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フランソワ・ピノー・コレクション展「時間の通路」

HAPPENINGText: Kana Sunayama

もうすっかり愛想を尽かされたかと思っていたフランスで、フランソワ・ピノーのコレクション展が開催された。

フランソワ・ピノーとはフランス人の大富豪実業家。モード界のグッチグループを傘下に置くPPRグループの持ち主であり、アート界ではサザビーズと共にオークション業界を牛耳っているクリスティーズをも所有する、現在世界一の個人コレクターとも言われる人物である。実際2006年、2007年と2年連続で「現代アート界に最も影響を与える人物ナンバー1」に選ばれている。

フランソワ・ピノー・コレクション展
Michel François, “Bureau Augmenté”, 1998-2000

愛想をつかれてしまったフランス、と冒頭で書いたのは、2005年予定でパリ近郊のルノー工場跡地であるセガン島に、彼の2000点におよぶ所有作品を展示、保管するための財団を安藤忠雄の建築により建設するというプロジェクトが決定していたにも関わらず、フランスの行政遅延により完成予定が2007年はたまた2010年にまで延長になり、とうとうピノー自身から「もう待っていられない。」ということで三行半をつきつけられたのだ。その三行半から数ヶ月後、ピノーはイタリアのヴェネツィアにあるパラッツォ・グラッシを買い取って美術館を開館。フランスは、世界有数の現代アートコレクションであり、世界で最も重要な財団をその国土から手放してしまうという憂き目を見た。

そんなフランソワ・ピノーのコレクション展をなんとかフランスに招待することに成功したのが、リール。リールは2004年にヨーロッパ文化首都に選ばれて以来、それまでの工業都市というイメージを一掃するように、「リール 3000」というプロジェクトの元、現代アートの展覧会に力を入れている。

Passage du Temps」(時間の通路)と題されたこのコレクション展は、ル・プラトーと呼ばれるフランスのパリを中心とするイル・ド・フランス地方立現代美術基金のキュレーターであり、フランソワ・ピノーのアートコンサルタントでもあるキャロリンヌ・ブルジョワによって手がけられた。この企画はピノーの2000に及ぶ所有作品の中から写真やビデオを媒体とするものを選び、70年代から今日にかけての美術史を展開するという大きな試みである。

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