横浜トリエンナーレ 2008

HAPPENINGText: Naoko Kawaguchi

2001年に始まり、その3回目となる「横浜トリエンナーレ 2008」が、9月13日に開幕。25の国と地域から73人のアーティストが参加し、新港ふ頭に新設された、新港ピアや横浜赤レンガ倉庫1号館、BankART Studio NYKをメイン会場に約2カ月半にわたって開催されている。

今回のトリエンナーレのテーマは「時の裂け目」を意味する「タイムクレヴァス」。 急速な情報化社会のなかで日常の時間に流されることなく、時間の淵にたたずみ、その裂け目(クレヴァス)を覗き込むという構想のもと、大型インスタレーションや映像作品、パフォーマンスを伴う作品が多いのが特徴である。

メイン会場の中で一番広い新港ピア。 まずはこの会場に展示されていた作品から主なものをご紹介。

横浜トリエンナーレ 2008
ヨナタン・メーゼ「Dr. NO-METABOLISM IN MOOMINGYM like SOLDIER-FLASH-BLUE de MING (BABYKINGKONG IS BACK IN FANTOMAS-GYM) thanks… 1912-2012」

新港ピア入り口すぐ右手には、血のような赤い文字で「DICTATORSHIP OF ART(アート独裁政権)」とのもと、ドイツ人アーティスト、ヨナタン・メーゼの迫力のある作品が展示されている。1998年のベルリン・ビエンナーレで発表したインスタレーションが国際的な注目を浴び、以降ドイツアートを牽引する現代アーティストの一人である。
実はこちら、トリエンナーレオープン初日に、多くの観客が見守る中、ヨナタン自身がパフォーマンスを行い仕上げたインスタレーション作品である。

横浜トリエンナーレ 2008
ヨナタン・メーゼ「Dr. NO-METABOLISM IN MOOMINGYM like SOLDIER-FLASH-BLUE de MING (BABYKINGKONG IS BACK IN FANTOMAS-GYM) thanks… 1912-2012」

壁面や床には第2次世界大戦の写真集や、アドルフ・ヒットラー、ムッソリーニの写真が無造作に貼られ、自身のポートレイト写真とともに独特の世界観を創り上げている。
カルト的な荘厳さをもつヨナタン・メーゼの作品は、一部賛否両論もあるそうだが、権力や欲望、信仰など人間の原始とも言える思いを含蓄した神話的ともいえるその世界観を表現し、強烈な個性と迫力をもつ。

横浜トリエンナーレ 2008
ミケランジェロ・ピストレット「17マイナス1」, 2008

イタリア・ビエッラ生まれのミケランジェロ・ピストレットの巨大な鏡を使った作品。ハンマーで1枚1枚をたたき割り、鏡の下には砕けた破片が散乱している。鏡に映る人物(見ている人)との間に、新たな時間の次元が生まれると言える、迫力ある作品である。

横浜トリエンナーレ 2008
ペドロ・レイエス「ベイビー・マルクス」

メキシコ人アーティスト、ペドロ・レイエスは、マルクスやアダム・スミス、レーニン、スターリン、毛沢東など、歴史的な政治家、革命家の操り人形を展示。かわいい表情ながら、氏の個人的思想、問題提起を感じさせられる作品である。

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