「ノーマディック!シェイン・イーマンと仲間たち」展

HAPPENINGText: Aya Takada

2008年3月20日から4月20日まで、トーキョーワンダーサイト本郷にて企画公募展「ノーマディック展ーシェイン・イーマンと仲間たちー」が開催された。

企画は当方(ビルド・フルーガス)が務め、遊牧的気質のカナダ人作家、シェイン・イーマンとセス・スクリバーの実体験に基いたアニメーション「Asphalt Watches」上映や日本滞在中に制作したレジデンス作品、そしてマーク・ベルを加えてアートコミュニティの親密さを表すコラボレーションルームを展示した。

ノーマディック展

展覧会のタイトルである「ノーマディック」とは、遊牧的、よりよい住環境や豊かな土地を求めて旅をする人々の集団性を意味する。

カナダのアルバータ州出身のシェイン・イーマンは、カナダとオランダの美術大学就学後、菌学、伝承民族植物学、環境保護、人類学を独学、 大工仕事や石職人もこなす一方で、写真、絵画、アニメーション、詩等を手法に作家としても遊牧的に活動している。

CDデザインやユナイテッドバンブーのTシャツを手掛け、”表現全てが独自の世界感を生み出す”と、米ストリートアート界が注目する若手作家の一人。「ノーマディック」とは、まさに遊牧的に生きるイーマン自身や作風を象徴している。

ノーマディック展
「終末時のスタディー」 原画:シェイン・イーマン、衣装制作:田中謙一

「Asphalt Watches」は、髭面で黒いマントに身を包んだスクリバーと半透明のオバケと化したイーマンが、カナダ西海岸バンクーバーから東部トロントに向けて貨物列車に飛び乗ろうとする場面から始まる。すぐさま、貨物列車が運行していないことが判明し、二人は泣く泣くヒッチハイクへ転向・・・。

本作品は、ドン・キホーテやサンチョ・パンザ、ハック・フィンとジム、ボブ・ホープとビング・クロスビー、ジャック・ケロアックとニール・キャサディ等のロードムービーや放浪がテーマとなる代表人物のギャグや放浪と遍歴の生活話が引用され、独創的な登場人物と怪しい状況に満ちたアカレスクな旅へと展開する。

自称サンタクロースの中年男性、タトゥーを見せびらかすマッチョ、マイケルジャクソン風のジャケットに、ウェンディーズのハンバーガー・・・。イーマン作曲のサウンドトラックが脳裏に焼き付き、描かれた登場人物らが、今にもリズムに乗って動き出しそうだ。

思い出深い会話や印象的な人々は壁画に描かれ、40分でありながらリズミカルに展開するアニメーションを見終えると彼らの旅を追体験するかのようだ。

ノーマディック展
「ヒッチハイカーのスーツケース」セス・スクリバー

また、セス・スクリバーによる「ヒッチハイカーのスーツケース(2008)」は、灯油缶に手を加えたもの。生きる知恵と創造性をユーモラスに表す姿勢が、展覧会のあらゆる箇所で伺え、発想の柔軟性や適応性の高さが新鮮かつ刺激的だ。スクリバーが与えてくれるのは、表現に於ける真新しさではなく、解放感や自在さ。来場客に活用法を伝えるスクリバーは、「お手を触れないでください」が心得のギャラリー空間を、開放的な空間へと導いていた。

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