ウィーン・アート・ウィーク 2008

HAPPENINGText: Daniel Kalt

ここだけの話、いわゆるアート狂、ファッショニスタ、デザインオタクなどのやり過ぎ具合に心配になってしまったことがある人もいるだろう。ファッションウィーク、アートウィーク、デザインウィーク… 世界中で多くのイベントがまるでキノコみたいに大量発生している中で、我々はどんなしおりを作っていけばいいのだろうか?その際、本当にホットなスポットを見つけるのが重要だと思うが、色々行きたい候補があって迷ってしまうことも多い。今回は、オーストリアのウィーンで打ち上げられた新規構想に注目してみよう。

ウィーンには毎年春に開催されるウィーン・アートフェアがあるが、今年3回目の開催となるウィーン・アートウィークも世界中のアート好きをここヨーロッパの中心に集めている。ウィーン・アートウィークは、あらゆる都市の著名な団体や組織から集まった監督や専門家によって構成されるアートクラスター・ウィーンにより運営が行われ、極めて大掛かりな事業であると言えるだろう。

viennaartweek 08
Sharon Lockhart and Diederich Diederichsen – ArtistsTalk at Secession. Photo: Courtesy of Secession

メインイベントの一つは、専門的な聴衆を対象にしたパネルディスカッションや円卓会議だ。批評の将来、未来の美術館、美術館のアート、アート市場における新しい戦略などをテーマに、国際的に有名な参加者たちが議論を交わした。中には、ジョー・ファン・リースハウトノーマン・ローゼンサルジュリア・ペイトン・ジョーンズ、そしてハンス・ウルリッヒ・オブリストなどの参加もあった。

ローカルアートシーンの解説者たち(例えば、ニューヨークにあるオーストラリア文化フォーラムの元監督のクリストフ・サン・ホーヘンスタインなど)が司会を兼任。加えて、より多くの大衆向けに、いわゆるスタジオ見学が開催された。参加者たちは、アーティスト、キュレーター、ジャーナリストたちによって案内され、アートの裏側に触れたり、各都市のアート界の話を聞くことが可能だ。アーティストで「スパイク・アート・マガジン」の編集長でもあるリタ・ヴィッテロリも、分かりやすいガイドとしてツアーの案内を行った。そのガイドの最終地点は、フローラ・ニューウィースによる「クラブルメン」のプロジェクトスペース。革新的なプロジェクトである「クラブルメン」は、芸術的なプログラム然り、所属のアーティストたちによる素晴らしい作品の数々も然り、そのインタラクティブさ、オープンさ、学際的な活動に注目が集まる。

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Sharon Lockhart, Lunch Break at Secession. Photo: Courtesy of Secession

これらは主に、中の人向けのやや内輪のイベントだが、ウィーンアートウィーク会期中はもっと広い大衆向けのイベントも数多く用意された。セセッションは、ウィーンで最も影響力のある美術館で、芸術的な革新という意味でも歴史が深い。このセセッションだが、会期中は、シャロン・ロックハートの個展「ランチ・ブレーク」を開催した。彼女は作品に対して非常に深い考えを持ち「瞬間」や「身近な時間」と言うものに対するアプローチを行ってきた。それはほとんど社会論理学的なアプローチとも言える。今回の作品でも、この態度に忠実に、メインにあるバス・アイアン・ワーク・ファクトリーの労働者たちの食事休憩を収めた写真、映像、音楽の展示を行った。ロックハートはオープニングに際して、自らウィーンを訪れた。ウィーンアートウィークの初日、ロックハートとドイツ人のアート理論家ディーデルリッヒ・ディーデリシェンが公に登場し、アートの自由性、アーティストの社会の中での位置付け、ロックハートの作品に対するアプローチについての会談を行った。この会談は大きく反響を呼び、セセッションのロビーが、アート好きで超満員になった。

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T-B A21. Courtesy of Amar Kanwar and Marian Goodman, Paris

無類のアート好きを常に魅了し続ける団体が、ティッセン・ボーネミザ・アート・コンテンポラリーである。創立・監督は、ウィーンのアート好きなセレブたちの第一人者と言われることもある、フランセスカ・ハブスバーグ(マドリッドにあるミュゼオ・ティッセンのコレクションの寄贈者の娘)である。ウィーンアートウィーク会期中は、その展示スペースで「クエスション・オブ・エビデンス」が開催された。この展覧会においては、「政治的独自性」、「人権侵害」、「言論と芸術的表現の自由を制限しようとする試み」などをテーマに扱う南アジア・中央アジアのアーティストたちの多様な立場が集約されている。アーマー・カンウォーによる19チャンネルの映像インタレーション「トーン・ファースト・ページ」は、展覧会における重要な作品の一つ。政権のイデオロギーを淡々と綴った本の最初の1ページを破り捨てたという罪で刑務所に入れられた、ビルマ人の本屋店長コ・タン・テイに対するオマージュだ。アラダナ・セスとダイアナ・バールドンと共に、この「クエスチョン・オブ・エビデンス」の担当者である代表ダニエラ・ツィーマンは、来年に向け「T-B A21ファウンデーション」で開催される大きなプロジェクトのコーディネートも行っている。森美術館とのコラボレーションで、ティッセン・ボーネミザ・アート・コンテンポラリーのコレクションが、2009年東京で開催される予定だ。

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