スティーヴ・パクストン

PEOPLEText: Wakana Kawahito

34年ぶりの来日となるスティーヴ・パクストンは、C.I.(コンタクト・インプロヴィゼーション)の創始者であり、アメリカ・ポスト・モダンダンスの中心人物だ。この度、青森、横浜、東京、京都、山口での展覧会、講演会、ワークショップが長期間にわたって行われている。その中心となるのが、彼が1986年から取り組んでいる「Material for the Spine(背骨のためのマテリアル)」を日本で初めて紹介するワークショップとYCAMでの「Phantom Exhibition」。合気道、ヨガ、ヴィパッサナー瞑想などのアジアの身体技法を取り入れた 「Material for the Spine」は、普段意識することのない「背骨」に注目し、私たちに自明となっている身体表現のあり方を問いかけるという。今回、東京藝術大学大学院映像研究科にて行われていたワークショップに彼を訪ねた。

スティーヴ・パクストン
Photo © Jordi Bover

今回、34年ぶりに来日してワークショップや展覧会を行うに至った経過を教えてください。

実は、この一連のプロジェクトは偶発的に生まれたんです。あるとき、ベルギー・ブリュッセルの出版社から、DVDを出さないかという打診があり、その撮影をスペインで行うことになりました。撮影が終盤にかかった頃パーティがあって、その時に、撮った映像を壁に投影してみたんです。そうしたら、斬新で面白かった。そこで、友人に展覧会をやることを提案しました。展覧会をブリュッセルと日本で開催し、その後マドリッド、ブラジルに巡回する予定です。今回、日本では青森、横浜、東京、京都、山口でワークショップ、講演会、展覧会を行っているのですが、それはアーティストの中谷芙二子さんが熱心に呼んでくださったことが キッカケとなりました。

スティーヴ・パクストン
“Material for the Spine” Photo: Contredanse (Florence Corin and Baptiste Andrien)

今回のDVD、およびワークショップは「Material for the Spine(背骨のためのマテリアル)」ですが、あなたにとって背骨とは何ですか?

普通は全然意識しませんが、ケガをすると背骨なしに動けないことに気づかされます。私は何度か背骨にケガをしたことがあり、とっても痛かったのを覚えています。そのときは車いすで生活していました。
つまり、人間の動きの中心にあるもの。それが背骨なのです。背骨はスペイン語でコラムと言いますが、“コラム(円柱)”が私にとっての「背骨」を説明するのにより近い言葉だと思います。
ダンスとほとんどのスポーツは腕や足、肩など体の外側の部位に注目します。しかし、C.I.は背骨を中心に考えます。C.I.の中で使っていた背骨の使い方を分析して、それをもとにC.I.のためのエクササイズを作り始めました。そして、背骨のことだけ考える数週間のワークショップを考えました。
体の色々な部位がどのように繋がっているのかということは興味深いです。そして、その部位同士の要となるのが背骨なのです。体のいろんな部位がどのように繋がっているのかというのは興味深いですし、その共同を支えているのが背骨なのです。

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