スカム・サークル

PEOPLEText: Kazumi Oiwa

ミズノの音楽への疑問の答えを出すために結成という訳では無いのだろうが、私にはそう捉える事ができた。その答えはいつ出るのか、それは決して現在ではわからない。ミズノの疑問とは一体何なのか?聞いているうちに、何だか納得してしまう話を聞く事ができた。

『今だけじゃなく、大衆向けの音楽っていつの時代も、決まり事というか、ルールがあるように感じるんです。その一例ですけど、Aメロ、Bメロ、サビが必ずあるとかもそうですよね。でもそれだけが素晴らしい音楽とは限らないと僕は思うんです。もちろんそういう音楽への憧れはずっとあったし、何度もチャレンジしたことも あります。でも自分には作れなかったんですよ。ルールの中で作った僕の音楽はグッドミュージックにはならなかったんです。だから僕は僕だけの音楽をルールなしでやってやろうと。僕は自身の内面を曲にしてます。人間の感情ってシンプルじゃないですよね?凄く幸せな気持ちで満たされた次の瞬間何かのキッカケで悲しくて泣いてしまうこともある。ずっと泣いていたら、なんだか笑えてきちゃう事だってあるじゃないですか。それは歌詞でもそうです。だから僕はそういう混沌とした感情や、白黒ハッキリしたものではなく自分自身を忠実に曲で表現していきたいんです。』ミズノ

「ルールの無い音楽」それをバンドという形で表すのはとても大変な作業だ。ミズノの作る音楽を、生バンドで表現する。プレイヤーとしてドラムの堀はとても悩むことが多いらしい。

『僕もロックバンドをやってきたけど、今思えばずっと違和感を感じながらやっていた気がします。元々ロックは好きで聴いてはいたんですが、同時にHIPHOP、ファンク、ラテン音楽が大好きだったんです。特にHIPHOPとかファンキーでスィングしたビートが凄く好きで、ミズノの曲で実際にプレイしたとき、凄くしっくりきたん です。これがやりたかったんだって思いました。ミズノから作りたい音楽を聞かされたとき、興奮と同時に、プレイヤーとして本当に自分たちにできるのかという不安も凄くありました。そういう音楽をやることは、すごい夢と言うか憧れだったんですよ。けど、もし自分がクラブに 通ってて、例えばハウスとかヒップホップに慣れ親しんでそれに囲まれて生きてきてたら、それは違ったと思うんですけど、そうじゃないので、正直自信がなかったですね。でも「やれるんだよ!」と熱く言われたら、単純に「やれるのかな?」と思ってきて、まず初めてみたんですよね。そこからが大変でした。こういう音楽を 生ドラムでやること、打ち込みとは別の存在意義があってそれを自分のスタイルで確立することが凄く難しかった。最初はけなげに打ち込みと真っ向勝負してましたから。今も日々探求してます。』堀

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デモまでをミズノが作り、その後は堀と橋場にまかせて曲を制作するスタイルをとっている彼ら。この3人には何か独特な空気感があると感じる。信頼というか、お互いがお互いを刺激しあい、求め合うというか。決してワンマンにならず、それぞれがミズノの楽曲に自分達をブツけている。そんな彼らの楽曲制作、バンドという形になるまでの話を伺ってみると、まずトラックメーカーのミズノの頭の中を話すことから始まるらしい。

『昔の事でも、何でも僕は記憶を点で覚えているんです。何年か前の、あの瞬間にかかっていた音楽とか、あの時の感情とか景色とか。そういうのを思い出して、曲を作っていきます。堀と橋場に曲を聞いてもらう時は、そのイメージをとにかく話します。こんな事を感じて、思ってとかをまず最初に伝えますね。その後にデモを聞いてもらって、そこでそれぞれが感じるものを演奏してもらうスタイルで今は制作しています。僕は曲っていうのは当たり前にできるものだと思うんです。日記を書くのと同じような感じで。でもバンドとして完成する為には、メンバーの助けが絶対に必要じゃないですか。だから僕はプレイヤー、技術面に関しては、まったく口を挟まないようにしています。そこで僕が口を挟むとバンドでは無くなるし、面白くないと思うんですよね。僕が作った音を聞いて、演奏してもらったものがそれぞれの答えだし、それができた瞬間が凄く楽しいですね。もし、その答えを僕が言ってしまうと責任感も薄くなるし、グループで表現している事を忘れてしまうと思うので。口で言うのは本当に簡単な事だけど、それじゃあ一緒にやっている意味が無いと僕は思うから、彼らには何も言いません。』ミズノ

『僕がミズノの曲を聞いた時に、これは世に出したいなって思ったんです。だからこの曲を世に出す為に、ミズノの音楽を表現する為に自分がいるんだったら、 それを助けたいなと思いました。ミズノは、僕がロックバンドを始めた時からそこでは力量も、技術も含めて僕の表現したいことができてないと、もっとやりたいこと、表現したいことがあると知っていたから、ミズノのイメージ、音楽を聞いて、そこからは僕らに任せてくれます。だから僕は自分のフィルターを通して、ドラム というパートでミズノのイメージを表現していきたいんです。信頼関係がないとなかなかできないやりかただと思うんですけどね。昔と違って自分がドラマーという感覚があまりないので、やりたいことが表現できてればなんでもOKなんですよ。』堀

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