビジュアル全体も担当しています。作家名としての「セミトラ」そして、プロジェクトデザインの監修としては「セミトランスペアレント・デザイン」としています。

Semitra「ムーバブル・タイプ/活字」(2009, 山口情報芸術センター[YCAM])

Semitra「タイプセッティング/組版」(2009, 山口情報芸術センター[YCAM])

Semitra「カリフォルニア・ジョブ・ケース/組版箱」(2009, 山口情報芸術センター[YCAM])
YCAMにてセミトラ初の個展を開催とのことで、「フォントにおける時間」をテーマにYCAMでのインスタレーションとウェブ作品を展開するそうですね。展示内容を教えて頂けますか?
2008年に、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東京)の「OPEN SPACE」でオリジナルフォント「tFont」を使った作品を展示しましたが、YCAMでの展覧会においては、コンセプトをさらに展開させ、「tFont」に加えて新たに「fTime」というテーマでの作品を制作しています。
ターンテーブルや、スケートボードのハーフパイプを用いた作品や、LEDを用いた巨大サインなど、色んな作品があるのですが、もちろんインスタレーションは、ウェブサイトからも参加したり、中継で見ることも可能です。

tFont
オリジナルフォント「tFont」「fTime」について、それぞれご紹介をお願いします。
どちらもグラフィックと時間というテーマから生まれたものです。「tFont」とは時間軸(t)を持ったフォント(Font)という意味で名付けたのですが、 一見でたらめな光の点滅に見える映像は、文字の軌跡を描画しており、シャッタースピードを落としたカメラなどで撮影することによって初めて読むことができるというものです。そして「fTime」は「tFont」と対をなす形で生まれました。「tFont」の名付け方に従って訳せば、フォント(f)を持った時間軸(Time)ということになるのですが、ちょうど一定の時間軸上にアルファベット(A〜Z)が並んでいるというイメージです。つまり、音楽や映像と同じようにフォントを再生するというものです。
これまでに様々なインタラクティブな作品を多く手掛けていらっしゃいますが、フォントに着目したきっかけは何かありますか?
元々、インタラクティブとフォントは同じぐらい私の興味の対象です。この両者が結びついたきっかけは、ウェブのルールに従ってグラフィックを作ることで、ウェブに最適化され、正統なグラフィックからは到達できないような表現ができるのでは、と考えはじめたことです。その第1号が「tFont」です。

セミトラ インスタレーション展「tFont/fTime」(2009, 山口情報芸術センター[YCAM])
インタラクティブな作品をインスタレーションとウェブで展開される印象が強いですが、2つの空間を使ってどのようなことを試みたいと思っていますか?
インスタレーション(実空間)とウェブが互いに影響し合いながら成立するようなものが作りたいと思っています。しかし、そのことが目的化して、主題が宙づりになってしまわないように気をつけています。
どのように作品制作を進めているのですか?制作プロセスを少し教えて下さい。また、メンバーごとに担当分野が別れているのでしょうか?
作品によってプロセスが変わります。例えば「tFont」は私がプログラムスケッチを提示してメンバー間で共有しましたし、「fTime」はその概念をほぼ言葉のみ説明し、各メンバーがバラバラに解釈したものをまとめていくという感じで作られました。
メディアの多様性とともに、デザインに必要な技術や考え方も常に変化しています。現在の社会において、クリエイティブやデザインの分野に期待、または必要とされることはどんなものだと思いますか?
メディアの変化を敏感に感じながら対応していくというのも必要ですが、表層をすくい取るぐらいでは太刀打ちできないようになってきていると思います。そこからは想像もできなかった可能性を提示することが必要なのかなと思います。
10月1日より公開予定の今回手掛けて頂いたシフトのカバーデザインについて説明して頂けますか?
YCAMで展示する「fTime」の一部を利用した映像作品です。これを見ていただければ、フォントを再生するという意味が分かってもらえると思います。
将来どんな作品を作ってみたいですか?
インタラクションを期待されないインタラクション作品が作りたいですね。
今後のご予定を教えてください。
特に予定はないのですが、YCAMで展示した「tFont/fTime」を巡回させたいと考えています。
セミトラ インスタレーション展「tFont/fTime」
会期:2009年9月19日(土)〜2010年1月10日(日)
時間:10:00〜19:00 (9月19日は12:00より)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)年末年始(12月29日〜1月3日)
※10月26日〜11月6日は展覧会のみ臨時閉場。
会場:山口情報芸術センター[YCAM] スタジオB、ホワイエ など
住所:山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
料金:入場無料
http://www.ycam.jp
http://semitra.ycam.jp
Text: Mariko Takei