サカナクション

PEOPLEText: Madoka Suzuki

メンバーの絶妙なバランスで保たれる五角形。山口一郎(ボーカル&ギター)と岩寺基晴(ギター)、草刈愛美(ベース)、岡崎英美(キーボード)、江島啓一(ドラム)からなる北海道、札幌で生まれたバンド、サカナクション。2005年の結成で去年「GO TO THE FUTURE」でメジャーデビュー、今年初めに2作目のアルバムリリースに全国ツアーと、順調に階段を上っている。1月23日にリリースのセカンドアルバム「NIGHT FISHING」、彼らのクリエイティビティについて、メンバー3人に話を伺った。

サカナクション

バンド結成のきっかけを教えてください。

山口:もともと高校1年生の時にバンドを組んでいて、そのバンドが普通のUKロック的なエモーショナルなロックバンドだったんですが、全然うまくいかなくて。どうしたらいいんだろうとなった時に、打ち込みを取り入れていこうかという話になったんです。他にもいろいろ試していったのですが、それがアダとなって(笑)バンドは解散してしまいました。彼(岩寺)が辞めるって言い出したのがきっかけなんですけどね。その後、僕一人で音楽活動を続けていって、DJもやったりして。クラブでDJをやっていると、ライブで全然盛り上がらなかったのに、CDの音楽ですぐにみんな盛り上がるんですよ。これをバンドで活かせないかなというのがあって。

そんなときにインディーズレーベルからコンピレーションアルバムを出すので、一曲参加しないかという話があったんです。それで僕一人で作詞作曲をしてトラックを作ったのですが、その時にやっぱり他の楽器がほしいと思って、色々とギタリストを探していたら彼(岩寺)が暇してるというので、ちょっと手伝いに来ないかと呼んだのがきっかけで、新しいバンドを作ることになり、それがサカナクションになりました。バンド名「サカナクション」ってどう?と言ったら『絶対に嫌だ』って言っていたのですが、後で嫌だったら変えればいいしと言って、しぶしぶ納得してもらったんですけどね。

他にバンド名の候補はあったのですか?

山口:「フィルムズ」とか?以前、照明を一切使わないで、プロジェクターの映像の明かりだけでライブしていたことがあって。映像と音楽を一緒にやっているから、「フィルムズ」ってバンドいいんじゃないかと。彼(岩寺)もすごいノリノリで『フィルムズっていいね!』って。そのころ、インターネットを繋げたばっかりで、彼、メールアドレスに「イワデラフィルムズ」を取得したくらいなんですけど(笑)。でも結局フィルムズっていうテクノポップバンドが80年代にいることが分かって、実際いるからもうだめじゃんって。

他のメンバーについても教えてください。

山口:ドラムの江島はもともと、僕がやっていたバンドをよく見に来ていました。サポートでギターやっていたミュージシャンの友達で、初期のメンバーです。キーボードの岡崎は昔のバイトの同僚で、ずっとピアノやっているというので、じゃあと。ベースの草刈はもともと同世代としてバンドをやっていて、参加していたバンドが解散したので誘ったのです。いい出会いばっかりで。出会い系バンドだね(笑)

2005年の結成で去年メジャーデビュー。今年初めに2作目のアルバムリリースに全国ツアーと、順調に階段を上っているような感じがするのですが、こうなりたいというようなビジョンが具体的にあったのでしょうか?

山口:明確なビジョンはなかったけれど、もっとこういう音楽があったらいいなとか音楽シーンの中でエンターテイメント性の高い、メジャーな音楽と、もっとアンダーグラウンドなテクノだったり、その中間にいるアーティストになりたいなって。それを目指していくうちに、どんどん駆け上っていったというか。運が良かったというのもあるし、出会えた人がよかった。同じ志を持っているメンバーに会えたというのが一番大きかったですね。

1月23日にリリースのニューアルバム「NIGHT FISHING」について伺いたいのですが?

山口:テーマとして「夜」というものがあったのですが、人が悩んだり不安に思ったりするのは、夜が多いのかなと思って。僕自身そうでしたし、切ない気分になったり、寂しい気分になったりっていうのは全部夜なんです。そういう感情の起伏を入れていきたいなというのが常に僕の中にあって、それを集めてアルバムにできたらいいな、というところからできたのが今回の「NIGHT FISHING」です。制作していくにあたって、ドキュメンタリーのようにしたいと思いました。詩は歌詞というよりは俳句に近い。決められた言葉数の中で、いかに言いたいことを伝えられるかということと、メロディを組み合わせられるかだと思うのです。だからそういう意味ではノンフィクションかなと。

詩が浮かぶのも「夜」ですか?

山口:悲しいとき、切ないとき、寂しいときに浮かびます。本当にセンチメンタルな日が、年に3回くらいあるんですよ。その日に一気に集約して書きます。出てきたものを後で見直してみると、そのときに書いた気分と違う解釈で捉えたりしたりもしますが。そういう気分のときに加担するのは音楽だと思うので、気分に合う音楽を作りたいです。20から24歳までは、ほぼ毎日センチメンタルな日があって、当時の感覚が一番鋭かったと思うのですが、そのときの蓄積が、今作るものに反映されている。年を取るとだんだん裏が分かるようになってきて、自分をコントロールできるようになってきてしまった。せつない気分をコントロールできるようになると、リアルなことが言えなくなってきます。

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