ジョン前田展
HAPPENINGText: Kanya Niijima
『その可能性がちらっと見えたんだ。直感的だったよ。自然な感じがしたんだ。』
– Karrie Jacobs, “The Maeda Touch”, I.D. Magazine, 1998年11月号より
キャリー・ジェイコブスとの I.D.マガジンでのインタビューにて、ジョン・マエダは、コンピューターサイエンスとビジュアルアートが、彼自身の中でうまく融合し始めた瞬間をこのように語っている。
アメリカ国内でトップレベルの教育機関の一つである、 MIT(マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー)にて教授として教鞭を執る傍ら、コンピューターを使用したアーティストとしても積極的に活動を続けているジョン前田。しかし、ただ単に「コンピューターを駆使したアート」と、マエダの作品をステレオタイプな形で定義するのは、誤解を招くだけかもしれない。彼の作品を作りあげるプロセスは、制作のほとんどをコンピューター上でオペレートするクリエーター達の間で一般認識されている概念、いわば「大手会社のデザイン用ソフトウェアの使用を前提とした」ごく普遍的な制作過程とは、全く異なるレベルで繰り広げられているからである。
『既成のデザインソフトがもつ一番大きな問題は、束縛のない多大な創作力を与えてくれるという一種の幻想を、クリエーター達に植えつけている点である』と、上記の I.D.マガジンでのインタビューで指摘しているジョン前田。彼の作品は、市販されているデザインソフトウェアを一切使用せずに、彼自身がみずから書きあげたプログラムによって全て創りあげられている。作品一つ一つのコンセプトに従って命を与えられたそれらコード達は、一般に言われる「コンピューター通」なデザイナー達が作り出すビジュアルランゲージよりも、制限のない、遥かに枠を超えた自由さを可能にしている。『多くのデザイナーは、自分の想像力をビジュアライズできると思っている。』キャリー・ジャコブスとのインタビューにて、マエダは言う。『しかし、実際のところは、自分ではなく誰か他の人の想像力の中で泳いでいるだけにすぎない事に気づいている人は少ない。』
マエダはコンピューターを使用したデザインに対して、マッキントッシュがデザイン/アートシーンに普及して以来広範に認識されているパラダイムを、新しい方向にシフトできる、次世代のアーティスト達の成長を願っている。
10月28日から12月16日、カリフォルニア美術大学(CCAC)において、ジョン・マエダによる2つの展覧会「Maeda @ Media」と「Coded Blue」が公開される。「Maeda @ Media」は、近年制作したインタラクティブブック、ポスター、スカルプチャーの数々を展示。「Coded Blue」は、マエダ自らがサンフランシスコに滞在して新しく作品を制作する予定だ。コンピューターを真のアートメディアとして新たなアプローチを展開するマエダアートを体験する格好の機会となるだろう。
John Maeda “Coded Blue”
会期:2000年10月28日(土)〜12月16日(土)
時間:11:00〜17:00(火曜日21:00まで)
休廊日:日曜日
会場:Logan Galleries @ CCAC
住所:1111 Eighth Street, San Francisco, CA 94107
TEL:+1 415 551 9210
https://www.maedastudio.com
Text: Kanya Niijima