東信

PEOPLEText: Mariko Takei

東信
「式 2」個展「AMPG vol.25」三菱地所アルティアム, 福岡, 2009

「式」シリーズに関しては、自然の中にある松以上のもの、その存在自体を場に落とし込んで、そこにパワーをグッと寄せて作るというのが一つのテーマです。
「ROLLING」の松が回るというのは、ザーザー降りの雨の中、そこに溶けていくように、皇居で見た松が回っているイメージがありました。溶けていくイメージを表現するとかコンセプトは色々あったのですが、純粋に回してみたかったのでやってみました。

東信
「ROLLING」個展「AMPG vol.25」三菱地所アルティアム, 福岡, 2009

やはりユーモアもないとダメですよね。僕は、“眉間にしわ寄せて知ったかぶりで見るアート”って全然面白くないなと思っていて、言葉は悪いですが、“芸術”って作家が生み出した“排泄物”のようななものだと思っています。それを僕らがバクバクと食べている。そこを理解しつつ、アートを見たいと思うし、自分が刺激を受けてみたいと思ったりしますね。音楽でもそうだと思います。

もうひとつ東さんの作品の中で特徴的だなと思うのが、「Distortion x Flowers」にも見られるように、音楽と植物の組み合わせですよね。

音楽と植物は、僕の中にある柱。大きなひとつのテーマです。音楽と植物の2つには共通しているところが絶対あると思います。僕のやりたいことは、よくあるセンサーを近づけると植物から音が鳴っているのが聞こえる、というようなものではなく、あくまでも人間が感じるものであったり、ひとつの主体性のあるものなのです。この花にはこの音を感じるとかね。色から捉えたりっていう視覚もあると思うのですが、僕はもうひとつ、音を感じる感覚で植物を選んだり、見たり、表現したりします。

今後の展開として、先ほどの松の「式」シリーズはこれからも続きますか?

もういいかなと思ってます(笑)。このシリーズは結構潔い作品じゃないですか。ドイツのNRWフォーラムでの展覧会でも評判良かったので、ヨーロッパのいろんなところからも展覧会のオファーを頂いてるのですが、自分の中で終わった作品のような気がしています。
これからは、ROLLINGのように植物を回してみるとか、そういうことに入っていきたいと思っています。ある意味本当のエコ活動なのではないかと思います。回ってる松を見たら、もの凄く集中して見るでしょう。しかし、海辺に行ってわざわざ松を眺めない。全ての作品にその発想があるのです。僕は植物を殺しながら作品を作る訳ですが、それによって何を伝えたいかというと、人の心にそういうものを植え付けていくという作業なのだと思います。殺して生かすという言葉があるように、一瞬の美を摘み取って、普段あり得ない形や、造形的な美術品を創り出して、人の心に植え付けていく。

東信
「Time of moss」展示「TOKYO FIBER ’09 SENSEWARE」トリエンナーレ美術館, ミラノ, 2009

作品を作る上で何か心がけていることはありますか?

根本的には、やはり植物に対する尊敬の念ですね。植物が上に立ってもダメだし、僕が上に立ってもダメだから、同じ目線で、同じ立ち位置でやらないとと思ってます。それから、畑づくりもすごく大事で、破産寸前になりながらも、すでにもう4年やっています(笑)。僕はビニールハウスではなく、いわゆる路地モノを作っているので、シーズンにより育てるものも変わってきます。育てた植物を使って、作品の制作もします。植物との距離感を大事にしたいので、植物を受け入れたいし、受け入れてもらいたいのです。なので、自分の修行の場所のような精神的な農園をやっています。

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