砂澤ビッキ

PEOPLE

アイヌの血を引く日本で最も多作なコンテンポラリーアーティストの1人、砂澤ビッキは素晴らしい展望を持った人であった。伝統的なアートやテクニックを基本とし、インスピレーション溢れる作品を制作。木製の格調高い彫刻作品が主であるが、同じだけの才能をドローイングやペインティングにも現している。ビッキの作品は北海道周辺の至る所にて、様々な形で見ることができる。その驚くべき数の作品レパートリーからほんの一部を紹介する。


Animal 目 (B) (1963) Courtesy of Bikky Atelier 3Moa

初期の作品郡の中に、生物の形態をした、ビッキの「動物」シリーズがある。このシリーズは彼の初めの抽象彫刻への進出としても突出しており、最終的には1962年、日本近代美術協会への受け入れを承認することになった。

「BIKKYアトリエ3モア」に置かれている作品「Animal 目 (B)」(1963)は、一見、もつれた木の幹のようであるが、近づいてよく見ると動物的な形を帯び始める。見る者によっては他の動物に見えるのだろうが、私はずっとそれを象として見ていた。立体感のある3点のインクのしみが、見る角度や解釈によって様々なものを連想させる。この作品の質感もまた、驚くべきものだ。スムーズに流れるラインがカーブを強調し、光と影の共演に深さを加える。技術やテクニックに好奇心をかき立てられる、約120cmの作品展示である。


午前3時の玩具 (1987) Courtesy of Bikky Atelier 3Moa

同じく「BIKKYアトリエ3モア」にある「午前3時の玩具」(1987)は、架空の生物の外観による木製彫刻のシリーズだ。わずか約45cmの高さに、小さな翼とテールのような腕がついており、古代生物のようにもみえる。明るい色の木で作られていて、丁寧に磨かれている。一方は比較的小さくてスムーズなカーブを描き、頭の部分に小さなリングがついており、もう一方はより大きく、角を持っていることから、雌と雄が感じ取れる。またどちらも翼とテールにある関節継手が特徴的だ。この小さな生物が空を飛び回るのだろうということは容易に想像がつく。遊び心と楽しみのセンスを呼び起こされる作品だ。


既面・姫面(1975)

「木面」(1975)というお面のような創作は、それぞれに異なった形、大きさ、印象をしている。これは、彼の制作方法に理由があるようだ。それぞれ「木面」の「木」に異なる漢字を当て、作品はその漢字の形や意味を現していた。最終的に約150作品が作られ、抽象的な形をしたものや、動物のようなもの、奇妙で不気味な生き物の面まである。「エコミュージアムおさしまセンター・BIKKYアトリエ3モア」に所蔵されている幅広いセレクションの中に、細長い楕円で表面部分に10の突出がある作品(姫面)があり、それらの突出が口に見えた私は少しばかり驚異的な印象を与えられた。悪夢に出てくる怪物のように見えた。漢字を理解できる人にとっては、それぞれの違いがはっきりとわかるだろう。別の円形の作品(既面)の表面には、2つが上を、1つが下を向いている計3つの突起物がある。ちょうど下向きの突起物の上には、長くて薄い穴があけられていた。この作品は私に牛の頭の形を連想させ、すぐにその絵が頭に浮かんできた。しかしこれも同じように、全てそれぞれの解釈次第である。この様々な解釈ができるということが、「木面」や他たくさんのビッキ作品の美しさの一部だ。


Courtesy of Bikky Atelier 3Moa

同じ場所に、写実性が素晴らしい虫のような生物のシリーズ作品がある。これも全て木で作られており、触覚や足の節など、全ての関節部が表現されている。海の生物も多く、大きな海老までいる。見事に精巧に作られた「トンボ」(1973)作品もこのシリーズに含まれている。他の作品と同じように、このトンボも関節部が施されていて、羽や長くて優雅な尾までもある。このシリーズは全て暗い色の木で制作されており、緑がかった青いしみがアクセントになって現れているのだが、実際これらが木から作られていることは信じがたい程である。近づいて十分に質感を確かめないことには、銅に見えるだろう。その正確さに、虫嫌いな人は敬意を持って鑑賞することが困難かもしれない。そのトンボは細部がとても印象的で、各部がデザインと形においてほぼ完璧な対称を成している。確実にここまでの彫刻に到達することは難しく、そのことがビッキの技術の証明だ。


樹華 (1983)

「BIKKYアトリエ3モア」にてフィーチャーされているもう1つの作品が「樹華」(1983)だ。様々な形や大きさをした“華”がある。2本の長い棒が差し込まれた厚い土台で作られていて、これが“茎”を意味する。そして切られた柳の枝が先端におかれ、“花弁”を作り上げる。大きさは様々だが、一様にまるで炸裂する白い花火が凍ったかのようだ。人工であることが信じがたいほどに、とても自然に見える。


四季の面 (1988)

とても好奇心をそそられるセット作品「四季の面」(1988)。丸い土台の上に球体が施され、その球からは“触手”が伸びている。その触手はまた、結合部分を支えている。木製で球のデザインが使われているという点で同じタイプの作品「二ツネカムイ」の進化型のようにも見える。明らかにとても興味深い創作で、同時にとても人目を引く作品だ。


考える人・動物の時限 (1955)

彼の彫刻以外の作品の1つ「考える人・動物の時限」(1955)。この初期の絵画には、伝統的なネイティブアメリカンの絵画と類似する点がいくつかみられる。もちろんはっきりとした「ビッキの質」は健在なのだが。力強く、太くしっかりとした色使いの目を引く作品だ。またこれも、見る者に解釈を選ばせる抽象作品と言える。個人的には、戦いが起こっている場所であるように見える。生命の戦いかもしれない。

ビッキ作品には、いつも「生命」がある。木を彫刻することは誰にでもできると言えるだろうが、その彫刻を生かすことのできるものは少ない。数年を経て彼の技術やテクニックは進化しているが、1つ変わらないものがあり、それがアートに対する気遣いと感謝である。たぶんそれが彼が自ずと生命をもたらす作品に込めた想いだ。表面的には何にも見えない抽象的な作品でさえ、あなたの前に出て生きることができる。まるであなたと同じ空気を吸うかのように。おそらくそれは、本当にアートを習得した者の印なのだろう。

おさしまセンター BIKKY アトリエ3モア
開館期間:4月26日〜10月31日(冬期間閉鎖)
開館時間:9:30〜16:30
休  館:月曜日(祝日の場合は翌日)
料  金:200円(音威子府村在住以外の方)
住  所:北海道音威子府村字物満内55
問い合せ:01656-5-3980

Text and photos: Jacqueline Ste-Croix
Translation: Yurie Hatano

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