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リサ・ファーマー

PEOPLEText: Yurie Hatano

アメリカで生まれ育ったリサ・ファーマーは、その後世界の様々な土地で様々な人々と様々なデザイン界の分野に携わってきた。そして今、彼女は自身の独特で芸術的なプロジェクトを、美しい革製ハンドバッグと共に提示する。全てのバッグはハンドメイドの一点もの。これまでの活動や、彼女のクリエーションにおけるこだわりについて話を伺った。

まずはじめに自己紹介をお願いします。

アメリカのノースカロライナ州で生まれました。東カロライナ大学でビジュアル・コミュニケーションを専攻し、卒業後、ジョージア州のアトランタに移って、1996年のオリンピックのための大規模なプレゼンテーションに取り組みました。そこから、ミラノに移動し「スタジオ・ミケーレ・デ・ルッキ」に数年勤務します。グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、建築など、そこは本当に私が様々な分野のことを学べた場所でした。またそのスタジオには、そうした様々な分野があるだけでなく、様々な国からの様々な人が集まっている場所でもありました。文化や経験、分野のミックスが、とても刺激的な雰囲気をつくっていました。「スタジオ・ミケーレ・デ・ルッキ」の後は、ロンドンです。「イン・リアル・ライフ」というエクスペリエンスデザインに特化した会社で、デザインディレクターとして働きました。私が、もっと個人的で芸術的なプロジェクトを追求するための自分自身のスペースが必要だと感じたのは、ロンドンでした。

Lisa Farmer
Bug in his ear, 20mm x 30mm, Vegetable tanned leather

最近の活動やプロジェクトについて教えてください。

ミラノで行われた「ミラノ・サローネ」で、私は「レーザー・ウィービング」というモダンなタペストリーを作る新しい技術を提案しました。その技術とは、レーザーカットの革新技術と、伝統的な手作業のウィービング(機織り)を掛け合わせたものです。デザインと生産の間に生まれるギャップに気づき、私の作品の多くは、デザイナーとその生産者の役割の間にある新しい関係の可能性を追求することに献じています。市場が大量生産の素材や物で溢れている中、私の追求は、産業生産のプロセスの一部と、手作業の介入を掛け合わせたものをつくることにあります。美、感覚、創造力や独創力の価値を含むプロジェクトを生み出すためです。つまり、手作業の、詩的で意味のある痕跡を含むデザインです。

1996年のアトランタ・オリンピックに始まり、その後アメリカ、イタリア、イギリスなど世界の企業とアイデンティティ企画などのデザイン経験を積まれたそうですね。新しい世紀の始まりである2000年に、これまでのキャリアの方向転換をしたとか。ご自身でも『特定のクライアントやマーケッットのためのデザインの需要や規制から解放され、自分の創造力を完全に純粋で芸術的な方法で表現する必要を感じた。』と述べていますが、この転換に至ったきっかけは何でしたか?

私は、途中のどこかで、つくる楽しみを失ったのです。デザイナーではなく、創造的な「マネージャー」になりました。とても早く進みすぎ、とても多くのことをやりすぎ、もはや反映する時間がありませんでした。私の創造力は、内部のとても静かな場所から来ます。あまりに沢山の雑音が周りにあると、私のデザインは危険にさらされるのです。全てが始まるその小さい内部の場所、つまり私の創造力の源を、保護しなければなりませんでした。

リサ・ファーマー
Fish out of water, 10mm x 50mm, Vegetable tanned leather

「Neither fish, flesh, fowl nor good red herring(魚肉でもなければ獣肉でもなければ上質の燻製ニシンでもない)」というコレクションは、とてもユニークなタイトルですね。このコレクションについて教えてください。

私の意向は、ファッション、デザイン、芸術の境界を問う「携帯用の容器」のコレクションをつくることでした。分類されることができないような、デザインだけでなくコンセプトも本当に独創的なコレクションです。創造的なプロセスの間に、商業的に考慮すべき問題を少しも作らないよう、私の想像力だけを通してデザインしようと心がけました。「Neither fish, flesh, fowl nor good red herring(魚肉でもなければ獣肉でもなければ上質の燻製ニシンでもない)」は、慣用語で、これではない、他でもない、どのカテゴリーにもはまらない、というようなことを意味します。それは、私がこのコレクションにそうあって欲しかったことです。

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